1/9 コモンズフェスタ2016「声について声で考える~アレクサンダー・テクニーク×てつがくカフェ~」を開催いたしました。
去る1月9日、應典院本堂ホールにてコモンズフェスタ2016「声について声で考える~アレクサンダー・テクニーク×てつがくカフェ」を開催いたしました。
昨年度のコモンズフェスタ2015にて「おんなのからだで考える」を行ったアレクサンダー・テクニーク教師の納谷衣美さんと、「てつがくカフェ」を行った浄土宗應典院の秋田光軌の二人が、一緒に立ち上げた企画です。
アレクサンダー・テクニークについては、應典院寺町倶楽部が発行しているサリュ96号での、納谷さんへのインタビューでも取り上げています。
今回探求するテーマは「声」。冒頭、秋田が導師となって、皆で浄土宗のお念仏をお唱えしました。浄土宗の教えでは、声に出して「南無阿弥陀仏」とお唱えすることが何よりも重視されているそうです。ほとんどの参加者は唱え方をご存じでないとのことでしたが、高らかなお念仏が本堂ホールに響いていました。
そして、てつがくカフェの手法を用いて、「今日呼ばれたい名前」でそれぞれの自己紹介を行いました。リラックスした雰囲気の中で、納谷さんの講座を続けて受講されている方、さまざまな手法を知りたいという僧侶の方などから、多様な関心が語られました。
次に、アレクサンダー・テクニークのワークショップにうつります。身体、とくに発声に関わる器官である舌や顎、頸椎の構造について分かりやすく教えていただきながら、声を出すときに自分の身体がどのように作動するか、自らの癖を見つめ直す時間をもちました。例えばよく見られるのは、大きい声を出そうとすると、遠くに届けようとして顎が上げ気味になる癖ですが、実際には声を出す器官に無駄な圧力がかかってしまいます。大きい声を出す際、顎を少し引き気味にしておく方が、身体の構造に適しているそうです。納谷さんとアシスタントの中井敦子さんに触れてもらいながら、身体の位置を確かめ、不自然に力が加わっている箇所を意識することは、それまで「自分そのもの」であった身体が、どんどん「他者」に変わっていくような、とても不思議な経験となりました。
休憩を兼ねた軽食の時間でも、ワークショップを導入。食べるときに、首を前方に動かしてこちらから「食べにいく」のではなく、ご飯を口に運ぶことで「向こうから来てくれる」のを待つことを試みました。ところが、気をつけていても首がつい動いてしまい、いかに待つことができない身体になっているかを実感するひと時でした。このようにして身体の癖に気がつくこと、その気づきによって日常生活での見直しを実践し、変化し続けていくことが大切であり、教師はきっかけを与えているにすぎない、と納谷さんはおっしゃっていました。
最後に、てつがくカフェ形式で振り返りを行いました。参加者一人ひとりの感想をゆっくりと聞きあう中から、「ひたすら声を出していくワークを想像していたが、発声をつきつめていけば身体全体と関わりがあることがわかった」という発言など、それぞれに驚きを受け止めていたことがうかがえました。その他にも「身体のサイズは変えられるか?」「世界の側から身体に触れるってどういうこと?」といった問いにつながる、さまざまなご意見をいただきました。残念ながら、さらに深めていく時間はありませんでしたが、今後も身体を通して自らと向き合う時間を大切に扱いたいと願っています。