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9/30「ビヨンド・サイレンス」第4回「伝統教団の憂鬱と希望」を開催いたしました

去る9月30日、本堂ホールにて「ビヨンド・サイレンス~ポストオウムの20年を語る」が第4回「伝統教団の憂鬱と希望」と題して行われました。この企画は、秋田光彦住職と関西学院大学准教授の白波瀬達也さんがホストとなり、この20年の日本宗教をめぐるトピックについて問い直すものです。

4回目のゲストには、全日本仏教会理事で現在心光院住職、浄土宗総合研究所主任研究員、浄土宗平和教会副理事でいらっしゃる戸松義晴さんをお招きし、ご自身の研究をはじめ様々なデータをもとに、伝統教団の問題とこれからの展望を本音で語っていただきました。まずは、今後キリスト教やヒンズー教、仏教の信者数は横ばいか、あるいは減少傾向の中にあってイスラム教信者が増えていくという予測データを提示されました。仏教徒が減少するという厳しいデータの反面、欧米においては、仏教的なもの(マインドフルネス、スピリチュアルケアや瞑想など)の人々への浸透、ダライラマ法王の仏教にかんする意義の発信(科学と心理学などと仏教の関わり)などが人々を惹きつける状況が近年見られるという指摘がありました。日本においては、今でも変わらずに人々が求める先祖供養や現世を如何に生きていくかという視点の中に、日本仏教のこれからの展望を見いだすことができるとのお話を伺いました。葬式仏教と檀家制度を基盤としてきた伝統仏教教団にあってひとり一人の僧侶の顔が見える関係性を築くことで、檀信徒の信頼を得、宗教者の意識と人々のそれとのズレを縮めていくことができるとお話してくださいました。

前半のお話と参加者の皆さんからのアンケートをもとに、後半は参加者との対話の場を持ちました。「寺院消滅」の作者鵜飼秀徳氏からの「地域の人が空き寺を守っている現状や、檀家さん以外の要望に応えられないお寺の有り様をどう考えるのか」という質問を皮切りに、宗の人材育成のあり方、後継者問題や僧侶の資質の向上、また、個人化が加速する市場経済社会において、包括法人と被包括法人の関係はどうあったらよいのかなどが話題となりました。包括法人と被包括法人の役割を分け、包括法人は被包括法人のバックアップや現場支援をすること(注:宗教法人法は宗教法人には単位宗教法人と包括宗教法人があり、単位宗教法人は被包括宗教法人と単立宗教法人に分類される。仏教では宗派(宗団)が包括宗教法人に、本山や末寺が被包括宗教法人にあたる。)宗教者は社会からの信頼を得るために自らの情報を開示していくことなど今後取り組んでほしい事柄も意見として飛び交いました。

最後に、亡くなった人を弔いたいという人の心に寄り添い、日々の活動によって信頼関係を築いていこうとする宗教者を求める人がいる―そのことが我々宗教者へのエンパワメントされるー言葉であり、希望であるとの戸松さんの言葉で会を終了しました。