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2018/5/15 室屋和美:「まなびのカフェvol.2~〈怒り〉の感情との上手な付き合い方、教えます 第1回」レビュー

去る5月15日、大阪大学大学院人間科学研究科共催の「まなびのカフェvol.2」を開催いたしました。今期は、4回に分けて<怒り>をテーマに専門家を招き、お話を伺います。第1回目は、石藏文信さんによる『夫源病予防のためには~熟年離婚の遠因となる産後クライシス~』。今回は劇作家・役者・WEBライターの室屋和美さんにレビューを執筆していただきました。


カフェ形式でさまざまな専門家のお話を聞く「まなびのカフェ」。今期で二度目の開催です。

「怒り」をテーマに四度行われる講座のうちの第一回に参加してきました。今回お話いただくのは「夫源病」の名付け親でいらっしゃる石藏文信先生です。

会場となった應典院・気づきの広場には保育コーナーやオムツ替えスペースが設置されていて、たくさんの親子連れが参加していました。会場は満員です。小さなお子さんがスケッチブックやオモチャを持って走り回る姿をわたしは終始微笑ましく眺めていました。いいなぁ、これ皆さん気兼ねなく参加できますね。冒頭進行の孫さん(大阪大学)曰く、普段の先生のセミナーや講演会は大人気で予約も取りづらいのだとか。なるほど納得の賑わいです。

ところでタイトルにある「夫源病」ってなにかしら、という方もいると思うので石藏先生のプロフィール文から抜粋して説明すると、夫の何気ない行動や言葉が強いストレスになり、妻の身体に更年期障害のような変調を引き起こす病気というものです。

石藏先生はお医者さんでいらしたので、中高年の夫婦の患者さんを診るなかでこの症状に命名をしたとのことでした。正直ちょっと「強い」言葉だなと思いますが、石藏先生自身が三人のお孫さんを育てるためお医者さんを辞めたそうなので(奥様も医者でとても多忙)、ワンオペ育児の大変さは身をもって知ってらっしゃるわけです。

この日わたしは偶然仕事が休みで、是が非でもこの催しに参加したいと思っていました。我が家は結婚5年目。子供はいませんし熟年夫婦でもないのですが、夫源病というワードが頭に引っかかって離れずにいました。

ウチの夫ははっきり言ってすごく「神経質」です。なんでも迷ってしまうのでボールペンを買うだけでも10分は迷います。以前夫が夜になって『眠れない・・』と起きてくるのでどうしたの?と尋ねると、近所のバス停の張り紙が風に舞っていて、その音が気になって眠れないとのことでした。わたしからすればほとんど聞き取れないような小さな音です。「繊細」ってイイ面もいっぱいあるのですが、本人は辛いですよね。

こんな夫と長らく生活を共にしてそれなりに処世術を身につけたつもりですが、いつお互いが「夫源病」「妻源病」になるやもわかりません。チラシにも「夫婦の危機が訪れるのは案外早く、結婚五年目以内が多いと言われています」との文章が。おお、こわい。明日は我が身。参加されていた方がそれぞれどういうご事情を抱えているかわかりませんが、皆さん熱心にメモを取りながらお話を聞かれていました。

そんなわたくしたちを尻目に、石藏先生はプロジェクター前でキレッキレのトークを進めてゆきます。とても明るくシニカルで大変面白いです。どんなドンヨリした話をされるのかと身構えていたので、なおさら楽しい。講座の前半は「夫源病」について、後半は「子育て」についてをメインにお話されていました。

