イメージ画像

7/14 夏のエンディングセミナー2012 第二回「『まじくる』って?~つどい場での日常からみえるもの~」

先週から始まった大蓮寺・應典院 夏のエンディングセミナー2012。今年のテーマは「『看取り』から地域を支える~人生の最期、誰があなたに寄り添うのか~」と題して、長年「看取り」に携わってこられた3名の専門家を講師としてお招きしています。第一回の山口育子さん(NPO法人ささえあい医療人権センターCOML理事長)に続き、第二回目の講師には、「つどい場さくらちゃん」を運営されている丸尾多重子さんをお迎えして、「つどい場」についてお話を伺いました。

“まるちゃん”こと丸尾さんのお話の中は、終始笑いと涙でいっぱいでした。まずは自ら「フランス生まれだ」というまるちゃんに一同驚きました。が、良く聞いてみたら通天閣をエッフェル塔に、淀川をセーヌ河だと思って育ったとか。そして、10代のころから長きに渡る祖母の介護のあと、単身で東京へ。食に関するあらゆる仕事に従事されたあとに帰阪されます。そして、阪神淡路大震災をはさんで、ご両親の介護、そしてお兄さんの自死の体験をされました。介護中に感じたいろいろなことを次に生かそうと、ヘルパー講習の実習に行った際に、泣き叫ぶおばあちゃんがストレッチャーに乗せられて入浴させられている介護の現場に直面して、「これは違う!」とその足で不動屋さんへ。2003年に西宮駅前で「つどい場さくらちゃん」が誕生したきっかけです。まるちゃんの哲学は「食べることは生きること」「生きることは食べること」。介護や高齢者の施設での「食」に対する意識の無さや考え方の貧しさに疑問を呈され、「つどい場さくらちゃん」では美味しい昼食をみんなで食べる「会食の場」を毎日のように提供されています。また、高齢者の方のお出かけを積極的に支援する旅行の企画、介護に関する知識を得る講座、介護者がふっと一人になれる時間を作る支援など、さまざまなこともなさっています。

そして、「つどい場」では、「まじくる」(丸尾さんの造語)ことが大事だとおっしゃる丸尾さん。ご自宅を「住み開き」されているリビングの空間に、介護者や介護職員、そして介護されている当事者だけの「閉じた」空間と人間関係ではなく、医療関係者、行政関係者、学生さん、近所の子ども連れの母親、など、とにかくありとあらゆる異業種・異領域の方たちに「拓かれて」いる空間と人間関係を創られています。いろいろな方が混ざりあって、食事をしながら話したり、聞きあったり、学びあったりする関係を「まじくる」と丸尾さんは説いているのです。 後半の秋田住職とのトークも、絶妙な漫才の掛け合いを見ているかのようでした。「とにかく一緒にメシを食わんとだめ。お茶だけやと会議になる」には住職も客殿のみなさんも大笑いでした。丸尾さんの「場づくり」は、徹底的に「食べること」に焦点を置き、食べる欲=生きていこうとする欲、という当たり前のことを、現在の医療現場や介護現場は大事にしているのか?と問題提起されています。「食べられない」環境を作ってしまうのではなく、積極的に「食べようとする」気持ちを起こさせるような食事と場づくり、人との関係が大事だということを改めて再考するお話でした。

次回は、仏教系ポスピスに勤務後、「寺ネットサンガ」という超宗派寺院ネットワークをつくられ、500人以上の方の看取りに立ち会い、生活困窮者などの葬送支援・自死や震災後の遺族の支援などをされている中下大樹さんに、それらの活動から見えてきた課題と展望について伺います。