
2024/10/15【住職ブログ】お寺と幼稚園を、ダンゴムシが繋ぐ。
ずっとお寺と幼稚園の間には、見えない川があった。私が住職と園長を兼務している時代も、交流はあったが、協働にまで至ったものはなかった。同じ大蓮寺の境内にあるのに、文化の違い、気風の違いがあったのかもしれない。
誰でもイケイケでいいとは思わない。安全面の確保もあるし、保護者も市民の一人だが、幼稚園にとっては大事な「契約者」でもある。應典院に来訪する人にはネームカードはおろか名前さえ聞かない。だから同じ扱いでいいとは思わないのだが、しかし、少しよそよそしい、きょうだいのような二つの社会施設が、どう協働を始めるのか、長い間の課題であった。
写真は、過日幼稚園でやったワークショップの模様だ。百っ匹のダンゴムシを携えてアーティストがやってきて、放し飼いすると園児がどう反応するか観察する試みだった。教員も2名立ち会ったのだが、内容よりもその「場」自体に驚いただろう。アーティストの学校現場の参加は、古くて新しい課題だが、私は15年も園長をやってきて初めて実現できたような気がする。アーティストにしてみると、子どもの反応や言葉が面白くて仕方ないらしく、これがどんな作品に結実するのか、楽しみでならない。
さて、この4月から應典院内にパドマエデュケーションセンター(PEC)ができた。子どもが通所するので、当然保護者の出入りも始まった。幼稚園の直営だが、少し匂いが違う。センター長ががんばってくれて、いろいろなアクティビティも生まれつつある。好評である。
幼稚園と学童、といかにも教育・保育施設なのだが(それも経営上、大事なことなのだが)、では應典院が幼稚園に回収されたのか、というとそうではない。ダンゴムシを介在して(笑)應典院らしい、というか私がずっと念願していた「共創」が少しずつ始まろうとしている。
19日から「極楽あそび芸術祭」が始まる。内容は特設サイトを見てほしいのだが、今回私の主題の一つは「應典院とパドマの協働・共創」である。詳しくは書かないが、園児のアート作品がアーティストの作品と同じ空間に展示されたり、外部の教育関係者が幼稚園のアート活動と應典院の展示を一緒に観賞したり、そこに至るまで数名の教員が(初めてと思うが)アーティストと向き合ってコミュニケーションが始まったり等々、きょうだいらしく協調と協力が起きている。画期だと思う。
では、この二人が揃って、何を目的とするのか。この程度で「共創」とは呼べないのは承知しているが、多分ここから生まれるのは「多世代・多機能・多価値」の新たな地域拠点の再生である。
お寺も幼稚園も、子どもや高齢者対象とした「専門施設」では限界が見えている。子どもと高齢者を「(金のかかる)福祉」の枠組みでしか見ない国や行政の(国民の)バイアスを払いとり、逆にそこから新たに地域から生まれる「知の交流・創造」を目指すのだ。ライフコモンズの思想に通じるものだろう。それは宗教者らしくいえば「弱者の復権」なのだが、詳細は改めて述べることとしよう。
ダンゴムシの作品がどのようなものになるのか、まだ知らない。またアーティストさんが幼稚園にやってくるという話もあるから、直前まで「非公開」なのだろう。ダンゴムシは世界を平和にする(笑)。10月19日、さて、子どもたちがどんな反応をするのか、それが楽しみである。
「極楽あそび芸術祭」は10月19日から27日まで開催です。園児の作品も多数展示しています。ぜひご来場ください。