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8/28 キッズ・ミート・アート2016 「心の中のおじぞうさま~粘土を使ってお地蔵様を作ろう~」「親子でカラダ・コミュニケーション~一緒に遊んで身体・感覚づくり~」を開催いたしました。

2013・2015年度は盛大なフェスティバル形式で行ったキッズ・ミート・アート。2016年度の今回は、2014年度と同様の小さい規模で、計4つのプログラムに取り組みました。
去る8月28日、「キッズ・ミート・アート2016」の2日目を迎え、午前10時30分から「心の中のおじぞうさま~粘土を使ってお地蔵様を作ろう~」をパドマ幼稚園講堂にて開催いたしました。

ゲストには、昨年度の彫刻講座が大好評だった村上佑介さん(彫刻家・大阪城南女子短期大学講師)を、2年連続でお招きいたしました。子どもたちと保護者の方、合わせて30名ほどの参加者が席に着くと、村上さんから「今日は、皆の心のなかにいらっしゃるお地蔵様を、思い思いに粘土でつくってみてください」とお話があり、胴体や頭の作り方など、親子で力を合わせて粘土の塊と向き合う際のポイントが示されました。

もちろんお地蔵様のお姿を知っている子もいれば、全く見たことのない子もいます。村上さんに続いて、浄土宗應典院主幹の秋田光軌からは「地蔵菩薩は人々の苦難を身代わりに受ける守り神であり、地蔵盆が子どものお祭りであるように、特に子どもたちを見守る守護神とされています」とヒントも投げかけられましたが、子どもたちの心の中にねむっている、目に見えない〈自分だけのおじぞうさま〉を形にしようと、粘土をこねながら身体全体で格闘する子どもたちの姿は真剣そのもの。ときおり村上さんや保護者の方のサポートを受けながら、一生懸命にお地蔵様づくりに励んでいました。一方で、いつのまにかお父さんお母さんが夢中になって取り組まれている姿も印象的で、まるでひとときだけ子どもの頃に戻ったかのような集中力を発揮されていました。

全員が作り終わった段階で、秋田光軌の進行で、それぞれのお地蔵様について参加者からお話いただきました。子どもたちはすこし恥ずかしがりながらも、自分なりに粘土と向き合った成果をしっかりとことばにし、他の子の発言にも注意深く耳を澄ませていました。鬼と合体した「おにじぞう」や、猫を飼っているお地蔵様など、予想以上にバラエティに富んだ子どもたちの発想に、村上さんをはじめ、保護者の方々も大変驚かれた様子でした。
最後は屋外に移動し、それぞれのお地蔵様を好きな場所へお祀りします。幼稚園園庭に置かれている小さいお地蔵様や、應典院前の六地蔵様の周辺を選ばれる方が目立ちました。最後に、お祀りしたお地蔵様に対して、いつも見守ってくれていることへの感謝のねがいを込めて、「なむあみだぶつ」と皆で声に出してお十念をお称えしました。

プログラム終了後は、粘土の安定度が高まるようお地蔵様を充分に乾かし、ご自宅に持ち帰っていただきました。
見えないものへ想いを馳せながら、ゆっくり時間をかけて、目に見え、手で触れられるものへとかたちづくっていくこと。おそらくアートと呼ばれる営み全てに通じると思われるこのような時間を幼少期から経験することは、非常に大切なことではないでしょうか。まことに「お寺の幼稚園」で行うにふさわしいプログラムとなりました。

そして同日午後2時からは、弘田陽介さんを講師としてお迎えして「親子でカラダ・コミュニケーション~一緒に遊んで身体・感覚づくり~」を開催、15組ほどのご家族と一緒に、身体に潜む不思議な力を感じる時間を過ごしました。2~4歳の子どもの参加が多く、小さな身体が会場を走り回り、笑い声が絶えない賑やかな時間でした。そのような中、弘田さんは静かにゆっくりと話しはじめられました。「子どもさんを抱っこしてみてください。手と腕の形はどうなっていますか?」と、まずは無意識に動かしている身体に気づいてもらう声かけがありました。次に「支えている手首を返して、手のひらを外側に向けるようにしてください。楽になりませんか?」と。手首を返し、腕をロックして使えないようにすることで、背中の筋肉を使うようになるため、重い物を抱えても軽く感じるというのです。自由気ままに遊んでいる子どもたちを横目に、大人たちが興味津々に自分の身体と向き合っていたのが印象的なひとときでした。

次に、新聞紙1枚を片手で丸めるワーク。聞いたところ簡単そうに感じますが、実は男性でもなかなかに難しいものなのです。きれいに丸めるには、手首・腕の柔軟性、握力や掌の開き具合がポイントのようでした。丸められた新聞紙を、子どもたちが次々に弘田さんの元へ運び、手元が新聞紙でいっぱいになるという微笑ましい光景も見られました。

(撮影:坂下清)

ここからは、いくつもの「身体豆知識」が紹介されていく時間に・・・。弘田さんが女の子を足で抱え込み、ごろんごろんとテコのように転がってみせると、子どもはキャッキャッと声を上げて笑い出し、面白い乗り物を見つけたかのように喜んでいました。コツをつかめば、お父さんと子どもの身体遊びになるというのです。続いて、1メートルほどの紐の端と端を1人ずつが持ち、1人が自由に動き回るというワークもありました。もう1人は、紐が緩んだり突っ張りすぎたりしないように、相手の動きに合わせて距離をとる。単純なやりとりですが、まるで武道か何かのコンテンポラリーダンスのように、2人が柔軟に動き回っている様子が面白く、こちらも親子で遊ぶのにはとても楽しそうなワークでした。

(撮影:坂下清)

このあたりで「とっても疲れている、というお父さんはいらっしゃいませんか?」という投げかけがありました。少し気怠そうにされていたお父さんが手をあげ横になられたところ、お腹に弘田さんが手を当てて、二人で呼吸を合わせてみました。なんと30秒ほど呼吸を続けたところ、お父さんが「身体が軽くなった。気持ち良かったです」とおっしゃったのです。何か大きな工夫があるわけではなく、一緒に呼吸を合わせただけなのに!相手に呼吸を合わせることで、自分の気力や集中力を相手に送ることができるのでしょうか・・そのような「氣」を送られたのでしょうか・・・。

また、身体の不思議については、もう一つ印象的な場面がありました。地面に座っている男性を、後ろから抱えて立ち上がらせようとする場合、普通は腕だけでやろうとして、どうしても上がらない。腰を痛めてしまいそうになるものです。しかし、弘田さんが地面に座っている男性の後ろに回って、蹲踞(そんきょ:膝を折り立てて腰を落とした立膝をついた座法)の状態から男性を抱えると、すっと立ち上がらせることができたのです。試しに、数人のお父さんがやってみたのだが、確かに蹲踞の状態から立ち上がると身体の根幹を使うことができるため、比較的スムーズに立ち上がらせることができ、全員から驚きの声があがりました。

(撮影:坂下清)

全体を通して、弘田さんは力が入りすぎることなく、ゆっくりと静かに進行してくださいました。大人の方たちからは、口々に勉強になったという言葉が聞かれましたが、子どもたちもその場に安心して存在しても良いという空気が伝わるのか、途中で眠ってしまった子どもや、始終笑いながら動き回る子どもさんも・・・・。先生は進めるにあたって、すべてに“確信”を持っていらしたのではないかと思いました。人の身体には、その本人ですら知らない、たくさんの不思議が眠っていることに気づかされた時間でもありました。