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12月14日第62回寺子屋トーク「まちなかコミュニティの設計図」開催

あえて「しない」デザインへ

年の瀬の12月14日、寺子屋トーク第62回「まちなかコミュニティの設計図」が應典院本堂ホールにて開催されました。メインゲストにはStudio-Lの代表で、京都造形芸術大学空間演出デザイン学科長の山崎亮さんを、後半のトークセッションにはアサダワタルさん(事編~Kotoami)、中村裕子さん(大阪商工会議所)、松富謙一さん(からほり倶楽部)をお招きいたしました。珍しい平日夜の開催ながら、満場の参加者を得て会場は熱気に包まれました。東日本大震災を経験した年の末に、今後の地域を考えるヒントを共に探ることになりました。
第一部は「人を結ぶ地域のデザイン」と題した山崎さんの講演でした。造園をはじめとしたランドスケープから、ハード整備を前提としないコミュニティへとデザインの関心が移っていった経過について、世の中の関心の変化とあわせて丁寧にお話いただきました。また、著書『コミュニティデザイン』(学芸出版社)で紹介されたマルヤガーデンズ(鹿児島市)などの事例をはじめ、多様な現場で多彩な担い手が鍵となって積極的な実践が重ねられていることが紹介されました。そして、自分のやりたいことと社会が求めることから「夢」を描き、やりたいことにできることを重ねて「趣味」を活かし、自分ができることを社会に投げかけることで「労働」とする、それこそがコミュニティデザインにおける企画の醍醐味だとまとめられました。

否定しないということ


後半は「持続可能な<まちなか>コミュニティとは」と題した円卓会議の形を取りました。まずは3名が話題提供を行い、まずはアサダさんが上町台地マイルドHOPEゾーン協議会による「オープン台地」から、まちを見つめる個人の目線について解説しました。続いて中村さんが事務局を担われている東横堀川水辺再生協議会(e-よこ会)の内容を説明。そして松富さんは、戦災で焼け残った空堀界隈の長屋再生を通じた魅力発見の取り組みを紹介しました。
その後、参加者の方々にマイクを向けた総合討論になると、会場からは「身分志向の人と目的志向の人とが混在する集団」、「継承者が居ない墓地が多い霊園」など、多様なコミュニティのデザインに対して質問が寄せられました。「デザインするコミュニティにそもそもあった関係性こそが大事」(松富さん)、「外部の人々の眼差しと関わりによって協働の水準はステップアップ」(中村さん)、「まちは共同体と言うより共異体」(アサダさん)と、各々の現場からの知恵が示された後で、山崎さんは「変数を大事にする」のが重要、とまとめました。つまり、コミュニティを一様に考えない、と。コミュニティデザインには「教科書」はなく、「Yes, and…」と、まずはその人を受け入れていくことで、ないものを「つくる」ことから、あるものを「つかう」ことへと関心の重点が変わるとのことです。