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10月10日、コミュニティ・シネマ・シリーズにて「生物多様性」と「共生」に迫る

2010年10月10日、應典院コミュニティ・シネマ・シリーズの一環として、「地球交響曲」の第1番(1992年)と第7番(2010年)の上映をいたしました。コミュニティ・シネマ・シリーズとは、コミュニティシネマ協議会のコミュニティシネマ憲章に賛同し、官民が一体となった新しい上映活動としての「コミュニティシネマ」活動を実施するものです。2005年に第1回の企画を開催して以来、新作映画のプレミア試写会やデジタルシネマの上映会などを行ってきています。

第16回目となる今回は、国際生物多様性年にちなんで、地球に溢れる多彩な<いのち>に想いを馳せるべく、2作を上映いたしました。それらを通じて、私たち人類の活動が、多くのいのちとその環境を奪い、自分たちの首をも絞めようとしていることに自覚する必要があるのではないか、そんな趣旨を掲げての開催でした。

開催の背景には、企画の翌日、2010年10月11日から、愛知県名古屋市で開催される生物多様性条約第10回締約国会議(COP10)がありました。そこで、上映から1ヵ月以上前、9月2日の應典院木曜サロン「チルコロ」にて、環境省の近畿地方環境事務所から専門家を招き、生物多様性の観点で明らかとされている3つの危機について学びました。要約すると、まずは人間活動による生態系の破壊、種の減少・絶滅、そして里地里山など人間の働きかけの現象による影響、さらに外来生物などによる生態系の攪乱があると言います。これらの3つの危機に加え、地球温暖化の進行によって、種の2〜3割で絶滅リスクが上昇する傾向にあるとのことでした。

多くの方がご存じのとおり、映画「地球交響曲」は、ガイアシンフォニーの名でも知られているとおり、イギリスの生物物理学者ジェームズ・ラブロック博士による「地球はそれ自体がひとつの生命体である」という考え方(ガイア理論)に基づき制作された、オムニバスのドキュメンタリー映画シリーズです。「地球交響曲」のホームページによれば、「草の根の自主上映を中心とした上映活動だけで、これまでに5600回以上上映され、延べ220万人に上る観客を動員」とあります。

今回、地球サミットの年に公開された第1番と、そこから18年を経た第7番をお寺の本堂にて同日に上映したわけですが、合理化・効率化が追究される個人主義の中で軽視されかねない支え合いのかたちに接近することができたとすれば、主催者冥利につきます。

なお、幕間のトークでは、『ぼくたちは何を失おうとしているのか:ホンネの生物多様性』の著者、関口威人さんを招き、大阪ガス株式会社エネルギー・文化研究所の弘本由香里さんの進行のもと、<つながり>の中で生きる、私たちの<いのち>の物語に迫りました。一部、生物多様性「とは?」を知りたい方、また、映画の内容を深めるという観点で期待を抱いていた方もおられたようです。しかし、感想を拝見するに、映画で取り上げられていく一人ひとりの物語と同じ枠組みで、市井の人々が大切にされている価値を丁寧にひもといていく大切さを、関口さんの語りから感じ取っていただけた方も多数おられたと認識しております。ともあれ、お寺の本堂で、<いのち>の物語に触れていただき、今、ここに生きている意味を見つめ直す契機となればうれしく思います。