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7/13 コミュニティ・シネマ・シリーズvol.21「波あとの明かし」を開催致しました。

7月13日、コミュニティ・シネマ・シリーズVo.21『波あとの明かし~The light After the Tsunami~』の上映会を、監督である坂下清さんを迎え、應典院の本堂ホールにて開催致しました。この映画は、岩手県宮古市の風習「松明かし」を探るドキュメンタリー映画です。

津波が押し寄せる地鳴りと人の叫ぶ声で、映画は始まりました。映画の内容は、「松明かし」の起源について、宮古市の人たちにインタビューをしていくというものです。「松明かし」は、それぞれの地区で少しずつ違うやり方がありますが、宮古のどの家庭でもお盆に家の前で松を焚く風習として行われています。監督が、「松明かしは何のためにしているのですか」と宮古の人たちに問いますが、「松明かし」の意味を知りません。しかし、大体の人が「松明かしは先祖を導くための灯火」だとは感じています。

「松明かしをする理由は、理屈じゃないんだ。」

最後のインタビューに答えた方の言葉が胸に残りました。

また、エンドロールでは、松明かしをテーマにした陽気な楽曲と、被災の爪痕がありありと感じられる写真の対比が、非常に印象的でした。

映画の余韻が残る中、坂下清監督と山口洋典(應典院寺町倶楽部事務局長)とのトークセッションが続きました。坂下監督になぜ、この映画を撮ろうと思ったのか、「松明かし」の風習と、宮古市の海難事故や津波の歴史についての関連について、お話を伺いました。この地域で「松明かし」が続いている理由については、先祖からの「大切なものを忘れてはいけない」というメッセージなのではないかとおっしゃっていました。トークセッションの後半では、山口事務局長から「松明かしの今後に危惧はないですか」という質問に対して、坂下監督は「形だけなら残らなくていい。想いが続くことが大切。」と答えられました。「形ではなく、型にこだわってこそ。説明のつかないその理由をもって、続いていることが大切。」と返答した山口事務局長の言葉に多くの方たちが頷き、「いつも通りにお盆を毎年行い、それがなんとなく続いていることの意義」を参加者の方が深く感じとられた様子でした。

普段の生活では、お盆の風習も含め「日本の宗教文化」を肌で感じる場面は少なくなってきた現代社会ですが、この映画で、日本の宗教文化というものは、こんなにも先祖からの無形の大切なものが引き継がれた暖かいものなのかと、実感致しました。

さらに、上映会後には、映画の冒頭で震災到達の現地の様子を伝える音源の部分がことさら耳に残りました。音源は、津波が襲ってくる時の「もうだめだ、逃げろ」という声や人々が逃げまとう様子が録音されたものでした。関西に住む私たちは、東日本大震災について、どこか他人事で、時間とともに記憶からも遠くなっていて、実感はあまりありません。今回の上映会で、人の命が多く失われたこと、まだ完全な状態に戻っていないこと、起こった事実がどれだけ人の心を傷つけたか、今も恐怖となって植え付けられていることなど、忘れてはいけないことが改めてたくさんあると思いました。