ご挨拶
大阪大学に赴任して、一年が経ちました。この一年は雑務に忙しく、なかなか関西の演劇を見て回る時間もとれませんでした。それでも、幾人かの若手演劇人と知り合うことができ、その中から勉強会のようなものが開けないかという話になりました。
もともと、この「ワークショップ研究会」は、若手演出家の一人ひとりが、オリジナルのワークショッププログラムを作る過程で、自己の演劇理論を見つめ直し、また、互いにそれを検証しようということから東京で始まった試みです。
関西で一年目の今年は、いきなりワークショップの実践にはいるのではなく、まずその前提となる理念や、社会における演劇の位置づけについて考えてみたいと思います。最初は、私の知識や経験を皆さんにお話しして質問を受ける形になるでしょうが、年度の後半ではグループワークも取り入れていきたいと考えています。私の演劇理論と、私の他の活動がどう結びついているのかを理解してもらうために、ワークショップも簡単に行っていきたいと思います。
念のため書いておきますが、この会は、「どうしたら助成金が取れるか?」「どうしたらお客さんが来るか」といったノウハウを伝授するセミナーではありません。どちらかというと、公的な支援を得て演劇をやることの意味や、自分たちはどんなお客さんに観てもらいたいのかを、青臭く、泥臭く考える会合だと思ってください。先に、「社会における演劇の位置づけについて考える」と書きましたが、そんなことを考える必要があるのかどうかも、考えたいと思います。
議論の内容は、諸外国の文化政策から、日本各地の地域演劇の現状、東京の小劇場界の裏話まで多岐にわたることになると思います。若手演出家、劇作家、振付家、劇団主宰者、制作者の他、舞台芸術に関心のある方なら、どなたでも参加していただけます。
演劇は、どこまで行っても小さな営みです。大金が儲けられるわけではありません。貧乏も仕方のないところがあるでしょう。しかし、貧乏と貧乏くさいのは違います。貧乏でも素晴らしい舞台はできますが、貧乏くさい舞台は見ていてあまり楽しくない。
居酒屋で愚痴をこぼしているだけではなく、多少なりとも、演劇の未来に希望の持てる語彙を獲得してもらうことが、この会を通じての私の願いです。
こまばアゴラ劇場ワークショップ監修 平田オリザ