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2018/9/3 應典院寺務局:おてら終活カフェ第3回「見えるものと、見えないものの遺し方」を開催いたしました。

去る9月3日、應典院2階気づきの広場にて、おてら終活カフェ第3回『見えるものと、見えないものの遺し方』を開催いたしました。ゲストに一般社団法人つむぐ 代表理事、相続手続きカウンセラーの長井俊行様をお招きし、お話しいただいたのちに應典院職員の繁澤からの質問、さらに主幹からのコメントを交えました。今回はなんと、夜の時間帯での初開催。ノンアルコールビールも出され、会場のみなさま同士の意見交換の時間は大いに盛り上がり、それぞれのお話を楽しく話されておりました。


おてら終活カフェ、3回目は初めて夜の開催となりました。まだまだ暑い残暑の夜、今回は普段のお茶とお菓子に加えてノンアルコールビールもご提供。どことなく前回までとは違ったムードが、会場の気づきの広場を包んでいます。

今回ゲストには、一般社団法人つむぐ代表理事・相続手続きカウンセラーの長井俊行さんにお越しいただきました。ピシッとしたスーツ姿にガッチリとした体格の長井さん。少し迫力がありますが…一旦話し出すととても穏やかに、かつユーモアたっぷりに、ご自身のこれまでについて語られました。

15年間で3,000件ほどの相続手続きをサポートしてきたという、まさに相続支援プロフェッショナルの長井さん。相続手続きの項目は細かいものまで挙げるとなんと108つ、まさに煩悩の数だけあるとのこと。もちろん登記や税務など専門知識が必要なものもあれば、進め方によっては親族関係のイザコザにもつながりかねないなど、とてもデリケートな世界に従事していらっしゃいます。

代表理事を務める一般社団法人つむぐでは、銀行預金の解約や年金申請公共料金の名義変更などの詳細な手続きも含め、依頼者の方の経済的な不利益と心理的ストレスを軽減するためのトータルサポートを提供されているとのこと。序盤のご説明では、65歳以上の高齢者3,000万人のうち600万人が単身世帯であることや、2016年には4万5千人超の人が孤独死を迎え、うち7割が65歳以上であることなど、シビアな実状についてもごまかすことなく、お話しいただきました。

それだけに責任も困難も大きくなるであろう相続手続きの世界に、なぜ、長井さんは関わることになったのでしょうか。

「どういう経緯で今の仕事をするようになったのですか?」という質問に、なんと「僕、実はすごいちゃらんぽらんな人生で」とはにかみながら答える長井さん。26歳まで「税理士になる」と言いながらほとんど遊ぶように暮らしていたところ、交際していた女性の妊娠が発覚して「なんとか仕事をしないといけない」と駆け込んだ先の税理士事務所で、資格がなくても相続のサポートをする仕事があるからやってみろ、となったのがきっかけだったそう。

「おじいちゃんの手を引いて一緒に役所の前まで行って、戸籍謄本これ代わりに書いておくからこれで請求しような、なんてやっているうちに、感謝してもらえることがわかって」「『あんたがおったから相続も揉めずにすんだわ』とか『これからも家のこと頼むな』とか言ってもらえるようになったら、もう病みつきになって」

それが15年間続いて、今に至っていると語られました。

数多くのサポート経験を踏まえるなかで、いっそう専門性を高め生前から準備をしておく大切さを伝えるために、一般社団法人を設立。一般社団法人つむぐでは、希望者に信託口座を利用してもらえるシステムを構築していて、生前契約内容に基づいて信託口座から支払いされるようにすることもできるとのこと。預かったお金が必ず、預けた人やその財産を受け継ぐべき人の手元に行くように、万全の体制を敷いていらっしゃいます。

実は長井さん自身、小さな頃からお寺が身近にあったそう。子どもの頃によくわからないままご両親に連れられお墓参りをし、今でもご自身の子どもを連れてお墓参りをする。そんな経験と今のお仕事を通じ、お寺に強い愛着と可能性を感じられている長井さんは、「お寺が、お寺をきっかけにみんなが悩みや相談を言うことができる、生きるというのはどういうことか一緒に考えられる、そんな場所になればいい」と語られました。

長井さんの包容力とエネルギーに満ちたお話はまさに、「終活をきっかけにともに語り合う」ことの大切さを気づかせるとともに、「終活カフェ」さらには「おてらの終活プロジェクト」で私たちがこれから何をおこなっていくべきか、あらためて考えさせられるものでした。

人物(五十音順)

長井俊行
(一般社団法人つむぐ 代表理事、相続手続カウンセラー)