【演劇】彗星マジック十六景『カミナズム』

2015年10月23日更新

いつまでも人間を信じ切れない神様と、いつまでも神様を信じ切れない人間のものがたり。

僕たち、私たちは、君たちが言葉を持つより遥か前、嘘も真実も無い純粋な喜怒哀楽のかたまりだった頃から君たちと歩き続けてきたというのに、嗚呼哀し、ありがとう、さようなら、居なくなって下さいませ等と云うのだ。
仮に僕たち、私たちが去ったその時、君たちは一体、何を祀り、奉り、纏り、政るつもりなのだろうか。ああ違う、とうにそういった意味は無いのだった。
君たちは只、自分のためのみの祭りをいっそう賑やかにするだけか。素晴らしい。
本当この世ときたら、神も仏も、あったもんじゃない。

僕たち、私たちは、理解の範疇を超える現象や、都合の良い偶然、都合の悪い偶然に対して畏れを抱き、神や仏の仕業とし、丁重に敬って参りました。
時は過ぎ、そういった現象や偶然には列記とした原因や因果があると判明し、次第に畏れや、敬う気持ちを悲しいかな、失って行きました。
それに留まらず、説明できぬ原因や因果の範囲をほんの少し逸脱した現象や偶然は、やはり神と仏の仕業だろうと定義し、ついに存在を確認できるようにまでなりました。
畏れ、敬う気持ちを失ったままで。