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2019/1/17-1/20 湯山佐世子:「コモンズフェスタ2019」を開催いたしました。

去る1月17日から20日に、「コモンズフェスタ2019」(應典院寺町倶楽部主催事業・浄土宗應典院協力)が開催されました。應典院寺町倶楽部コモンズフェスタ・ワーキングチーム、コモンズフェスタ2019実行委員会の湯山佐世子さんに開催報告をご執筆いただきました。


コモンズフェスタは、應典院再建直後の1998年から続く歴史の長い事業ですが、今回は初めての「企画の一般公募」「4日間に凝縮しての開催」に取り組みました。テーマは「揺れる應典院」。演劇、アート、音楽、セラピー、ワークショップなど、多種多様な企画が集まり、まさに「コモンズフェスタ」と呼ぶにふさわしい、さまざまな他者が交わった4日間となりました。

1月17日、阪神・淡路大震災から24年目を迎えた日、コモンズフェスタが開幕しました。13時から本堂で行われた法要の後、秋田住職から、「コモンズ」とは「公(パブリック)」と「私(プライベート)」の間に位置するものである、そしてコモンズを考える時には今をともに生きる人々(水平軸)だけでなく、死者あるいはまだ出会っていない人々(垂直軸)の両方の軸が必要だ、というお話がありました。

今回、開催形式を変えた狙いのひとつに、お客様と企画あるいは企画者との横断的な交流を生む事がありました。これまでのコモンズフェスタは各企画が異なる日程で開催されていたため、お客様が思わぬ企画にふらりと足を運ぶという事は起こりづらかったのです。それが、今回は同じ日に複数の企画が應典院のあらゆる場所で開催されたため、一つの企画にとどまらず、複数の企画に参加されたが多くいらっしゃいました。

会場にいて、幾つか印象的なシーンがありました。

小学生くらいのお子様を連れた企画者のご友人が、たまたま隣の部屋で行われた「フィリピン音楽体験ワークショップ」に参加されました。フィリピンの民族楽器に触れ、実際にみんなで合奏してみよう、という企画です。その場には、もう1組の親子がいらっしゃったため、結果的に小学生の女の子3人が参加されました。90分という短い時間の中で、一生懸命演奏される様子を微笑ましく見ていましたが、最後にお母さんが「フィリピンの方はこうした楽器を日常的に演奏されているのですか?」と質問され、それに対して企画者が「フィリピンの多くの学校には、日本のようにピアノ等の楽器が備えられていません。ですので、こうした民族楽器を音楽の授業に使う学校はまだまだあります。」と答えられました。フィリピンという国は、女の子たちにとってはもしかしたら初めて聞く国の名前だったかもしれません。でも、自分達にとって当たり前にあるピアノが、同じ時代を生きる他国の子ども達にとっては当たり前でない、そんな事実に触れられたのです。私自身、楽しく楽器を演奏する場としか捉えていなかったので、異文化を知る事の意味を改めて考えさせられたシーンでした。

さらに今回、これも新たな取組みとして、企画者の方々で構成される「コモンズフェスタ実行委員会」を組成し、開催までに4回の会議を行ってきました。これにより、異なる分野の企画者同士が出会い、幾つかのコラボレーションも生まれました。その1つが、「南無阿弥Da Session」です。

元々、音楽を中心に活動されている方が応募された、僧侶による読経に楽器の即興演奏をセッションさせるという企画に、「障害のある人との触れ合いのダンス」を企画された方がコラボされました。應典院本堂で繰り広げられた、秋田主幹のお経、木魚が刻むビート、笛の音色、パーカッションの響き、そして生命力あふれるダンスの融合は、とても力強く、惹きつけられるものがありました。應典院、そしてコモンズフェスタだからこそ生まれた、なんとも不思議で魅力的な空間でした。

その他にも、あらゆる手法で参加者が自己を見つめなおすセラピーやワークショップが開催されました。その多くが、参加者同士のコミュニケーションを含むものでしたが、そこにはたくさんの笑顔があふれていました。今日初めて出会った、お互いの背景も何も知らない、コモンズにより構成された場は、本当に優しく穏やかでした。

企画の種類や、参加者の方々が求められているもの、抱えている生きづらさが多様でも、應典院という場がそれらを繋いでいるような感覚を覚えました。そして、今回のコモンズフェスタを通じて、應典院という場が必要とされる原点を感じたように思います。

 

 

人物(五十音順)

湯山佐世子
(應典院寺町倶楽部執行部役員)