イメージ画像

2024/7/30【住職ブログ】ローカルなお寺のサポートこそ、社会貢献への第一歩

 お寺が取り組む社会活動に、定期的に持続的に助成を行う「浄土宗ともいき財団」の助成事業が、2017年の開始以来7年を迎えた。累計は、応募 573件、採択 512団体、助成総額 1億3668万を超えたという。第2類の窓口があり、こちらは上限100万円5団体選択というから(1類は50万助成62団体)、逆にN P Oや公益団体から浄土宗寺院にエントリーが持ち込まれたりする。好循環が起きている。

 この事業のミソは、浄土宗本体ではなく、外郭である財団が主催している点だ。ややこしい議会の議論も、役所の手続きも必要としない。それだけの資金があってのことだが、事業自体が自律的であって、寺院の社会活動のインセンティブとなっている。審査や評価はあるが口出ししない、変に色づけしない。仏教界における最良のスキームの一つだと思う。

 話は変わるが、仏教界における巨大拠点・築地本願寺が意識調査をしている(7月19日中外日報)。「人々が抱える不安を正しく把握し寄り添える寺になることを目的に」「不安に関する調査」をしたそうだ。結果「(寺が)孤独解消のための社会インフラとなり得る」と宣言しているわけだが、ここに限らず、教団や本山が自ら社会問題解決の機能をかように備える必要があるのだろうか。

 組織は巨大になるほど独自性は損なわれ、合意形成ばかりに腐心する。もとより地域性に乏しく、メディアねらいや代理店頼みといった「通俗性」が注目されることになる(これは浄土宗を見ていても感じることだ)。そもそも「寄り添える寺になろう」と、教団が掛け声しなくてはならない時代だろうか。まして社会が相手であるなら、元からトップダウンで指図される性格のものではなく、課題は、地域寺院個々の自立性・持続性であり、その機能の開発・育成なのだ。教団や本山は、それが醸成されやすい環境づくりにこそ傾注すべきだ。

 築地本願寺の場合、武蔵野大学との連携など計画があるようだが、そういった知の資源を独占するのではなく、ひらかれた公共財として各寺院へ提供していってほしい。「心の拠り所になる」のは、本山というよりも、地域に偏在するローカル寺院なのだ。

 ともいき財団の、今年度の助成採択は、第1類(上限50万円)62団体、第2類(上限100万円)5団体の合計67団体、助成金の総額22,820,000円となる。全て浄土宗寺院の社会活動を底上げする貴重な資金となっている。ありがたいことだ。

(写真は、助成金交付式における採択者の記念写真。みんないい顔をしている)

↓浄土宗ともいき財団
https://tomoiki.jp/report/24_05_646.html

人物(五十音順)

秋田光彦
(浄土宗大蓮寺・應典院住職)