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12/8 コモンズフェスタ2014 hyslom「伝書鳩を飛ばしに小旅行」

コモンズフェスタ2014招聘アーティストのhyslom(ヒスロム:加藤至、星野文紀、吉田祐)によるワークショップ「伝書鳩を飛ばしに小旅行」を行いました。1月11日から19日まで應典院にて開催する展覧会「大家さんの伝書鳩」のプレ企画として、実際にみんなで決めた場所まで伝書鳩を飛ばしに行くという内容です。hyslomは、これまで山から都市に移り変わる場所を探検し、日々変わりゆく風景や不可思議な対象を自らの「身体」で触れて感じることをスキームとしながら、映像作品や立体作品などを制作してきました。今回、彼らの作業場の大家さんであり著名な兢翔家でもある任秀夫氏と伝書鳩との出会いを契機に、鳩たちの航路を想像し、今私たちがいる「この風景」から「あの風景」までのことを考える、新作にとりくんでいただきました。

12月8日、朝から應典院に集まっていただいたのは子ども5名、大人3名の計8名。まずは、自己紹介のあと、どこに飛ばしにいくか、希望する場所をみんなで話合います。はじめに出たのは「海」か「山」か。多数決で「海」に決まったのち、出てきた案は、「淡路島の洲本」「南港」「サンタマリア号」などなど…。それから、景色のイメージや予算、さらには、日の高いうちに到着できる場所かどうかなどを考慮に入れながら、相談を重ねた結果、大阪貝塚市の「二色の浜」に決定。さっそく、車2台にわかれて出発しました。

車内では、hyslomがこの日のために特別編集してくれた、鳩のスペシャリスト任さんによる「ピジョン・レイディオ」を聞きながら、後部座席で待機する鳩たちと一緒に、府内南部へと向かいます。浜に到着すると、針葉樹林を通り抜けて、まずは、鳩をとばす場所を物色。その後、みんなでブルーシートを広げてお昼ご飯を食べることに。

お昼のあと、手際よく機材の準備を進めるhyslomを横目に、子どもたちは、浜に落ちていた流木で遊び始めます。その姿はまさにミニ・ヒスロム。海草や貝殻や摩耗したビンのかけらなど、身の回りにある不思議な物体に臆することなく、手で触って、揺さぶって、音を鳴らしながら、楽しむ様子に、ノスタルジックな身体感覚がよぎります。

その後、鳩の持ち方をおそわります。レース用の伝書鳩は、町中にいる野鳩と違って、特別な食事を与えられ、日々訓練を受けているので、とても筋肉質。ひとりひとり、自分の鳩と対面しながら、彼らを飛ばす瞬間を待ちます。

そして、浜辺に一列に並んでカウントダウンをした後、いよいよ一斉に鳩を放ちました。さっきまで自分の手の中にあった鳩の暖かさや筋肉の張りを余韻として感じながら、どんどん遠くへ旋回していく鳩たちをしばし無言で眺めます。今わたしが呆然と立っているこの場所と、鳩が旅する空の世界と、そして執着地点の鳩舎。様々な景色とそこへの距離感が、わたしたちの空間意識を広げていきます。

その後、再度車に乗り込み、一同、鳩が帰ってくる鳩舎へと急行。レース鳩は飛翔能力と帰巣本能に優れているため、大阪府内であれば、20~30分で飛行可能とのことですが、途中で鷹におそわれたり、方向を見失うケースもあるようです。今回、無事に全羽かえってきましたが、やはりわたしたちが到着するよりも早くほとんどの鳩が鳩舎に帰ってきていました。ちょうど、任さんもいらっしゃったので、雛をみせてもらったり、鳩舎に入れてもらったりしながら、鳩の日常を確かめました。

今回の、小旅行の様子も含めた映像作品などが来月、應典院に登場します。ぜひお楽しみに。