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1/23 コモンズフェスタ2016「悼みを悼むということ~『「死」の教科書』をめぐる朗読とトーク」を開催いたしました。

去る1月23日、新書朗読シリーズ第二弾「悼みを悼むということ」が開催されました。新書朗読シリーズは、劇団「満月動物園」の戒田竜治さんの「何ができるか?」という問いから生まれました。その原点は2014年6月、「仏教と当事者研究」プロジェクトの一環で、北海道浦河町にある「べてるの家」を見学をご一緒したことにさかのぼります。「べてるの家」(http://bethel-net.jp)は「1984年に設立された北海道浦河町にある精神障害等をかかえた当事者の地域活動拠点」です。もともと「べてるの家」は、元浦河地区にある教会を拠点に活動が始まったこともあり、地域における開かれた場づくりの知恵を学びに参りました。

そして、2014年9月21日、應典院寺町倶楽部による「仏教と当事者研究」の第一部として、満月動物園により『加害者家族』(鈴木伸元・著/幻冬舎新書)の第1章が朗読されました。通常、朗読劇では絵本や小説などが取り上げられると思われますが、ここでの題材は、ある殺人事件の犯人の家族を取材した実話でした。ネット社会では知りたいと思う人の検索と共有が姿無き悪意を生み、正しく理解しようという姿勢が暴力となることに関心を向け、「自分自身で、共に」苦労をわかり合おうとすることが大切と、問いを投げかけました。それから4ヶ月、コモンズフェスタ2014/2015で、9月の拡大版が上演されました。

今回、日常の続きにある世界を見つめ、自分の日常への視点を違う角度から見つめ直す新書朗読のシリーズ第2弾として、『「死」の教科書』が取り上げられました。そして、満月動物園に加えて、昨年度のコモンズフェスタでの拡大版(シリーズ第1弾)上演後のトークゲスト、baghdad cafeの泉寛介さんも参加することとなりました。第1部は、第2章「喪の作業~JR事故の遺族たち」より、戒田竜治さんの演出で河上由佳さん、西原希蓉美さん、美香本響さん、栃村結貴子さんが出演しました。第2部は、第3章「償い~JR事故から二年」より、泉寛介さんの演出で一瀬尚代さん、辻るりこさん、松本絵理さん、徳永健治さんが出演しました。

第1部・第2部の朗読に続き、第3部はトークセッションとされました。カンパ制での公演に対し、昨年度を上回る鑑賞者を得る中、会場からは「悲しみでひもといた戒田、怒りでひもといた泉」という感想が寄せられました。折しも、コモンズフェスタ2016まで、約1年にわたって應典院にて「死神シリーズ[観覧車編]」を連続公演してきたことも重なって、「悲しみを悲しみのまま受け継ぐもの」として演出した戒田さん、それに対し、暗転を多用しながらパイプ椅子の位置を細やかに変えることで事故真相を知りたくなる人々の深層を表現した泉さん、それぞれの対比が見られました。2015年度は尼崎脱線事故から10年ということもあって、この作品が取り上げられたという捉え方ができるのですが、それ以上に、「自立を求める中で生み出される孤立」に迫った前回に対し、今回は今年度のコモンズフェスタの副題「私かもしれなかった」という「世界は偶然でも必然でもなく蓋然による」という点に迫る場となりました。

人物(五十音順)

泉 寛介
(脚本家・演出家 / 大阪現代舞台芸術協会理事)
戒田竜治
(演出家・脚本家 / 満月動物園主宰、應典院寺町倶楽部事務局長)