イメージ画像

10/12 コミュニティ・シネマvol.19「塵」上映会とトークショー

9月19日のコミュニティ・シネマvol.19では、河瀨直美監督に新作「塵」を携えてご登壇いただきました。昨年の「3.11 A Sense of Home films」に続く、河瀨監督登壇2回目の上映会。当日は平日ながら、約80名の参加者にお越しいただきました。
今回は、最愛の養母河瀨宇乃さん96歳の最期の姿にカメラが向けられました。

極限までのズームアップで露わとなる深いシワと虚ろな眼差し。パジャマ姿でベッドに横たわり、「プフゥ」と小さな吐息をたてる姿に眼差しが向けられる中、監督の子守唄が宇乃さんを包み込む。限りある時間の中での大切な人との生活は、ほんの一瞬なのである、という不動のメッセージが観客の心をつかんだのでした。

上映後は、應典院ではお馴染み釈徹宗さんと河瀨監督の対談。生粋の河瀬ファンであるという釈先生から投げ抱えられる質問は、監督と宇乃さんの思い出から、あのシーン・あのカットの裏話、そして映画のもつ力についてなど幅広いものとなりました。
とりわけ、河瀬監督は、應典院での開催の折、あらためて「祈りを捧げる場」と「映画を観る空間」は似ていると語られました。「映画が個人にもたらすものは、記憶の回顧や亡くなったものとの出会いであって、それらは生きていくうえでの指針となります。」「過去は後悔とともに振り返れても、時間は戻せない。止められない時間を映画は記録し、記憶してくれているので、もう一度ここによみがえれるんですね。」

さらに監督は、震災以降、「こんなに危うい奇跡的な瞬間を生きているのなら、どこで生きるのか誰と生きるのかをちゃんと考えて生きなきゃいけない。私は、家族となんでもない朝食を食べる日々を大切にしたいと思います。」と振り返られました。
次は日本の農業を追いかけたいと語られた監督。最近畑づくりを始められたとのこと。日本人の根源的な暮らしとそこに寄り添う生老病死を撮り続けてきた河瀬監督の次回作が待ち遠しい。