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2018/5/9 杉本奈月:SDNオープンセサミ【第1回】N₂「身一つでつくる」― 俳優のための作劇ワークショップ レビュー

去る5月9日(水)、應典院舞台芸術祭Space×Drama×Next2018関連企画「SDNオープンセサミ」第1回を開催いたしました。毎月第2・第4水曜日にSDN上演団体が公開稽古やワークショップ、舞台映像の上映会などを企画しています。今回は、劇作家、演出家、宣伝美術、N₂代表の杉本奈月さんにレビューを執筆していただきました。


14年の歴史に幕を閉じ、リニューアルした “Space×Drama×Next 2018” が始動する。前身の “space×drama” において、月一で開かれていた制作者会議も健在で本ワークショップは、MEHEM代表・ながたゆうか氏による企画である。去る2018年5月9日(水)、浄土宗應典院 研修室AにてSDNオープンセサミ【第1回】N₂「身一つでつくる」― 俳優のための作劇ワークショップを実施した。主催者はわたしではないが、自身が主宰するカンパニーの活動について自分で書くというのだから、たとえわたしが客観性に長けている書き手であったとしても本文はレポートにしかなりえない。長らく應典院寺町倶楽部のモニターレビュアーとして書いてきた2000~3000字のレビューより短くはなるだろうが、ゴーストライターとして書くわけにもいかないので、どうか手やわらかにご一読ねがいたい。

アシスタントには、エイチエムピー・シアターカンパニー所属の女優・ナカメキョウコがついた。彼女は過去に『居坐りのひ』(2016年 ウイングフィールド 初演)、Tab.1『水平と婉曲』(2016年 人間座スタジオ 初演)、『 blue/amber 』(2017年 ウイングフィールド 再演)、Tab.2『火入れの群』(2017年 アトリエ劇研 初演)へ出演しており “客演” でありながらも、N₂(エヌツー)の看板俳優であるといえるだろう。また、Tab.4『磔柱の梨子』(2018年 浄土宗應典院)とFIg.2『桜紙』/ Tab.5『退嬰色の桜』(2019年 クリエイティブセンター大阪)のクリエーションメンバーでもある。Tab.3『雲路と氷床』/ Fig.1『赤裸々』(2018年 京都芸術センター 初演)だけクレジットに穴が空いているが、近年のエヌツーを語るには彼女の存在は欠かせないのだ。さて、下記はステートメントである。

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上演のたびに更新される創作と上演『居坐りのひ』への従事を終え、2016年より京都を第二の拠点として始動した、書き言葉と話し言葉の物性を表在化する試み「Tab.」。Tab.2『火入れの群』(2017年 アトリエ劇研 初演)、Tab.3『雲路と氷床』 (2018年 京都芸術センター 初演)で実際に上演したワンシーンを、先ずは俳優の身一つでつくってもらうところから始めます。「劇場」が有するべき本来の公共性が失われつつあるクローズドな空間で今後、いかに我々が「ひらかれた時間」を外にいる観客たちと共有していくのか。舞台と客席のあいだで共同されうる私性 / 詩性をまさぐりながら “official” から “common”、そして “open” へと通ずる公(おおやけ)について戯曲先行でない作劇を通し、一人一人の「わたし」たちが主体として、たった一つの役を担っていくための手がかり、足がかりとなれば幸いです。なお、應典院舞台芸術祭Space×Drama×Next2018においてN₂(エヌツー)は、Tab.4『磔柱の梨子』を秋に上演します。

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エヌツーによるワークショップは、2016年の「声に出してよみたい劇詩」以来である。先述のとおり『居坐りのひ』*¹ 時代の “劇詩” ではなく戯曲なしに立ちあげられる劇言語としての身体へのアプローチを再現した。はじめに三分間ずつ初演の記録映像*² を観ながら演技演出についての説明をした。

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《 Tab.2『火入れの群』- He returns his sheep. 》
A:盲人/タイミングを見てBへ「ここはどこですか?」「信号は青ですか?」「前に人はいますか?」などと交通にかんする問いかけをする
B:Aの体に触れ舞台中をつれて歩きながら左京区のグルメ情報を喋りつづける/途中で立ち止まり客席を指さし声に出して観客の来場数を数える/Aの問いがあった際にこたえる
C:ABを無視して自筆の「観客への手紙」と地下鉄烏丸線松ヶ崎駅からアトリエ劇研までのアクセスを1センテンスずつ読みながら体の動きでも表現し屋外空間を立ちあげる

