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2018/10/15-19 大塚久美子個展「私の中の命のかたち 2 Shapes of Lives in Myself」

〈浄土宗應典院主催事業〉

日時 10月15日(月)~10月19日(金)11:00~20:00(初日17:00~、最終日17:00終了)
※初日19:00からオープニングパーティーを開催します。

参加費 無料

会場 應典院本堂

主催:浄土宗應典院
翻訳:榎本瑞希
照明:ホシノ貴江
装置:池田敬太

 

2011年に東日本で起きた津波と、福島の原発事故を目の当たりにしてからというもの、私は足元の草や身の回りに生えている木々に関心が向くようになった。名も無い草でも季節ごとに花をつけることを知った。私の中から「雑草」という単語が消えた。

バス停の近くに持ち主のわからない桑の木が生えている。毛虫のような桑の実は、薄茶色から緑色に変わり、濃い紫色になると、ヒヨドリやムクドリがやって来て、忙しく枝から枝を渡り桑の実をついばむ。鳥たちが夢中になるぐらいだから人間が食べても平気だろうと思い、私は思い切って桑の実を一つ食べてみた。美味しい。バスの時間が気になったが、手を伸ばして届く範囲の桑の実を鳥たちと競争するかのように食べた。気が付いたら指先が紫色に染まっていた。私はアルバイトに向かうバスの中で紫色に染まった指先を眺め、できれば指を洗いたくないと思った。

桑の実を食べたことをきっかけに、ヤマボウシの実や野生のイチジクの実、山芋の蔦に生えているムカゴの実などを食べるようになった。里芋も植えてみた。自分の中で自然との付き合い方が少しずつ変化していることがわかった。

3年半ほど前に、住宅地の中にある公園脇で切られて間もない切り株と出会った。2、3メートル四方に10本近い切り株が目に入った。切り株の表面は朱色に燃えている。木は切られてしばらくの間は、自分が切られたことに気付かずに水を吸い上げる。朱色は切り株の命の色だと私は思った。命を終えようとしている木々と出会ったことで、私は初めて自覚的にキャンバスに向かえるようになった。そして「私の中の命のかたち」と題した展示を開くことができた。

 

〇大塚久美子プロフィール(1979年 東京生まれ)

2002年 玉川大学文学部芸術学科卒業(Bachelor of Arts)

2004-2005年 ベルリンのゲーテインスティチュートでドイツ語を学ぶ

2005-2006年 ベルリン芸術大学(UdK)で聴講生として細密画をHamra Abbasのもとで学ぶ

2009年- 写真家、橋口譲二のもとで表現を学ぶとともに、ヨーロッパの写真家と作品を日本に紹介する仕事に携わる

 

以下、出版媒体に4名の作家を紹介しました。

○Fritz Fabert(ドイツ)『世界』(No.791)2009年3月号(岩波書店)8ページ、写真8点

○Anne Schwalbe(ドイツ)『世界』(No.801)2010年2月号(岩波書店)

8ページ、写真8点

○Pettendi Szabo Peter(ハンガリー)『世界』(No.835)2012年10月号(岩波書店)

8ページ、写真8点

○Ewa Wolanska(ポーランド)『世界』(No.854)2014年3月号(岩波書店)