『メシ・フロ・寝る!の夫が家に居着き、奥さんが家から出られない、ノイローゼになる。昼食ウツという言葉もあります。定年後の夫を持つ妻の最大の悩みです』

『子供という人質、お母さんだという呪い。それに捕らわれるとしんどいです』

『定年後の心配は4つ。老後資金(年金)/健康/夫婦関係/居場所(趣味など)。経済的な心配がなければ熟年離婚ということもあり得ます』

身近な、興味深いお話がたくさん出てきます。会場のお母さまがたのうなずきの深いこと。多いこと。もちろんわたくしもです。

こういった話だけを切り取るとなんだか世間のおとうさんの肩身が狭くなりそうですが、先生はあらゆる目線から、あらゆる立場からコミュニケーションのコツをお話してくださっています。たとえば定年後、なにもやることがなくうつ状態になってしまう夫。疲れた顔をして孫を連れてくる娘を心配する祖父母。先生の『お金、親、甘えられるなら甘えたらいいんです』という言葉にホントそうだよなぁと感じたんですが、どうでしょうか。私は「気ィ使い」なのでね、他人にズバッとこう言ってもらえるとちょっと気持ちが楽になります。

先生はお料理が得意のようで、大阪の吹田でお料理教室をやっている様子もご紹介されていました。定年後のおとうさんに向けての簡単料理教室です。写真にはお孫さんを背負って超笑顔でキッチンに立つ先生の姿・・料理本も三冊出されてるんですって。かなりウケました。

ご自身を「育爺(いくじい)」とうれしそうに話す石藏先生。明るく、楽しく、喜びを見つけて・・っていうのは、基本的なことかもしれませんがとても大切なことだと思えます。

『ありがとう』『ごめんなさい』『愛してる』の3つの言葉をかけてあげる。

『おい』『お前』と呼ばず、相手を名前で呼んであげる。

これらは先生がいくつか話してくださった「夫婦間のコツ」なのですが、案外できてないおうちが多いんじゃないかな。今すぐにでも始められることばかりです。

應典院を後にすると、駐輪スペースにたくさんの自転車が停まっていました。どれもこれも大きなベビーシートが付けられたものばかりです。お子さん乗っけて、お買い物とかしちゃったら、どれだけしんどいサイクリングになるのかしら。

私もがんばっている人を見かけたら、どんどん「お疲れさま」と声をかけてあげようと思います。もちろん神経質な夫にも。毎日みなさんごくろうさまです。ありがとうございます。

 

○レビュアープロフィール
室屋和美(むろやかずみ)
劇作家・役者・WEBライター。1984年兵庫県神戸市生まれ。
近畿大学演劇芸能専攻・劇作理論コース中退。
2012年から『劇作ユニット野菜派』を立ち上げ。
以前は『劇団八時半』『コトリ会議』などに所属。
劇作家の活動として、戯曲「どこか行く舟」がAAF戯曲賞佳作を受賞。
世間のさえない領域で静かに呼吸している小魚のような、ひそやかな人々と
その切実さを好んで描く。

◇近年はご依頼をいただいて劇作をしたり、大喜利や官能小説のイベントに
出演したり、WEB媒体に記事を書いたりしています。
趣味はマンガを読むこと、お笑いの舞台を見ること。
小さな畑の世話もしています。いつでもなんでも、気軽にお声かけください。
Twitter: @ooiri_muroya

◇活動告知

(1)應典院舞台芸術祭Space×Drama×Next2018オープニングアクト
「第2回縁劇フェス」で大喜利コーナーに出演します。今年は「笑い」をテーマに
6つの短編演劇作品が上演されるようです。大盛り上がりの予感!

〈第2回縁劇フェス〉
日時:2018年6月23日(土)13:30~、24日(日)10:30~ (受付開始/開場時間)
※室屋は23日(土)17:00~の「新春大喜利会 in 縁劇フェス」に出演)
会場:浄土宗應典院 本堂
詳細:http://spacedrama.jp/next/enfes/

(2)動画配信サービス「観劇三昧」にて、私が作・演出を手掛けたお芝居
「そこはかとなく優しくフィット」の上演動画が期間限定配信中です。
会員登録後(有料/月額980円で全動画見放題)ご覧いただけます。
お試しで3分間の無料視聴も可能です。
作品詳細: http://kan-geki.com/member/play.php?id=962

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室屋和美
(劇作家・役者・WEBライター)