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2017/8/4 二朗松田:詩の学校・お盆特別篇「それから」レビュー

應典院寺町倶楽部との協働により、モニターレビュアー制度を試験的に導入しています。8月4日(金)に上田假奈代さん(特定非営利活動法人こえとことばとこころの部屋代表)進行のもと開催した、NPO法人こえとことばとこころの部屋(ココルーム)主催の詩の学校・お盆特別編「それから」。過去最大の参加人数にて、大蓮寺での秋田住職による法要の後、墓地にて詩作・朗読のワークショップがおこなわれました。今回は脚本家・演出家の二朗松田さんにレビューを執筆していただきました。


お墓とは、お化けが運動会をする場所、
もしくは映画「バタリアン」に於いてゾンビがぞろぞろ蘇る場所、
くらいの認識である罰当たりな私にとって、
夜、墓地に腰を下ろす、
というこの時間はある種戸惑いの30分間だった。
まるでよく知らない人の誕生日会にお呼ばれしてしまった時のような。

30分経過、「詩の学校」オーガナイザー上田さんの
「そろそろ集まってくださーい」が墓地内に響く。
その声量にさえ少しばかりの狼狽を覚える。

30分の間、墓地に佇み、詩を綴る。
それを皆の前で読む。

説明すれば二行で済んでしまうこのイベントではあるのだが、
いざ詩を考えようにも何も思い浮かばず、
自分の発想の貧困さを改めて思い知る。墓地で。

詩とは、
意識下、無意識下で感じつつも、
日常会話ではまず出ることのない靄のようなものを
心の中に潜り、言語化する作業だと考える。

故に、30分間という短い時間で紡がれるその言葉には、
どうしてもその人の本質のようなものが滲み出るし、
更に、それを皆の前で朗読するという行為は、
普段隠している部分の開陳であり、
タオル無しで混浴露天風呂に入っていくような気恥ずかしさ。

そうして自意識の境界線をウロチョロしていたら、
あっという間に時間は過ぎた。

参加者各人の詩は実に様々ではあるが、
傾向としては、
比較的若い参加者が「死」と「自分」への目線をテーマとするのに対し、
ある程度年配の方々の詩の多くは
実際にお亡くなりになった家族・友人との対話、であった。

当たり前の話ではあるが、
年齢を経れば人の死はどんどん身近なものになっていく。

私のお墓の前で泣かないでください、
そこに私はいません、眠ってなんかいません、
と秋川雅史は歌うが、
実際お墓の前に立てば、
そこに何かを感じざるを得ないし、
何かを感じるようにデザインされているし、
そこで故人を思うことはごく自然な行為だと思える。

勿論、この墓地に参加者の知人たちが埋葬されている訳ではないだろうが、
墓地での熟考、その末の言葉が故人との対話であるのは
当然の帰結なのだろう。
今度秋川雅史に会ったら、
お前もお墓で詩を書くとかやった方が良いぞと言ってやろうと思う。

さて私はといえば、
先述したような「墓地に居る俺」という事に対する違和感をそのまんま詩に綴った。
正に自分の中にある靄を言語化してみたんだが、
それを朗読した結果、
こいつホンマに言うても言わんでもええようなこと言うてるな、
みたいな空気感を残して終わった。

 

〇レビュアープロフィール

二朗松田(ジロウマツダ)

デザイナーの傍ら、演劇・映像作品の脚本も手がける。演劇ユニット「カヨコの大発明」の全ての脚本・演出を担当。
2015年、脚本を担当した短編映画「ウェルテル無頼」が48Hour Film Project大阪にて作品賞、脚本賞受賞、また同作品はFilmapalooza 2016(アトランタ)、カンヌ国際映画祭でも上映される。

〇レビュアー主演等情報

二朗松田脚本提供

らぞくま『Permanent Apartment』
8月26日(土)・27日(日)
http://ameblo.jp/razokuma/

カヨコの大発明出演

ムーンビームマシン『月雪の娘』
9月15日(金)〜17(日)
開演前ショーゲストとして16(土)14時と19時の回(開演20分前)に参加。
https://www.mbm-p.com/next-stage

10月10日(火)
30×30 pair.85「俺たちの地球空洞説×カヨコの大発明」
http://ka-geki.jugem.jp

人物(五十音順)

秋田光彦
(浄土宗大蓮寺・應典院住職)
上田假奈代
(特定非営利活動法人こえとことばとこころの部屋代表)
二朗松田
(デザイナー・脚本・演出家)