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2018/3/2 室屋和美:浄土宗大蓮寺塔頭 應典院再建20周年記念シンポジウム レビュー

去る3月2日(金)、浄土宗應典院再建20周年記念シンポジウムを本堂にて開催し、約100名の参加者で満堂となりました。日本を代表する宗教学者である島薗進さん(上智大学グリーフケア研究所所長)、スピリチュアルケアに従事してきた浄土宗僧侶の大河内大博さん(願生寺住職)、また当シンポジウムのコーディネーターも兼任された大谷栄一さん(佛教大学教授)を登壇者にお迎えして、この20年間「葬式をしない寺」として應典院が宗教界に果たしてきた役割を振り返りました。今回は劇作家・役者・WEBライターの室屋和美さんにレビューを執筆していただきました。


應典院の記念シンポジウムに行ってきました。
いつもの観劇ノリでふらっと本堂に出向いたのですが、会場には大勢のお客さまが。
客席には法衣を身にまとったご住職、應典院となんらかのご縁を持つ老若男女、カメラを構えた新聞記者の方など、たくさんの参加者がスリスリと数珠を合わせて開会を待ちわびておりました。私にとっての〈エンゲキのお客様〉とはちょっぴり客層が違うようです。

ご住職の方々の後頭部を眺めながら「應典院、そういや寺だったわ・・」と当たり前のことを想う私。壇上にはご本尊の阿弥陀如来様が柔らかい灯りに照らされて厳かな佇まいを見せています。開会時刻になると應典院主幹の秋田光軌さんが登場。参加者とともに〈南無阿弥陀仏〉をお唱えし、冒頭の進行を務められます。

シンポジウムは應典院の近年の活動報告からスタート。
演劇/表現・学びの場/コモンズフェスタ/仏教・儀礼・葬送の4つの場において應典院がどのような取り組みをしてきたか、モニターに映し出される写真とともに紹介されました。

演劇部門では、舞台芸術祭のspace×drama(スペースドラマ)、ハイスクールプレイフェスティバル(HPF/大阪高校演劇祭)などがクローズアップ。
そのほかにも『いのちと出会う会』『詩の学校』『まわしよみ新聞』『グリーフタイム』等さまざまな催しが紹介され、應典院のコンテンツの多さにしきり感心させられます。
[余談ですが、その〈さまざまな催し〉は私たちモニターレビュアーがレポート記事を掲載しています。ぜひホームページの検索ボックスから『レビュー』と検索してみてください。いかに面白い催し、試みがなされているかお判りいただけるかと思います。]

その後は登壇者のお三方(島薗進さん・大河内大博さん・大谷栄一さん)が順になって発題。
多角的に應典院という場や宗教観についてお話をしてくださいました。

大河内さんは17年間の医療現場での経験を通じて「医療と仏教」を根幹にお話をされていました。
應典院のイメージは「挑発」と「座標」。いつも「お前はどうなんだ?」と投げかけてくれる、そして自分の社会的な立ち位置を示してくれると語ります。

大谷さんは應典院がメディアでどのように語られてきたかという切り口から多量のデータを元に「都市寺院・應典院」を浮き彫りにしてゆきます。
應典院について報道数がもっとも多かった2001年(36件)にはアメリカで同時多発テロが、2011年(33件)には東日本大震災が起こっています。
世界中の宗教を求める気配、心の安定を求める人々について、史実と紐づけてお話されていました。

島薗さんは宗教の世俗化と再聖化について、社会のなかでの宗教の位置づけについて語ります。
「どこに行ってもみんなサリン事件や地震の話をしていた」という激動の90年代、スピリチュアリティなモノが求められる世の傾向について意見を述べておられました。
應典院での催しに興味を持つ方は「求道的」なのかもしれない・・とお話されていたのが印象的です。

その後休憩を挟み、應典院住職の秋田光彦さんを加え登壇者全員での討議が開始。
「應典院スタイル(應典院の特徴)」に『協働』『表現』『教育』を挙げ、今後の活動指針などについてお話してゆきます。

