2019/4/11 應典院寺務局:おてら終活カフェ第8回「ペットの終活。わたしの終活。」(おてら終活 花まつり)を開催いたしました 。
4月11日、應典院2階気づきの広場では、第8回目を迎える「おてら終活カフェ」を開催。今回は、「おてら終活 花まつり編」ということで、甘茶がふるまわれ、柔らかな雰囲気の中、20名ほどの参加者と過ごしました。テーマは『ペットの終活。わたしの終活。』。ネコちゃんやワンちゃんなど人生の大切なパートナーの終活について、NPO法人ペットライフネット代表・吉本由美子さんにお聞かせいただきました。
2019-06-2
まず、現代のペット事情のご説明がありました。驚いたのは、平成30年の調査で、子どもの数よりもペットの方が302万も多いということです。また、ペットフードの質や、医療の発達により長寿になっており(猫の平均寿命14.29歳。犬は14.32歳。)、飼い主よりも長生きする可能性が高まっています。もしそうなってしまった場合、市町村は受け取りを断る権利を持っており、愛護団体(ボランティア)に引き取ってもらうしかない現状だそうです。ボランティアも数が限られている上、たくさんの動物を一挙に養われなければならず、大変な状況です。ペット同伴で入れるグループホームも少なく高額なため、最終的に手放すしかない状況になる場合が多いそうです。
猫を飼う場合、食事やトイレなどの用意で、だいたい月額10000円ほどかかります。15年生きるとして、約200万かかる計算です。犬だと費用はもっとかかります。東京都では、ペットを飼っている方へ向けて「①遺言を残す」「②信託を利用する」を推奨しています。家族同然のかわいいペットの行く末について、どれだけ考えていくことができるのか、その方法をお話しくださいました。
“終活”といえば、合言葉のように言われる「エンディングノート」。吉本さんが代表を務められるNPO法人ペットライフネットでは、ペットの終活と人の終活をセットで考えられるように、1冊にまとまったエンディングノートを開発していらっしゃいます。統計で確かに出ているように、エンディングノートを書いている人は、数パーセントに留まっています。自分自身の終活について考えることができていないのに、ペットのことまで考えはなかなか至りません。このエンディングノートをきっかけに、ペットと自分自身のこれからを、一緒に考えてみようという試みです。
さて、「2025年問題」という言葉をご存じでしょうか。団塊世代が後期高齢者になり、多死高齢化社会に突入する年です。それに伴い、介護人材不足・病院のベッド不足・認知症の人が認知症を介護する「認認介護」の増加・老人の一人暮らしの増加・年金に対する不安などの問題が挙げられています。終末期医療や尊厳死についても議論を深めていかなくてはなりませんし、自分自身の希望を、誰かに伝えておく必要性が高まっています。
吉本さんは、上記のような理由からも、独自のエンディングノートを考えられました。「書いたことのある人ならばお分かりですが、エンディングノートを書くと、本当にさっぱりするのです。人生の今後を楽しめるようになります!」と、吉本さんは力強くおっしゃいました。書いたら1年に1度見直すこと。置き場所を決めておくこと。市に問い合わせれば、「あんしんキット」(市町村により名称は異なり、「緊急医療キット」とも)という冷蔵庫に貼りつけることができる安否確認の方法があり、そこにエンディングノートの在処を記入しておき、財布の中に「もしもカード」を入れておくなどして、ペットと自分の身を守ることができます。終活をすることで、自分 の希望を他者に開示でき、周囲の協力を得ることに繋がります。
吉本さんのお話の後は、應典院住職の秋田光彦と主幹の秋田光軌が加わりました。まず、住職からペットロスの苦しさについて話がありました。物言わぬ存在であるため、後悔が残り亡くなってからもずっと祈り続けてしまったり、良い思い出しか思い浮かばず、小さな子どもを失った感覚に非常に近いものだと言われました。そこから、「ペットの往生」についての話に広がりました。浄土宗では、お念仏を称えれば往生すると教えられており、「それでは物が言えない存在は往生できないのか?」という問いが多数寄せられ、物議を醸しているといいます。仏教では、「畜生」という考えもあるのです。それについて秋田光軌主幹が、浄土宗には「追善供養」があり、周りの人がその存在に代わってお念仏を届けていくことで往生できると考えられていると仰いました。時代が移り変わる中で、愛する動物と一緒に眠ることができるお墓も、少しずつ増えてきています。
最後に、参加者のみなさん同士でおしゃべりする時間を持ちました。時折、亡くした猫ちゃんのことを思い出して涙をぽろぽろと流す方もいらっしゃいました。また、理由があってフクロウやカラスを育てている方もおり、行政機関とのやりとりもしっかりと行っているなど、今後のことをシビアに考えておられました。この時間を機会に、吉本さんと繋がり、ペットの終活について実際に動いていこうと決意された方が多くいらっしゃったことも印象的でした。人を癒し続けてくれる存在である可愛いペット。まちぐるみで動物と人が生きていく道を探っていきたいものです。