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2017/8/4 髙道屋沙姫:詩の学校・お盆特別篇「それから」レビュー

應典院寺町倶楽部との協働により、モニターレビュアー制度を試験的に導入しています。8月4日(金)に上田假奈代さん(特定非営利活動法人こえとことばとこころの部屋代表)進行のもと開催した、NPO法人こえとことばとこころの部屋(ココルーム)主催の詩の学校・お盆特別編「それから」。過去最大の参加人数にて、大蓮寺での秋田住職による法要の後、墓地にて詩作・朗読のワークショップがおこなわれました。今回も劇作家・演出家の髙道屋沙姫さんにレビューを執筆していただきました。


詩の学校は学校なのか

持ち物 : 筆記用具、ノート、虫除けスプレー、懐中電灯。持ち物だけでもワクワクするが、墓地で詩作をするという中々体験できない内容に、より一層期待が膨らんで参加を決めた。

初めて大蓮寺に入った。普段お芝居をしていて、應典院には行ったことがあっても大蓮寺には行ったことがなかった。『詩の学校』とは何をするんだろうか。ドキドキする。横開きの扉をガラガラと開けて待合いへ。初めてここに来た人もいれば、常連の人もいるようで気の持ちようは様々。他の参加者と雑談しつつ時間が来るのを待つ。全員が受付を済ませてまずは仏様の前へ。お経を読んで、そのあと住職の説法を聞いて、そして詩作という流れらしい。住職は仏教賛歌のお話をされた。仏教系の幼稚園に通っていた私は毎朝仏教賛歌を歌ってお経を唱え、運動会などのイベント毎にお寺に行っていた。事ある毎に住職が紅白饅頭を下さって、みんなで食べていたことを思い出す。しかし、中高とカトリックの学校に入った私は、こんどはシスターの元で毎朝賛美歌を歌って聖書を読み、ミサやらロザリオといった行事を黙々とこなしていた。つまり私は宗教感ぐちゃぐちゃ人間で、だから今回はお線香の匂いとか仏様の荘厳な雰囲気をとても懐かしく思いながら正座している足の痛みと戦いつつお経を読んでいた。

一通りの事が終わって、いよいよ本題へ。それぞれのニックネームも決めて、他の参加者との距離も縮まった。その後は早速墓地へ。静寂と重々しい空気感。しかし、不思議と恐怖心はなく受け入れられているような気がして、こちらがそれを遠慮したくなるような不思議な気持ちになる。1人1つずつ蝋燭を持ったら『どこでも自由に行ってもいい、30分後には集合して発表して貰います。』というアナウンスが入り、皆散って行った。

墓地を探検する人もいたが、私は正直どこにも行く気にならなかった。先日の『グリーフタイム』のことを思い出していた。墓地の中での詩作は場所に影響されて死者に想いを馳せる人が多いだろう。寧ろその方が正解なのかもしれない。しかし、最後は皆が必ず墓にはいる。そう思うと特別な気持ちがどんどん薄らいでいく。何故か異次元の静かな公園にいるような気持ちになっていた。蝉の声、水道からポタポタと滴り落ちる水滴、誰かの足音。全てがスローモーションに感じてぼーっとしてしまい集中できない。気づけば20分も経っていて、慌てて詩を書く。残り10分でなんとか形にして集合場所に戻り発表が始まった。

ちゃんと詩を書く人もいれば、手紙のような人や物語のような人もいて、どれも書き手の気持ちがこもった作品になっていた。講評などは特になくどんどん朗読されていく。

この状況を楽しめる人も大勢いるだろう。しかし、残念ながら私は楽しめなかった。教科書のない生活を始めてから詩と触れ合う機会が中々持てなかった私は結局のところ詩がなんなのかが分からない。だから、『詩の学校』という所は学びのチャンスなのかもしれないと思っていた。しかし、(いつもはどうか知らないが)今回は発表に留まってしまい『学びたい』という気持ちが宙ぶらりんのまま終わってしまった。そして、墓地という特殊な場所にいるのに、それを感じる前に詩を(書き終える必要はないが)形にしなくてはいけないこと。私は30分では出来なかった。元々遅筆な私には場所に慣れる時間と詩作をする時間、合わせて30分では短い。先述したように書き切る必要はないのだが、せっかく書くのであれば最後まで書きたいと思ってしまう。

楽しめる人がいるのも分かる。普段表現することのない想いを表現したり、きちんと言葉に出来ることや、誰かの詩を聞いてその人の想いに寄り添うことが出来る時間であった。私もそこまで行きたかった。もう少し、時間と余裕が欲しい。

 

○レビュアープロフィール

髙道屋沙姫(たかんどうや さき)
6歳で演劇と出会い、子役として活動を始める。中学から高校まで演劇部に入り、高校2年生で1人芝居の作・演出・出演で学校初の近畿大会出場を果たす。その後、大阪芸術大学舞台芸術学科演技・演出コースに進学するも、19歳で急性骨髄性白血病を発症。闘病生活中、様々な人の温かさを知り骨髄移植を経て1年で退院、大学に復学。かまとと小町を旗揚げし、復帰一作品目の『MAMMY』で大阪短編学生演劇祭で最優秀賞と観客賞をW受賞。全国学生演劇祭への出場を果たす。以降、『チクっと胸が痛くなることを、クスッと面白く』をモットーに、かまとと小町で(番外公演以外)全ての脚本と演出を担当。客演、脚本提供、演出、ラジオドラマの執筆やワークショップ講師など、活動の幅を広げている。

○レビュアー出演情報

KING&HEAVY第3回公演
~Doc&HEAVY presents~
『バグリン・ファイブ』

[脚本・演出] 川下大洋

[出演]
飯嶋松之助(KING&HEAVY)、伊藤駿九郎(KING&HEAVY)、川下大洋(Piper)、石畑達哉(匿名劇壇)、村角ダイチ(THE ROB CARLTON)、ボブ・マーサム(THE ROB CARLTON)、山咲和也、西原希蓉美(満月動物園)、髙道屋沙姫(かまとと小町)、隈本晃俊(未来探偵社)

[日程]
2017年9月29日(金)~10月1日(日)

[会場]
HEP HALL(大阪・梅田HEP FIVE)

[特設サイト]
http://www.donalab.jp/b5/

人物(五十音順)

秋田光彦
(浄土宗大蓮寺・應典院住職)
上田假奈代
(特定非営利活動法人こえとことばとこころの部屋代表)
髙道屋沙姫
(かまとと小町主宰)