イメージ画像

2017/12/16‐17 應典院寺務局:アート・ミーツ・ケア学会にて、キッズ・ミート・アートの実践を報告しました(上)

12月16日(土)17日(日)京都市立芸術大学で開催された「アート・ミーツ・ケア学会2017年度総会・大会」にて、キッズ・ミート・アートの5年間の実践について、應典院より秋田光彦住職・齋藤佳津子、元應典院アートディレクター小林瑠音と福山市立大学の弘田陽介さんによる合同発表を行いました。本編は学会報告の前半部分をお伝え致します。

_________________________________

実践報告「生と死に寄り添う宗教空間における子どもとアートの出会い」

キッズ・ミート・アート2017 子どもお練り供養~二十五菩薩さんはヒーローだ~

アート・ミーツ・ケア学会2017年度大会概要

今大会のテーマは「「集団のアホーダンス: Re-imagining Others」。このテーマの中にある<アホーダンス>とういう造語には、「ヒトが他者や環境を『妙なふるまい』で誘惑すること、立ち止まり、列を離れ、市場原理や効率化に包摂されることのない無根拠なふるまいの連鎖を生むという意味」が込められています(※1)。もう少し調べてみると、もともとは<アフォーダンス>(affordance)つまり、<アフォード>(afford)「~ができる」「~を与える」ということばから派生した用語で、アメリカの知覚心理学者ジェームズ・J・ギブソンによる造語です。その後、ドナルド・ノーマンが認知心理学の領域で、「ある環境がわたしたちに対して潜在的に与えている用途や機能のことをさしている」という定義を試み、デザインの領域などで広く使われるようになりました。つまり、わたしたちは、様々な局面でそれぞれの<アフォーダンス>を読み解きながら、ある行動を起こし、制御しているということです。特に本来のギブソンの定義は「動物と物の間に存在する行為についての関係性そのもの」を大切にしており、今回の学会でも、その「アフォーダンス(アホーダンス)」を受動的に与えられたり読み解いたりするだけでなく、わたしたち自身が様々な<ふるまい>を促したり、その連鎖を生み出したりする主体になり、「アート」との関係性そのものを問いかけようというメッセージが込められていたように思います。

アート・ミーツ・ケア学会2017年度大会の様子

具体的なプログラムとしては、大会1日目には、ダンサーの砂連尾理さんと臨床哲学者の西川勝さんによる「基調講演」ならぬ「基調体操」が開催されました。また午後のシンポジウムでは、「集団のアホーダンス」と題して、近年の現代アートの実践を例に、異なる多様な現場への働きかけ方が議論され、続くレクチャー・パフォーマンスでは、キリスト教の讃美歌を題材に、宗教における音楽の意義が話合われました。2日目の分科会では、アート・セラピーの語源や評価に関する研究や、医療の現場におけるデザインやダンスの実践報告などが多くみられました。また、午後の分科会では、社会包摂をテーマとした作業場での就労の考え方や、「アート・ベースド・リサーチ(Art Based Research)」というスキームに基づいて、グリーフワークやジェンダー/セクシュアリティ研究の領域における<あいまいさ>の捉え方について、非常に興味深い議論が行われました。

生と死に寄り添う宗教空間における子どもとアートの出会い

應典院チームが発表した「キッズ・ミート・アート」の取り組みについては、人とお寺がもつ<アフォーダンス>とは一体どんなものなのか、という問いを根底に持ちながら、キッズ・ミート・アートがどのような変容を遂げてきたのかを、<ソーシャリー・エンゲージド>という文脈からも紐解いてみました。現代アートの領域では特に、近年最も注目されている<ソーシャリー・エンゲージド・アート>(Socially Engaged Art : 社会関与型の芸術)という概念ですが、これは、特に1990年代以降に注目されてきた考え方で、閉鎖的になりがちなアートワールドから脱して現実の世界に積極的に関わり、そこで変革を起こしていこうというアーティストの活動をさします。他方、仏教界においても、1960年代ベトナム人僧侶のティクナット・ハンが<ソーシャリー・エンゲージド・ブディズム>(Socially Engaged Buddhism)として、「社会参加する仏教」「行動する仏教」あるいは「社会を変革する仏教」という概念が提唱され、應典院の再建時のコンセプトを議論する1990年代において、非常に大きな影響を与えたといえます。この<ソーシャリー・エンゲージド>という概念は、仏教界が先達となり、アート界においても、非常によく似た現象がおきてきたといえるかと思います。つまり、ある特定の時代、言説の中で、過度に神聖化され、「社会」とは切り離されたイメージがつきすぎてしまった仏教界や、高尚な対象物という印象が強い芸術作品、そして閉鎖的になりがちなアート界を、再度、本来の姿である<社会関与する>在り方へと揺り戻そうという動きが注目を集めているといえるでしょう。

アート・ミーツ・ケア学会 應典院によるプレゼンテーションの様子

この傾向やその背景については様々な議論がありますが、今回のアート・ミーツ・ケア学会では、まさにアートと仏教が共在する應典院という場所での取り組み、特に子どもの表現やアーティストと社会との関係性について俯瞰することができました。学会で発表した内容はレビュー(下)へと続きます。

※1「アート・ミーツ・ケア学会ホームページ」http://artmeetscare.org/2017/10/10/341/

 

人物(五十音順)

秋田光彦
(浄土宗大蓮寺・應典院住職)
小林瑠音
(前應典院アートディレクター・京都造形大学非常勤)
齋藤佳津子
(学校法人蓮光学園 パドマ幼稚園・事業センター 主査)
弘田陽介
(大阪総合保育大学准教授)