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コラム

KMA2016REVIEW 齋藤佳津子

「まちとお寺と幼稚園」
齋藤佳津子(浄土宗應典院主事)


この「まちとお寺と幼稚園」というタイトルは2013年に発行された大蓮寺の境内にあるパドマ幼稚園を中心にしたアニュアル・レポートのタイトルであるが、今回のキッズ・ミート・アートでは、このレポートのタイトル通り、下寺町のお寺と幼稚園に、子どもたちを中心に多様な方たちが「アート」に出会う一日となり、「まち」という概念を多様に捉える機会ともなった。「まち」と聞くと、多くのNPOの関係者やスタッフは「まちづくり」と繋げてしまうが、通常概念の「まちづくり」は、内外からの知恵や人的資源や文化を注入して、新しい住みやすい形へと変換していく活動全般と捉えているといわれている。2013年度から始めているキッズ・ミート・アートも、実は壮大な「まちづくり」と捉えることも可能ではないかと感じている。当日は参加者、参加アーティスト、ボランティア、六地蔵前食堂のみなさん、スタッフ、総勢で延べ500人あまりの方々が、集まられた夏休み最後の土日となった、下寺町の一角。そのまちの主役はもちろん子ども、であったが、その子どもの傍らにあるものは「分からないもの・分からないこと・分からないひと」だらけであった。また、プログラムの特異性や應典院が主催であるという意味もあり、通常の子ども向きのプログラムでは、あまり見かけない単身の若者や、高齢のご夫婦などの多世代の姿も見られ、日常にまちで見られる「子どものためのプログラム」とは一線を画した二日間になった。

「アート」の言葉の概念は広いし難しい。様々な定義や意見があるが、我々が捉える「アート」は、別稿で弘田先生が定義を試みているように、「生活・生命の世界より一旦離脱する非日常の世界」である。日常の保育や子どもの社会や遊びの世界から「離脱」する空間として場を創る中で、私たちは普段、子ども達へ教育を授ける立場にいる人たち(幼稚園の先生や子どものプログラムを生業とする人)はサポーター役へ、普段、子ども達とあまり接点のない人たちを敢えてゲスト講師としてお招きした。

古代や中世の頃から、私たちの民族は祝祭が行われる「ハレ」の日には、「稀に来訪する人」があり、祭祀の儀式や行事が行われてきた。今回のキッズ・ミート・アートでは、初めて出会った異界から来たような「おじさん」や「おばさん」、「おにいさん」、「おねえさん」に不思議な答えに窮することを言われ、その不思議さに目を丸くしたり、触ったこともない伝書鳩を空に放してみて、その空を行く軌道を眺めたり、見たこともないような大きな紙や長い紙に、足や手を墨に付けて紙の上を歩き、壮大な絵巻物が生まれたり、、、子ども達が「稀に来訪するおとな」たちとの出会いの場が生起されていったが、この「稀に来訪する人」のことを民俗学者の折口信夫は、さまざまな地方に伝わる祭りや伝説などに共通して現れる「村の外からやってくる異界からの来訪者」を神のように歓待する風習を、「マレビト信仰」と定義した。「異界」とは、自分たちの世界とは違う論理で構成されている世界であり、こちらの常識は良い意味でも悪い意味でも通じない。そのような「異界」があちこちに存在した二日間であったとも言える。

2013年の初年度のキッズ・ミート・アートは大蓮寺境内で発祥したパドマ幼稚園の子ども達が8割近い参加を占めていたが、2015年度の同企画は地域からの参加者が半分以上となった。また、近隣地域だけでなく、兵庫県や京都府など、広い地域へとの拡がりが見られた。下寺町の一つのお寺と幼稚園からわき出るエネルギーやカオス感が、遠心力の作用で、近くのまちから遠くのまちへと広がる時間であった。「まち」は日常に存在する生活や学習や、はたまた労働の場であるが、我々が提示した「まちづくり」の手法は、「マレビト」らにより、日常から一旦離脱することで生まれる空間に足を踏み入れることで、自分の日常生活の価値や意図があぶり出されるような装置になっているのではないかと。そんな視点で眺めていた二日間でもあった。

 

<執筆者プロフィール>
齋藤佳津子 (さいとうかつこ)
京都生まれ京都育ち。東京の不動産関係の職場から1992年にアメリカへ留学。大学院でNPO/NGOの運営学について学んだ後、キリスト教を基盤とした国際NGOに15年勤務。子どもと親の遊びと育ちのプログラム企画運営に携わる。2012年より應典院に勤務。グループのパドマ幼稚園にも携わり、子どもと大人の視点が交わる部分における、価値観や感性の可塑性に興味を持つ。

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