イメージ画像

2018/3/27-28 秋田光軌:「New踊り念仏探究会 第2回」を開催いたしました。

應典院の秋田光軌です。3月27・28日、研修室Bにて「New踊り念仏探究会 第2回」を開催しました。この企画は、ダンサーの斉藤成美さんと私の主催で昨年10月に試験的に開催したもの。浄土仏教の思想や念仏を称える際の「型」を学びながら、時には身体表現といった現代的視点から反省を加えるなど、「型」を批判的に解体・再構築することで、表現や救いをめぐる諸々について捉え直すことができるのではないかーー。漠然とはしていますが、主催者の二人はこのような関心を共有しており、ことばとからだのいずれかに偏らないことが重要だろうという認識から、読書会とワークショップを二夜連続で行うことで探究を進めてみることにしました。

27日の第一夜は、釈徹宗先生の『法然親鸞一遍』読書会を行いました。選書の理由は、日本における浄土仏教や念仏の変遷について、誰でもコンパクトに分かりやすく知ることができ、さらには三祖の比較考察までもが含まれるという意味で、群を抜いていると思われるからです。当日は、仏教に関心を持っている一般の方から、演劇・ダンス・現代音楽に関わりのある方々、また昨年の第1回から参加してくださっている時宗僧侶の方まで、16名の皆さんにご参加いただきました。一人ひとりの自己紹介、なぜこの会に関心を持ったのか、本の感想などを伺いながら、レジュメをもとにそれぞれ疑問を出し合い、語り合いました。

当日の議論を全て紹介はできませんが、二つだけ簡単に触れておきます。たとえば浄土仏教に関わる者の主体性として「(宗教的)弱者」「愚者」といったことばが使われることについて、「現代の立場からはどうしてもネガティブな意味に見えてしまい、受け入れることが難しい」といった感想があり、それに対して「おそらく時代的な権力構造によって、宗教にコミットできない民衆が多かったのではないか」という意見や、あるいは「自発的な気づきによって選び取られる愚者は、もはや愚者とは言えないのではないか」などの意見が参加者間で交わされました。
また、ある参加者からは「素朴な質問なのですが」と前置きした上で、「救いを得て、苦難を生き抜く道として『念仏を称える』というものがあるのならば、それはたとえば『無心にシンクをみがく』という行為においても代替されるのではないか」という主旨の問いかけがありました。「宗教性や物語の有無」という明確なちがいはありますが、たしかにある人が念仏よりも「シンクをみがく」という行為により能動的に関われるのであれば、「シンクをみがく」行為は単なる実用的動作ではなく、当事者にとって何らかの救いをもたらすような「中軸」に、聖性を獲得する表現になりえるのかもしれません。では、そのための条件とは何かーー?

いずれのコメントも、今回はじめて仏教の考え方に触れた参加者から発されたものでしたが、非常に面白い問いだと感じました。最後に斉藤成美さんから発された「声を共鳴させると空間の輪郭は立ち上がるのだが、身体を使い出すと『下』からのエネルギーが加わり、場の力が強まっていくモードに切り替わる」といったコメントも、彼女の実感による発言として興味深いものでした。
残念ながら、時間の関係で法然親鸞一遍の三祖比較考察までは進めませんでしたが、本書はこれからも繰り返しこの会で取り上げる予定です。

そして、翌28日の第二夜には、身体と念仏のワークショップを実施。こちらも1日目にご参加いただいた皆さんを中心に、14名の参加者がありました。昨年の第1回では、念仏を浄土宗・浄土真宗・時宗の型に則して称えた後、声の出し方、体勢などをそれぞれ探ってもらい、自由に動き回りながらフリースタイルのように念仏を称えてみましたが、今回はかなり趣きの異なるワークショップとなりました。
斉藤さんをメインの進行役として、ストレッチ、声の共鳴、身体動作と声の連動、身体間の共振を感受するワークなどを行い、後半では浄土宗における節つきの念仏を称えながらの五体投地礼拝、そして時宗僧侶の方のご案内のもと、現在時宗で行われている踊り念仏について解説と実践を行いました。時宗の踊り念仏については、最もシンプルに念仏を称える一場面を実践することができたのですが、それも全体の一角にすぎません。まずは一通り「型」を実践できるように、時間をかけて取り組んでいければと考えています。
できれば踊り念仏のステップの創作や、ワークショップの感想をことばにすることも行ってみたかったのですが、今回は時間の関係上、持ち越しとなりました。また次回以降の内容の検討に活かしてまいります。

両日通して、いずれも参加者それぞれのモヤモヤを解決するどころか、おそらくモヤモヤを倍増させる内容となったように思いますが、その後いただいた感想を鑑みても主催側として一定の手応えを感じる結果となりました。多領域を横断する要素が詰め込まれている企画のため、おそらくどのような立場の人が参加しても、何かしら問い返されることがあるようで、そんな気づきや発見をもたらす場として今後も展開していければと思っています。

次回は、同じく應典院研修室Bにて6月中旬頃の開催を予定しています。