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コラム

KMA2016REVIEW 門前斐紀

「アートが芽生える身体」
門前斐紀(京都大学こころの未来研究センター研究員(上廣こころ学部門))

キッズミートアートを巡ると、アートが身体に芽生える。好奇心をくすぐられ、その場で起こっている出来事に関心をもつや否や、誰でもすぐにお祭りへと仲間入りだ。その開放感や懐の深さは、大蓮寺・應典院という歴史的空間から湧き出している。

世界の新陳代謝
「アート(art)」の語源には、人間が世界への住みつきを善くするために技を編み出し、その技が身体にこなれて冒険的な遊びへとすべり出す流れが辿られる。キッズミートアートではアートの語源そのままに、人々がその場に生じるできたての現代アートを介し、新しいひらめきやインパクトを掴みとる。その意味で、会場は世界の新陳代謝に満ちていた。
たとえば、糸を編み込む〈クラフト〉で、「素材」となる直前の物質の表情に肌身で感じ入るとき、人形作りの〈造形〉で、指先を「足」にして変幻自在の小さな行進をするとき、〈絵画〉で大きな紙に色を滴らせ、思いがけない「地形」を発見する瞬間、〈演劇〉での即興的な巡りあわせにおいて、キャラクターやシナリオを紡ぐとき、そして、〈朗読〉後の対話で自分の意見をつかまえようと言葉を模索するとき……何が飛び出すかわからない可能性が渦巻く。

他者の身体へ寄り添う
アートを身にまとうと、他者との間に通気孔が開くようだ。〈ボディワーク〉では、子どもたちが身体をフル活動してあらゆる事柄になりきり、お互いの表現を心底楽しみあいながら華麗に変身していた。ある瞬間、背中合わせになって動く子どもたちが一つに見えた。身体の動きには「ここまでが自分」という明確な境界がない。ただその一方、お互いのちょっとした機微やわずかな表情が、動きを刻々と決定している。身体の間の通気孔はその場の感度をも高め、そこに居るだけで深呼吸しているような心地よさを感じた。

「他者」と共に飛び立つ
呼吸が深まる体験として〈鳩ワークショップ〉は強力だった。人間にとって完全なる「他者」であるレースバトたちが相手だからだ。子どもたちはハトと友だちになりたくてうずうずしていた。でも、きっと慣れない人間は嫌だろうし、だから攻撃されるかもしれない…子どもたちの中に、「他者」に対する親しみと畏れ、人間らしさが際立っていた。
「お墓の上に移動してハトたちを飛ばします。そのときハトを持ちたい人?」次々に手を挙げる子どもたち。でもいざとなるととても慎重だ。こわいけど触れたい。思いやりと大胆さが混ぜこぜになりながら、大人の手を借りて、子どもたちは「他者」に触れていた。
お墓の中を行列がぞろぞろ進む。無事の帰還を祈るお経の後、息をのむような歓声に見送られ、ハトたちは飛び立った。手元の温もりが消行くまで、多くの視線はいつまでも空を舞っていた。縁として羽を拾ったり、「今頃どの辺りかな」と話したりしながら、それぞれに余韻をかみしめて会場に戻った。

人間世界へ舞い戻る
会場に戻ると、日常の「習い事」を掘り下げるようなプログラムが待っていた。たとえば〈書道〉では、巨大な筆でのパフォーマンスだ。紙がこすれる音と、筆と一体の迫力ある動き。子どもたちも先生と一緒に自分より大きな筆を持ち、一線ごと文字が現れる動線を表していた。〈彫刻〉では、小さな手特有の表現がひねり出されていた。また、〈ピアノコンサート〉では、クラシックの魅力が軽やかな音使いで伝わってきた。やってみたいという一人ひとりの憧れが赴くままに、味わい深い時間が過ぎていた。
〈声明〉は、生活の底に流れる仏教の音に身を浸す機会となった。途中、鐘を鳴らすコツについて秋田光彦さんが、「上へ響かせるように音を出すんだよ」とお話をされた。音を出すこと自体が目的ではなく、見えない彼方へ祈りを運ぶ媒介として音を奉るという……即興の子ども仏教オーケストラでは、子どもたちが初めての「楽器」を神妙な面持ちで奏でていた。

共に居ることの祝祭
両日ともに、お祭りの最後は〈ノムさんのスッポコペー音楽会〉だ。野村誠さんが不思議な道具の山の中に立つ瞬間、会場全体は惹き込まれる。ノムさんの音楽は、奔放な生命のバクハツと、緻密でやさしい雰囲気に満ちている。ドン!という足踏み、ジャンプする身体の着地音一つが笑いを誘う。一番早く反応するのは子どもたちだ。好きなタイミングで自分らしく好きなことを見つける。場と呼応して次々と変化するノムさんのリズムは、子どもたち持ち前のおもしろ発見力を誘い出す。
ノムさんは楽器になりきって音を出す。子どもたちとの音響合戦では、響きが混ざりあい重なりあい、聴いているだけで身体の中から音が湧く。身体がほぐされるようなあんま効果を感じた。全身で踊るように喜ぶ子どもたちの姿は、まさにアートだった。
キッズミートアートは、そこに居合わせた全員の、巡り合わせの祝祭だ。2日間、高揚感に包まれて様々なドラマが生まれ、見守られ、応援されていた。

<執筆者プロフィール>
●門前斐紀(もんぜんあやき)
奈良市出身。表現思想研究、絵描き。子どもの頃より昆虫・動物に憧れ描きはじめる。京都大学教育学部卒業、同大学院教育学研究科博士後期課程研究指導認定退学。現在、大阪成蹊大学・天理大学非常勤講師。専攻は教育人間学、臨床教育学。

 

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