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2023/4/1【住職ブログ】應典院の親寺「大蓮寺ものがたり」が発行されました。

「起こった事実しか残らないから、歴史は面白くない」と言った文豪がいます。しかし、それも怪しくて、後世まで残された歴史は結構、都合よく修正されたり、改ざんされたりするものです。
 お寺には「寺伝」というものがあります。その寺だけに口伝などで伝わり、文献等がありません。大蓮寺も最初期に行基ゆかりの古刹として紹介されますが、奈良時代のスーパースター行基を開基とするお寺は時代、地域にかかわらず数多あり、一種のブランドになっています。史実であるかどうかより、寺伝とはある種の「物語」でもあったのでしょう。
 歴史が正しくて、物語は作り物というつもりはありません。物語として長く語り続けられてきたのにはわけがあるのであって、とくに大阪の街中については、天皇や武家よりも、文人や芸人、庶民のまなざしで語られることの方がはるかにリアリティはあると思います。また、本書でも明らかですが、物語という仮構の姿をとってこそ、語り継がれてきたエピソードもたくさんあるのです。
 物語とは、それが物語られた時代と、とくに語り部の素養によって変わります。
「春琴抄」で大蓮寺の周縁を描いた谷崎潤一郎を語り部の巨匠というなら、今回の「大蓮寺ものがたり」の筆者、陸奥賢さんも大阪を語る稀代の語り部です。大阪のまち歩きの案内人として隅々を知り尽くし、また仏教に深く帰依して、自ら「死生観光家」と名乗る陸奥さんだからこそ、この「現代の寺伝」ができたのだと思います。私の無理な注文を受けてくださり、一気呵成に書き上げてくださいました。心よりお礼申し上げます。
 お寺は時代を超えてそれぞれの地域に根づいています。寺伝とは、地域の物語であり、大蓮寺でいえば、大阪の市民文化の物語でもあります。あなたのご先祖様が生きた時代に、本書を通して想いを馳せていただければ幸いです。
 と刊行の辞に書いた「大蓮寺ものがたり」堂々刊行! 私が膝を叩いた知られざるエピソードベスト3!
1位 夏の陣で家康の身代わりになった人物は大蓮寺の僧侶で、その供養にとして家康から梵鐘が贈られた?
2位 「貧人太平記」に非人の反乱を対抗した官吏の軍勢は千日前竹林寺に集結し、大蓮寺に敗走した?
3位 大正時代、大蓮寺は当時流行った日本心霊学会の大阪支部だった!
「寺伝」は住職も知らない話がザクザクと。面白いです。
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