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1/9 コモンズフェスタ2016 武田力 展覧会「そらには やんわり うかんでる」 アーティスト・トークを開催いたしました。

去る1月9日(土)から始まりました、演出家の武田力さんの展覧会「そらには やんわり うかんでる」のアーティスト・トークとオープニング・パーティを開催いたしました。本展で上映中の映像作品は、10月17日(土)にお隣のパドマ幼稚園にて開催した、子どもたち対象のワークショップで撮影した映像を、あらためて編集したものです。ワークショップでは、武田さんに加えて、写真家の川村麻純さんを映像制作チームとしてお迎えし、パドマ幼稚園砂場を舞台に、子どもたちと一緒に即興対話作品の公開制作を行いました。当日は13名の子どもたちにご参加いただきました。前半では、子ども達一人一人にカメラを向けながら、彼らが成人し、老年期に至るまでの<未来>についての質問を投げかけ、その様子を記録。その後、後半では、おとなの方を対象に、その映像を鑑賞しながら、子どもたちの語りを紐解く対話プログラムを行いました。

「36歳のあなたにとって、『やさしさ』とはなんでしょう?」
「60歳のとき、あなたが『ただいま』というのはどんな人でしょう?」
大人の私たちでも、応答にとまどうような哲学的な質問を切り口に、武田さんと子どもたちが、一対一で向かい合いながら対話をくりひろげました。

アーティスト・トークには、武田力さんと共に、ゲストとして應典院住職の秋田光彦住職をお迎えし、アートと宗教の親和性や、子どもたちの語りと身体性について、お話を掘り下げることとなりました。

武田さんは、もともと幼稚園で教員としてお勤めであったご自身のご経験から、今回の子どもたちとの作品制作に際して、特に彼ら・彼女らの身体の動きに注目されていました。「子どもたちは、僕と話しをするときに、すごく身体が動くんですね。目線をキョロキョロさせるのとかも含めて。それがすごく面白い。」また、会場窓側に張り巡らされた、武田さん自筆の年表は、1940年開催予定だった幻の東京オリンピックと、2020年に予定されている東京オリンピックを2つの軸にして作成されています。そこに、今回映像に登場する7歳前後の子どもたちの未来を重ねています。武田さんは、「墓地からこちらを見つめる方々は、おそらく1940年代以降のこの年表に掲載されている史実を実体験として経験されていると思います。その意味でも、この窓の向こう側、墓地からの視点も感じながら、ご覧いただきたいと思います」とご説明されました。

また、今回のメインテーマでもあった「子どもと死生観」についてお話が展開すると、武田さんは「役者をしていた時代に、アジアの都市は結構まわったんですけど、各地で『風葬』の慣習が残っていたりして、日常の中に遺体の存在があったりする。あらためて外からみてみると、日本では死を遠ざけすぎているような気がしています。」と言及。
これに対して、秋田住職は「生と死を切り分けないこと、が今いちど大切になってきているのではないでしょうか。つまり、この二つの関係は『線』ではなく『円』であって、その半円と半円の接合点が『老人(翁)』と『子ども(童)』なのです」と付け加えられました。今回の対談を通して、まさに、仏教寺院である應典院と、子どもたちの学舎であるパドマ幼稚園を舞台にした、今回の展覧会の帰着点が提示されることとなりました。
墓地を見渡す会場と、そこに響き渡る子どもたちの声との共鳴が、私たちに静かな潜考の時を与えてくれます。

会期は1月24日(日)まで10時から19時。