秋田さんは應典院についてこう話してらっしゃいました。
「22時まで開門してるお寺ほかにご存知ですか?應典院にはアーティストが多いんです。ここだから許容される、なんかここオモロイ!という嗅覚で集まってくれているんでしょうね。〈求道〉が内へ籠る・深く潜っていくモノなのに対して、〈表現〉は外へ解放していくモノ。相反するものですが應典院には両方があります」

確かに言われてみれば、なんだかトンデモない場所です應典院。
いろいろと歴史と改革のあるお寺っていうのは判っていますが、それよりも「なんかオモロイことありそう」って気持ちで訪れていますね。
優しく受け入れられる感じがね、ちょっとイイのです。

最後に秋田さんは「應典院ポスト20年構想」として、今後のプランをいろいろ発表されていました。
お葬式をしないお寺ってことですけど、お葬式してみようかな。とかとか。
どうやら「應典院が取り組む葬送とは?」というキャッチーなフレーズが浮かんでいるようです。

いやいやそれ普通の葬式の寺じゃん、とツッコミたくなりましたがそこは應典院。
きっと面白い(この言い方!)お葬式をやってくださるのでしょう。
「終活祭」なんて単語も出てきましたからエンディングノートを書こうかななんて思うお年頃な方はきっと應典院を訪れたくなるんじゃないでしょうか。

お寺はコンビニより数が多いと聞きました。
いろんな人がいて、いろんなお寺があって、たくさん心の拠り所がある・・それ素敵ですよね。信じたいものがそれぞれありますし。
お寺でエンゲキ見て、哲学をダベって映画見て、お地蔵さんに手を合わせて帰る。
そんなお寺があってもいいと思います。こんな場所が身近にあるのが不思議です。
せっかくのご縁ですから今後も應典院の「いけいけどんどん」をオモロがっていきたいと思います。

 

〇レビュアープロフィール
室屋和美(むろやかずみ)
劇作家・役者・WEBライター。1984年兵庫県神戸市生まれ。

近畿大学演劇芸能専攻・劇作理論コース中退。
2012年から『劇作ユニット野菜派』を立ち上げ。
以前は『劇団八時半』『コトリ会議』などに所属。
劇作家の活動として、戯曲「どこか行く舟」がAAF戯曲賞佳作を受賞。
世間のさえない領域で静かに呼吸している小魚のような、ひそやかな人々と
その切実さを好んで描く。
◇近年はご依頼をいただいて劇作をしたり、大喜利や官能小説のイベントに
出演したり、WEB媒体に記事を書いたりしています。
趣味はマンガを読むこと、お笑いの舞台を見ること。
小さな畑の世話もしています。いつでもなんでも、気軽にお声かけください。
Twitter: @ooiri_muroya

◇活動告知
(1)お客さまから頂いたお題を元に即興で小説を執筆するイベント、
「即興小説ゲーム」に出演します。出場者8名・約2時間のイベントです。
〈即興小説ゲーム~三月の乱~〉
日時:2018年3月25日(日) 14時 開場/14時半 開演
会場:もりのみやキューズモール「まちライブラリー」
料金:500円(1ドリンク付)
※オススメしたい(可能であれば寄贈できる)本をご持参ください
ご予約
詳細:『即興小説ゲーム2018』 公式Twitter @Novel_Battle
(2)自作の官能小説を朗読するイベント、「プラセボ朗読会 官能男性作家編」に
企画/MCとして参加します。お酒を飲みながら楽しめるラフなイベントです。
〈Placebo朗読会 ~官能男性作家編~〉
日時:2018年5月19日(土) 時間未定、夜に2ステージ
70分程度のイベント
会場:千日前味園ビル2階 Live&CafeBar Placebo
※会場HP:https://placebo.owst.jp/
※客席は各回20席程度です
料金:1500円(1ドリンク付)
詳細:Twitter等で「プラセボ官能」で検索してみてください
もしくは室屋Twitterでお知らせしております
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室屋和美
(劇作家・役者・WEBライター)