《 Tab.3『雲路と氷床』- Lightning talk is working in silence. 》
D:動作(帰宅後)の説明中に「”擬音語” +(形容詞の終止形)なる」を文脈に応じて間にはさみながら体の動きでも表現し室内空間を立ちあげる
E:動作(外出前~外出後)の説明中に「”擬音語” +(形容詞の終止形)なる」を文脈に応じて間にはさみながら体の動きでも表現し室内空間を立ちあげる
例)さびれた蛇口を「”きゅっきゅっ” と悲しくなる」ひねって手を洗います。

*¹ 杉本奈月『居坐りのひ』愛知芸術文化センター 第15回AAF戯曲賞|http://www.aac.pref.aichi.jp/syusai/aaf_bosyu15/index5.html
*² N₂ Tab2 “He returns to his sheep.” (3min) Youtube|https://youtu.be/KxH3qclTBuU

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初演の出演者は、Tab.2『火入れの群』が、ナカメキョウコの他、森谷聖と岡村淳平からなる三名であり、Tab.3『雲路と氷床』は、森谷聖(元・京都造形芸術大学芸術学部三年)と益田萠(元・京都精華大学人文学部四年)の二名であった。今回は俳優が四名、ここにアシスタント一名を含め計五名。先ずは一人ずつA~Eのうちから好きな役を演じてみてもらい、次は、それぞれ二人と三人で構成される〈グループⅠ〉と〈グループⅡ〉にわかれ、上記のルールは “手本” にとどめ、役もはずし自由にワンシーンを上演してもらった。いわゆるイメージのつきやすい “演劇らしい演劇” のような “既に与えられている台詞と行為” はなく、そもそも “覚える台詞” もないから、常に俳優は思考の海に二本足をすくわれながら、手入れされていない荒野で動きつづけなければならない。意味づけですら後からなされるものであるため、ここで何らかの物語を見い出さなければならないということは一つもなく、わたしからも流れさえ止まらなければ彼らには何もオーダーしない。

一見すると視野が狭くなっているようにも捉えられるが、既存のドラマツルギーから独立し、他人ではなく自らに拠って空間へ浮遊する情報を身体へ落とし込んでいかなければならないため “台詞の言いかた” にかまっていられなくなり、客席へきこえてくる “音の伝わりかた” に別の表情が生まれていくのだ。だが、声のボリュームとスピード、イントネーション、そして、アクセントのコントロールについては別の話である。前半をおえたあと後半は、Tab.4『磔柱の梨子』- Beggers in pear orchard 初演の創作にむけてリサーチを行った。書き言葉と話し言葉の物性を表在化する試み「Tab.」では、出演俳優の書いたテキストから劇を生成する。Tab.1『水平と婉曲』- Horizontality and euphemism では「わたしが俳優である理由」、つづく “Tab.2” と “Tab.3” は「観客への手紙」Ⅰ~Ⅲ、「毎日の食事、月毎の食べ物」/「わたしの年表上をいく先生」が作文のタイトルであった。

今 “Tab.4” では「神様とわたし」としているが、未来はいかようにもなるのだから、はじめての浄土宗應典院であたらしい人も求めながら、わたしはまた何もないところから始めなければならないだろう。

 

〇レビュアープロフィール
杉本奈月(すぎもとなつき)
劇作家、演出家、宣伝美術。N₂(エヌツー)代表。1991年生まれ、26歳。京都薬科大学薬学部薬学科細胞生物学分野藤室研究室中退。2015年、上演のたびに更新される創作と上演『居坐りのひ』へ従事。第15回AAF戯曲賞最終候補となり「大賞の次点」(地点 三浦基)と評され、ウイングカップ6最優秀賞受賞、第16回AAF戯曲賞一次審査通過。2016年、書き言葉と話し言葉の物性を表在化する試み「Tab.」、処女戯曲の翻訳と複製「Fig.」を始動。外部活動は、缶の階、dracomにて演出助手、百花繚乱文芸マガジン「ガーデン・パーティ」(LittleSophy 落雅季子 責任編集)にて京都日記『遠心、日々の背理』エッセイ連載など。第9回せんがわ劇場演劇コンクールファイナリスト。

 

〇レビュアー公演情報
|連載|2017年04月~2018年06月
百花繚乱文芸マガジン「ガーデン・パーティ」
京都日記『遠心、日々の背理』
http://www.mag2.com/m/0001678567.html

|第9回せんがわ劇場演劇コンクール|
2018年07月15日(日) せんがわ劇場『桜紙』
http://www.sengawa-gekijo.jp/kouen/20255.html

|N₂|http://gekidann2.blogspot.jp/
2018年08月03日(金)~08日(水) <避暑地> 於 studio seedbox
2018年11月09日(金)~11日(日) Tab.4『磔柱の梨子』於 浄土宗應典院
2019年03月08日(金)~11日(月) Fig.2『桜紙』― Tab.5『退嬰色の桜』於 CCO

人物(五十音順)

杉本奈月
(劇作家・演出家・宣伝美術)