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2017/10/4-25 應典院寺務局:まなびのカフェ~子どもと食を巡る「四方山話(ヨモヤマバナシ)」第1・2回を開催いたしました。

「まなびのカフェ」開設までの道のり

大阪大学大学院人間科学研究科附属未来共創センターの主催、浄土宗應典院共催で開催している「まなびのカフェ」。7月のパイロットケースを経て、この秋から新しくスタートを切りました。実は発案した大阪大学の教職員、そして應典院の職員はすべて子どもを育てながら仕事をする母4人。子どもを出産した後から、母親は学びたい気持ちが高まるのに、社会にはなかなか小さな子どもを連れて学べる場が少ない、という生涯学習的な観点からみた課題を感じていました。「母がワンコインでホッとでき、子どもとともに何かに気づける場を、お寺で・・・」という願いを込めて、應典院の気づきの広場で「まなびのカフェ」を開催しています。保育や託児ではなく、お母さんが乳児さんと一緒に座って学べるような場や、ちょっとしたお茶とお菓子で一息つく工夫も凝らしています。また、小さな子どもさんの声や動きが見られることに、男性や母としての先輩である参加者のみなさんからも、ホッとするというお声も聴きました。社会では、幼稚園は幼稚園生だけ、小学校は小学生だけ、という同じ年齢層の人たちだけを集めた「学びの場」が多く、このように老若男女が一緒になって同じテーマのお話を聴いたり、対話したりする場が少ないのが現状です。今回、下は2か月から上は70代までの方たちが一緒に参加し、グループワークをご一緒したり、質問し合う光景が見られました。

四つのテーマによる「四方山話(ヨモヤマバナシ)」

「子どもと食」を巡る4つのお話をお聞きする、今回のまなびのカフェ。10月4日(水)の初回は、「<食べる>ことをみつめる臨床心理学~こころと食のアラカルト~」というテーマで、大阪大学同科准教授の佐々木淳先生にお越しいただき、実は「食べる」という行為にその人のこころや家族のありようが映し出されていることを様々なケースから紐解いていただきました。多くの方が聞いたことはある「拒食症」や「過食症」、特に女性に多いといわれる「摂食障害」。この現代社会特有の課題に対して、本人の気持ちや周りにいる家族の状況など、様々な臨床でのお話に驚いたり、心配したり、そして、もしかして私や家族でもなり得ることもあるのでは・・・と色々な思いを巡らす時間でした。本来はいのちを保持するために大事な「食べる」という行為に後ろめたさを感じたり、自分の容姿に対して過敏になることはどうして起こるのか・・・とも思うのですが、案外だれでもその罠に落ちてしまいやすいそうです。容易く情報が手に入るネットやテレビの影響、社会の眼など、様々な要因から誘発され、家族関係によってそれが悪くもなる場合があることなど、具体的な質問・応答形式で佐々木先生はテンポ良く進めてくださいました。

科学的根拠に基づく医療か、伝統的な治療か

また、10月25日(水)の第2回では「<それ、私にも効くの?>の科学~健康情報とのつきあい方~」と題して、同科助教の木村友美先生に「フィールド栄養学」と称されるご自身の研究をお伺いしました。木村先生はこれまで、ネパールなどの10か国以上のアジア地域を中心とする調査経験が豊かで、最初に見せて下さった映像は砂漠の写真。「ここで暮らす方は何を食べているのでしょう?」という先生からの問いに、参加者は「確かに野菜なんて全くないし・・・」と自分たちの<当たり前>にがんじがらめになって答えに窮する場面もありました。また、木村先生からはアーユルヴェーダで使用するデトックスに良いといわれるハーブティーをふるまっていただき、ほっこりしながら素敵な時間が流れました。「誰からの健康情報を一番信じるのか?」という問いには、多くの方は「母」や「知人」と。(逆に誰の情報は信じないのか?という問いには、ネットやテレビと同様に「夫」という単語も多かった・・)これだけネットや書籍の情報が溢れている現代社会ですが、やはり「信じる」という言葉は「人偏に言」というように、ちゃんと信用している人から言葉によってもたらされる情報の重要性は、古から現代に至るまで同じであることを感じました。木村先生がおっしゃるように、科学的根拠に基いた医療と、古くから伝わる伝統的な医療の「どちらか」ではなく、「どちらも」が大事なのではないかと感じる時間でした。仏教の「中道」にも通じる、「どちらか」に偏るのではなくバランス良く、という部分は初回と第2回を通底するテーマでした。家族と摂食障害の本人との距離や関係性も「近すぎもせず、遠すぎもせず」。健康情報も「化学的根拠のみ」でなく「昔からの先人の智慧」をも大事とすることなど、お寺で行うことの意味を感じた「気づき」でした。

第3回まなびのカフェは11月29日(水)に開催します。最近、身の回りで「花粉症」「食品アレルギー」「柔軟剤などの芳香剤アレルギー」など、様々なアレルギーで苦しんでいる方が多いですね。次回はこれらの環境ホルモン・化学物質過敏症をテーマに、「食べることと身の回りの化学物質」について大阪大学教授の三好恵真子先生にお伺いします。

(浄土宗應典院寺務局 齋藤佳津子)

申し込みは以下から受け付けております。

https://goo.gl/forms/yGlr5HDDELE0ZWYf2

人物(五十音順)

木村友美
(大阪大学大学院人間科学研究科助教)
佐々木淳
(大阪大学大学院人間科学研究科准教授)