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2018/1/5-10 要小飴:mgr allergen0024 インスタレーション「(circle)」レビュー

應典院寺町倶楽部との協働により、モニターレビュアー制度を試験的に導入しています。1月5日(金)~10日(水)の6日間に渡って應典院2階気づきの広場にて開催されました、コモンズフェスタ2018企画 mgr allergen0024 インスタレーション「(circle)」。自分にごく近い者への執着を超えて、博愛を示すこと」をテーマとした作品が発表されました。今回は俳優の要小飴さんにレビューを執筆していただきました。


 

目連の母は我が子への愛情のあまり他を蔑ろにし、地獄におちた。お釈迦様に説かれた目連が皆に施しをすると、地獄にいた母も救われた、という。この母子にとってお互いの存在はもはや他者とは言えず、一心同体のようだ。

應典院に足を踏み入れると、そこには隙間が点在していた。

まず一階に頼りなげな案内板があって、階段下には、展示の中で印象的な円の重なる図形の載った白いチラシが貼ってある。二階に上がると、ポツポツと置かれた瓶や紙、スピーカーが目に入る。それぞれのモノの間は心許無く空いていた。

私が最も長く見つめていたのは、件の円の重なる図形の映像だった。二つの重なる円のさらに向こうにもう一つの円が見えている(ような感じがする。実際は二本の弧を描く線が見えているのみ)。三つの円には、それぞれの円の縁に沿って小さい円が生物のように蠢いている。自然と動くものに目がいくが、最奥の円の上を動く小さな円は現れたり、隠れたりするので、三つの小さな動く円の位置関係は安定せず、その隙間の変容が心地よかった。

この心地よさは、会場に時々流れる水の音とこの円たちの動きが合わさって、水の中に漂う感覚があったからだ。二箇所に立つスピーカーからは、水の音の他にも、童謡や、耳を澄まさなければ聞こえない話し声なども流れていた。

隙間や空白を感じたものがこの音声群にも一つある。

唐突に、聞こえているかを問う声が聞こえる。次の瞬間、挨拶など日常的に聞く言葉が絶え間なく発される。そしてそれは、二度目の聞こえているかの問いを境にさっと消えてしまう。聞こえているか尋ねられ、自然と意識を向けた私の聴覚は突然静かになった空間に取り残された。そして、また始まる違う音。

私の意識はそれぞれのモノが持っている隙間と、モノ同士の間にある隙間に寄せて、そこに何かや誰かを置きたくなったり、置きたくなかったり。直接的な働きかけがなくても、隙間があると、波のように他者の存在が寄せたり引いたりする。

もはやそれは一対一の関係ではなく、しかし他者に対しては肯定的な感覚に思える。

この感覚が「博愛」に繋がっていくのかもしれない。地獄の母を救うことができるのかもしれない。

そう感じながら、應典院を後にした。

 

〇レビュアープロフィール

要小飴(かなめこあめ)

1988年長崎県佐世保市生まれ。
2013年より大阪在住。同年、コトリ会議に入団。役者として活動。
2016年に劇団代表になり、現在に至る。

〇レビュアー出演等情報

伊丹想流劇塾第1期生公演
『新しい人』
■2018年
1月20日(土) 19:00
1月21日(日) 14:00
■前売1,500円/当日1,800円
【日時指定・全席自由】
■詳細  aihall.com/gekizyuku_29/

コトリ会議
『しずかミラクル』
作・演出:山本正典
日程・会場/
2018年5/17(木)~21(月)大阪市立芸術創造館
6/13(水)~17(日)こまばアゴラ劇場
6/22(金)~24(日)せんだい演劇工房10BOX
HP/http://kotorikaigi.com/

人物(五十音順)

要小飴
(俳優、コトリ会議代表)