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1/11~19 コモンズフェスタ hyslom展「大家さんの伝書鳩」トーク&映画上映

コモンズフェスタ2014の招聘アーティストとして、hyslom(ヒスロム:加藤至、星野文紀、吉田祐)にご参加いただき、1月11日から19日の8日間、應典院2階の気づきの広場にて展覧会を開催した。hyslomは、山から都市に移り変わる場所を探検し、日々変わりゆく風景や不思議な対象を自らの「身体」で触れて感じることをスキームとする。そしてその感覚を「遊び」と称して作品制作を行ってきた。今回は、彼らの作業場の大家さんであり著名な兢翔家でもある任秀夫氏とその伝書鳩たちとの出会いを契機としてうまれた新作となった。hyslomの作業場と任さんの書斎が、砂っぽさや生活臭をまといながら再現されたのである。そしてこの空間をより奇妙にするのは、レース鳩にまつわる様々な資料。例えば、鳩年鑑や鳩運搬専門の段ボールなど。それらは、競翔界というものが存在することに、今初めて向き合うわたしたちにとって、驚きの連続となるのだが、おそらくhyslomも任さんとの出会いの中で、この好奇心をかきたてられるプロセスがあったのだろうと追体験する感覚になる。

そのオープニング企画として、1月11日に、hyslomの映画作品 ‘My cap My mad My handkerchief’の上映会を開催。その後、ゲストとして、編集者・ライターの中西佳代子さんと映画監督の山崎樹一郎さん、そして應典院秋田住職をお迎えし、hyslomの3人を交えてアフタートークを行った。今回上映した作品は、hyslomがこれまで、様々な場所で、その時々の遊びや物語、風景を記録してきたドキュメンテーションをもとに制作した映像である。トークの話題はまず、「はたしてこれは映画なのか?」という問いかけから始まった。

これまで、映画のプロデュースを手がけてこられた中西さんは、この作品について「劇映画でもドキュメンタリーでもない。はたしてこれは映画なのか?自分のもっていたルールをゆさぶられた」と指摘。過去に映画のプロデューサーでもあった秋田住職は「映画制作のルールともいえる基本情報の説明が極端に少ない。その意味で不親切で無国籍な作品なのだが、映画の過剰な説明を超えた反映画」と解説すると、続けて山崎さんは「ドキュメンタリーもフィクションもそんなに変わらない。どちらも嘘をついている時間をみてもらうもの。」と補足した。

その後、話題は「作品をつくる動機」へと映る。星野は「何かを発見するためにまず歩く。探るために身体を使って確かめる。これまで拡散してきた素材を映画としておとしこみたい。今までに出会ってきた人を演じる、再確認する作業」。吉田は「どうすれば、これまでの『遊び』をとりもどせるか」。加藤「いつもの風景がなくなってしまう」言葉にできない感情を物語りとしてどう伝えるか。自分たちは『遊び』から出発しているが、映画という手法を選んだ時の、嘘をつくる信念、作品をつくる動機に興味がある。」これに対して、中西さんは、hyslomの魅力を「世界のあらゆる部分を素手でさわろうとしている」、山崎さんは「あらゆる状態を身体に記憶させる新しい言語。hyslomは美術でもなく映画でもない、そのジャンルを気にしない」

「いろんな方法のあいだを行き来して試しながら表現していきたい」

「わからないもの」に対峙する作法の違い、劇映画とドキュメンタリーの会話の方法、「異化」してゆさぶるアートと宗教。