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2018/7/6-7/9 白井宏幸:studio D2『萩家の三姉妹』レビュー

去る7月6日から7月9日まで、studio D2『萩家の三姉妹』(應典院舞台芸術祭Space×Drama×Next2018参加作品)が上演されました。2時間45分にせまる大作で、脚本・演出・俳優・スタッフワークどれもに力のある良質な舞台だったと、好評を多く耳にすることができました。今回は、俳優/ステージタイガー所属の白井宏幸さんにレビューを執筆していただきました。


「失敗したなぁ。」

應典院を後にして、ラブホテル街を右手に、坂を登りながら独り言ちた。
フェミニズムのこんがらがった痴話の面白いお芝居を、だらしのない、男の俳優がレビューを書かねばならないというのですもの。
6年前の公演も見ており、目の前の出来事が少し記憶をつついてくるが、ついぞ終演まで思い出すことができなかった。後から調べて、そうだそうだ、あの人たちが出ていた作品だ、と。目の前で繰り広げられている出来事の吸引力が強かったのであろう。そして、今回の方がよく笑えた。

お話は、地方の旧家の三姉妹が恋は止められないっていうお話でした。
「社会性」を考えると、現実に展開されると笑ってらんない話けれど、演劇として覗いてみてられるかお客さんみんな他人事のようにどっかんどっかん笑って。

6年前、僕が見たときにはフェミニズムを教える女子大の先生である長女鷹子が「たーちゃま」と呼ばれていたのが、なんだかとってもイライラとしたんです。
あんたのその態度は思想じゃないよな、性格だよな、それをまわりも許容してるんだよな、と。でも、今回見たときにはどうもそういった捉え方の方に僕の心が動くことがなかった。
演者や演出が変わったからなのか、それとも見る側の内面が変わったからなのか。
社会の成長とともに、「目の前で展開されている不倫活劇」が未熟でとっても愛らしいし、
登場人物の誰もが目の前の人間に対してはなるべく誠実であろうと苦悶しており、
いずれの性であるという理由で相手を貶めるようなことはなかったように思えました。
どちらの側にも正義があって、それを見ている観客側にも正義がある。
観客はそれぞれご自身の経験から憤ることもできれば笑い飛ばすこともできる。
鏡のような演劇でありました。

春夏秋冬、一年をかけてお話は展開していきますが、その間にとてもたくさんの人の心が動き、
たくさんの幸や不幸が展開されていく。その中にあってもう老いていくしかなかった福良さん演じる品子さん。
幾つになっても人間は良き変化ができる。そういう啓示を残してくれている事が僕にはとても嬉しかった。
やんちゃな夏が来る前に観る事ができてよかったと思いました。とても面白かった。

 

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白井宏幸 俳優 ステージタイガー所属
1980年兵庫県生まれ
大学在学中から演劇をはじめ運とご縁で舞台や映像に出演
2016年にはアトランタでの映画祭Filmapalooza2016にて最優秀主演俳優賞を受賞しカンヌ国際映画祭で主演映画が上映される

出演予定

[30×30 pair.102]「全日本超溶接工委員会×凡タム」
【日時】
7月24日(火)18:30~ 19:10~ 19:50~ 20:30~
【会場】
in→dependent theatre 2nd
【料金】
前売 1,800円 当日 2,000円
【詳細】
http://www.ka-geki.com/

ステージタイガー #009 「アフターバーン」
【日時】
2018年10月12日(金)~14日(日)
12日(金)19:30~
13日(土)11:30~ 15:30~ 19:30~
14日(日)12:00~ 16:00~
【会場】
浄土宗應典院 本堂
【料金】
前売 3,500円 当日 4,000円
【詳細】
http://st-tg.net/

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白井宏幸
(俳優、ステージタイガー所属)