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3/9【コモンズフェスタ】松葉曄子さんの被爆ピアノ・チャリティーコンサートを開催

3月9日、コモンズフェスタ2012「記憶を巡る旅」の一環として、本堂ホールにて、被爆ピアノによるチャリティコンサートが開かれました。演奏されたのは、松葉曄子さんのHORUGELピアノでした。

松葉曄子さんと共に広島へ嫁いだアップライトピアノは、1945年にその地で原爆に遭いました。しかしその後、演奏ができるように修復され、2010年に国連の「国際平和デー」に合わせてニューヨークでコンサートを開催。その後は関西を中心に各地で松葉さんの被爆ピアノが演奏されています。

今回のコンサートは、應典院にて東日本大震災から1年を迎えるにあたって各種の企画を検討しているところ、本寺である大蓮寺のある檀家さんを通じてご縁をいただきました。この3月で一旦ツアーに区切りを打たれるとのことで、今回が大阪市内での最後の開催でした。

まず、ピアニストの林琢也さんが、即興演奏を元にした作品『ジュリア姫とピエール王子のおはなし』を披露されました。1933年に購入の後に被爆したピアノから奏でられた色鮮やかな音色は、時には繊細に、時には力強く、本堂ホール内に響き、鑑賞者の方々をうっとりとさせていきました。

続いて声楽家の田嶋喜子さんは、待ち遠しい春の歌を中心に、日本の歌を美しい歌声で表現してくださいました。中でも山田耕筰作詞の『あわて床屋』では、田嶋さんのコミカルな振り付けと歌い方で、聴衆の笑みを誘いました。お時間のある方には、ぜひ歌詞をお調べいただければと思います。

そして、あまり馴染みのない方も多いのではないかと思われるヘルマンハープを石﨑育子さんが演奏。ドイツ生まれで、日本ではあまり知られていないヘルマンハープですが、バリアフリーを目指して作られた楽器だけあって、誰にでも演奏しやすい工夫が詰まった楽器です。休憩時間には演奏体験の機会も提供いただき、五線譜が読めなくても演奏できるように独特の楽譜が作られていることに驚く方も多かったです。そんな楽器の音色は素朴なもので、『ドレミの歌』『さくら』など親しみのある曲を演奏していただきました。

コンサートの最後は、林さんが東北での被爆ピアノコンサートのために作られた歌『あいしてる』を、会場の全員で一緒に歌いました。林さんが弾く伴奏が、即興で次々にアレンジされていき、劇場空間に文字通り劇的な展開が広がっていきました。また、音楽と併せて、木村幸恵さんの作品『クリスタル・キャノピー|水晶天蓋』が作り出す透明で神秘的な世界とのコラボレーションも、何とも言えない雰囲気を醸し出していました。

ピアノの背面には、爆撃時に受けた傷が生々しく残っています。一旦はボロボロになってしまったこのピアノが見事な復活を遂げたように、震災によって傷を負った東北の復興を願うばかりです。そんな、祈りがこめられたチャリティコンサートでした。