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1/14コモンズフェスタ2013 美しいノイズ~陽だまりに羽虫の音のかすかなり~

1月14日に、コモンズフェスタ2013参加プログラムとして、大人と子どものための音楽ライブ「美しいノイズ~陽だまりに羽虫の音のかすかなり~」を開催致しました。中垣みゆきさんのディレクションにより、ゲストアーティストとして、坂出達典さんと梅田哲也さんをお迎えし、会場のパドマ幼稚園講堂には、大人と子ども約40名が集まってくださいました。

まずは坂出達典さんのパフォーマンスから。坂出さんは、身の回りの日用品をつかった自作楽器やサウンドオブジェによる演奏を行うアーティスト。この日は大雨の中、大きな荷物と應典院までの自作の地図メモを手に現れた坂出さん。会場入りするやいなや、着々とサウンドチェックを済ませると、講堂の隅っこでじっと子どもたちの来場を眺めておられました。そして、スタートの時間になり、開場の真ん中にしずしずと出てきた坂出さんは、独特のウィスパーボイスでご挨拶をすませると、さっそくラジコンカーによるビートニクスへと入ります。ラジコンカーから出る電磁波を干渉させて「ジジッ」という微かな音を発生させ、なにやらマジシャンのように目に見えない何かを操っている、その姿にオーディエンスはさっそく引き込まれていきます。そして掃除機による、バクバイプ。おもむろに吸い込み口をはずしてそこに長さの異なるホースを繋ぐと、ヴォ―という小さな重層音が響き渡ります。

次は、トイレの洗剤「サンポール」によるパフォーマンス。ところどころ解説を挟みつつ、サンポールを何やら化学反応させて生まれるパチパチパチ…という音がフィールドレコーディング用のマイクで拾われていきます。坂出さんの生み出すサウンドの世界は実にささやかな音であふれていて、その「ジジッ」「ヴォ―」「パチパチ」というかすかなノイズは不思議とわたしたちを静寂な世界へと誘います。いわゆる五線譜から生まれる音楽ではないそれらの音は、生活の中にあふれる目に見えない地磁気や電波や粒子をこすったり震わせたりしながら、地球や宇宙といった広く豊かな空間を想像させるものでした。

次に登場いただいたのは、梅田哲也さん。梅田さんも、日常の中の生活用品をつかったインスタレーションやサウンドアートをつくりだす作家さんです。今回は、坂出さんからの共演オファーを受けてご出演いただくことになりました。事前にスタッフにありったけのペットボトルを集めてほしいというご指定もあり、会場には、子どもたちが興味を示さずにはいられない、無造作な仕掛け(ダンボール、紙コップ、音響機器やそれらをつなぐコードの束など)が設置されました。梅田さんの登場とともに、坂出さんの時と同じく、今から何が始まるのだろう??という期待感が広がります。大人も子どもも、梅田さんの一挙手一投足をみつめる中で少しずつ会場が暗転していきました。

そして現れたのは、レコード盤の溝に、針の代わりにカラーセロファンをあてることで、その音源を再生させるカラフルな空間。その中で、梅田さんがゆったりとつぶやく「あかおに」「あおおに」ということばに、子どもたちのケラケラという笑い声が合いの手のように共演します。

写真 いけだあい

水滴の音、ドライアイスの音、モーターの音、そしてみんなの影。科学の実験のようなパフォーマンスの中で、みているわたしたちの身動きも含めた、さまざまなものの<気配>が会場のあちこちから響いてくるような、そんな時間となりました。おとなと子どもが肩をならべて、羽虫のような美しいノイズに、じっと耳をかたむけ、目を凝らし、そっと息をのむようなパフォーマンスとなりました。