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4/7-8「シアトリカルフォーラム 戯曲×恋愛『愛情マニア』」を開催いたしました。

4月7・8日両日、應典院舞台芸術大祭space×drama○プレ企画として、「シアトリカルフォーラム 戯曲×恋愛『愛情マニア』」を本堂ホールにて開催いたしました。本企画は、OMS戯曲賞を受賞した傑作恋愛戯曲「愛情マニア」(作:サリngROCK)を抜粋上演し、その合間に、役者陣や観客、多領域のパネリストもまじえて「現代の恋愛の諸相」について語り合うもの。「演劇×フォーラム」という点では、ブラジルの演出家、アウグスト・ボアールが提唱した「フォーラムシアター」などが連想されますが、上記のような形での企画は、應典院寺町倶楽部にとっても、おそらく日本でも初の試みと思われます。演出・構成・進行は、泉寛介さん(baghdad café)が務められました。

今回抜粋して上演されたシーンは、ポップでコミカルな演出が加えられながらも、好きな男子学生を監禁する女性を皮切りに、「ストーキング」「デートDV」「毒親との関係」など、他者の支配/被支配というシリアスな主題をさまざまな形で提示するものでした。7日と8日では役者のほとんどを入れ替えての上演となり、ご本尊が見つめる本堂ホールの中心につくられた舞台上で、それぞれのキャラクターが日ごとに全くちがう様相で浮き上がりました。

1日目は、パネリストに現代魔女の汐月陽子さん、観光家の陸奥賢さん、應典院主幹の秋田光軌を迎えて、とりわけフォーラム色の強い内容に。泉さんの進行で、直前に上演した状況に対する役者の意見(登場人物としても一個人としても)が提示され、それに対してパネリストがコメントするかたちで主に進行しました。自己の存在価値を否定し、暴力によって「何の価値もない自分」を証明してくれる他者に依存してしまう。恋愛において、あるいはその手前の人生でかけられる、そんな「呪い」をいかに解除するのか。汐月さんからは心理学から「リフレーミング」、秋田からは仏教から「執着を捨てる」、陸奥さんからは演劇的な「ごっこ遊び」というキーワードで、一人ひとりが「呪い」に対処するための知見が語られました。

また2日目は、秋田光軌に加え、緊縛師の永遠嬢さんを迎えて、バラエティ色の強い展開となり、「制限をかけることで自由を得る」という、緊縛と宗教の共通性をも確認する一日となりました。前日とは異なり、役者からパネリストへ、パネリストから役者へと頻繁に応答を重ねながら、この日も「どうやって自分に自信を持つか」という話題に焦点が定まっていきました。特に印象的だったのは、永遠嬢さんが過去に人間関係で苦しんでいたときに、カウンセラーの先生に言われたことばを紹介した場面でした。「あなたの感じる寂しさは、物心つく前から親によってつくられたもの。それを恋人や友人に求めても、誰もその時の親の代わりはできないから絶対に解消されない。あなたの求めているものは手に入らないけど、あなたが欲しいものを誰かに与えつづけることで孤独は満たされていくはず」。このことばを聞いて、観客の中には涙を流す方もいらっしゃいました。

両日ともに、日常と演劇の境界を揺り動かしながら、恋愛というテーマを通して、生きることへの問いを深めるような時間となりました。日常と演劇をどう接続させていくのか、引き続き次なる試みを検討してまいります。

應典院事務局

人物(五十音順)

泉 寛介
(脚本家・演出家 / 大阪現代舞台芸術協会理事)