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KMA2016REVIEW 中井敦子

「キッズ・ミート・アート2015に参加して」
中井敦子(子どもアトリエ講師・イラストレーター/「山あり川ありお家あり」ゲスト)

床いっぱいに広がった和紙。白い川のようにも、長い道のようにも見えるその和紙に、そのすべすべざらざらとした質感に手を伸ばし、からだごとすーっと滑らせたり、ぱしんぱしんと叩いてみたり、転がったり。描く前に自然と“触れてみる”子どもたちの一瞬しんとするほど、その真剣な表情から始まりました。
そして描く、描く、はみ出る、全身でのペインティング!墨と、三原色を基本とした絵具が、混然一体となっていくのに時間はかかりませんでした。ある場所で黙々と塗り続ける人あり、用意していたことばの手がかりを読みながら歩きながら描く人あり、自分の肌に塗ることに夢中になる人あり。
カメラマンさんが”熱量がすごい”とおっしゃっていたけれど、まさしく子どもたちの嬉々として、墨と絵の具にまみれていく、どこまでも走りながら、そして座り込みながら、ただただまみれていくというような姿の痕跡が残る絵巻になりました。自分の線と色とかたちが、いつのまにか、どうしても他の誰かのそれらと混じりあっていったり交差したり関わりあう、その軌跡でもあるように見えました。
このワークショップのタイトルは”山あり川ありお家あり”だったけど、そんな小綺麗そうなも のは残らず(笑)、ただただ子どもたちの熱量のグラフが山あり谷あり海ありと、記録されたような熱い感じの絵巻となったことは、ふしぎなほど爽快なものでもあったような気がします。

一日目の朝。墓地からレース鳩たちを飛ばした瞬間を、わたしは気づきの間で見ていました。空へと飛び立った鳩たちの行方はわたしの位置からはすぐに見えなくなったのに、みなさんの頭の動きがそろって同じ方角を見ながら鳩たちの動きを追って同じように動いているのはよく見えて、「あぁ鳩たちはあっちの方へ飛んでいったんだなぁ」ということが伝わりました。それは動きだけが見える、静かなサイレントの時間でもあって、それぞれの人がそれぞれに立ちながら一緒に同じものを眺めている姿が、なんだかしーんと感動するものでありました。この一種静けさの時間があり、そして混沌とにぎやかな色と墨と声の踊る時間がどちらもあるということ。
そういえばこのキッズ・ミート・アートのすてきなコピーは「いろがうごく、ことばがざらつく、おとがみえる」。わぁ、ほんとにそんな感じだったなぁ。

チラシの表紙の幾つものいろんな色玉たちの、ざわめきながら、ぶつかり合いながらもすーいすいと動いていくような姿が、そのまま、この二日間を遊び楽しんで動いている子どもたちや大人たちの姿に重なりました。
気持ちがいいこと、すっきりするまで何かすること、その間には何かにまみれて、静けさと賑やかさも一緒くたにあるままで動くこと。そういうシンプルなことがわたしには残ったように思います。 子どもたち、見守って下さった親御さんたち、お手伝い下さったスタッフの皆様、このチャンスを下さった應典院の皆様、納谷衣美さんに感謝します。ありがとうございました。

<執筆者プロフィール>
●中井敦子(なかいあつこ)
2004年より京都・薬師山美術研究所こどもアトリエにて、造形・絵画をこどもたちと楽しむ。ことばとことばじゃないものをつなぐものとしてのアートをテーマに活動。

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