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2018/11/6 秋田光軌:第71回寺子屋トーク「應典院ゆかりの場のデザインを考える~哲学カフェとまわしよみ新聞~」を開催いたしました。

11月6日(火)、應典院寺町倶楽部の主催、浄土宗應典院の協力で、第71回寺子屋トーク「應典院ゆかりの場のデザインを考える~哲学カフェとまわしよみ新聞~」を本堂にて開催、20名ほどの参加者がありました。大阪大学大学院時代に哲学カフェに取り組んでいたご縁もあり、当日の司会進行を務めた秋田光軌(浄土宗應典院主幹)から今回の開催報告をお伝えします。


現在、日本全国さまざまな主体によって多様に展開されている哲学カフェとまわしよみ新聞は、教育現場への導入がはじまるなど、代表的なワークショップのかたちとして広く知られています。実はなんとこの2つの活動は、ともに應典院という寺院ではじまったという経緯を持っています。2000年度のコモンズフェスタで、大阪大学大学院臨床哲学研究室の皆さんによって実施された哲学カフェが、おそらく日本ではじめての試みであるという説があります。また、まわしよみ新聞は、同じく2012年度のコモンズフェスタで観光家の陸奥賢さんが実施したもの。現在に至るまで、應典院で定期的に開催を重ねています。そこで今回は、應典院を発祥とする2つの活動のコラボレーションから、そのちがいや共通点を浮き彫りにしようとするものでした。

まず、第一部で陸奥さんによるまわしよみ新聞のワークショップを行いました。参加者はそれぞれ新聞から気になった記事を切り取り、その記事を選んだポイントを他人に紹介します。最後はオリジナルの新聞として記事を貼り付け、見出しを書き加えて、紙面を再構成するという流れになっています。あまり時間もなく、ほとんど直感で気になった記事を選ぶのですが、記事を紹介する段になると皆さん意外に色々喋り、予想以上に盛り上がっていきます。新聞づくりでは、貼り付け・色塗り・レイアウトなど、役割を自然に分担しながら、共同作業でひとつのものをつくりあげる一体感がありました。新聞というメディアを通じて、初対面の人同士でも即興的に遊び、楽しみながら場を分かち合うことができる。そのようなまわしよみ新聞のデザインが改めて印象に残りました。

第二部では、カフェフィロ代表の山本和則さんを進行役に哲学カフェを行いました。全員で円形になって、冒頭にいくつかのポイントが示されます。なにか結論を出そうとする場ではないこと。他者の意見を頭ごなしに否定しないこと。分からないことはごまかさずに積極的に問いなおすこと。「この場を成立させるために、皆さんの自発的な参加が必要です」というお話あたりから、雰囲気が少し変わったように感じました。終わったばかりのまわしよみ新聞の感想について、ぽつりぽつりと語りがはじまります。はじめ参加者からの発言は少なめでしたが、周りの方の話を聞いて触発されるように、だんだんと手があがるようになっていきました。「まわしよみ新聞をしている瞬間に、他者と分かり合えた気がした」「他者と分かり合う必要があるのか?実際、他者と分かり合うことなんてできるのか?」「まわしよみ新聞も哲学カフェも、他者と意見がぶつからないようなデザインになっているのではないか」。第一部で感じた身体的な直観についての話から、次第に今回のテーマであった「場のデザイン」について活発に意見が出されはじめたところで、哲学カフェは終了となりました。

最後の第三部では、陸奥さんと山本さんからお話を伺いました。哲学カフェは時に意見の異なる他者と時間を共にしながら、まさにちがいが生じる部分についての対話を行い、それによって生じる自らの内の気づきを重視します。意見のちがいは埋まらないかもしれないが、それを通じて自分がどんな価値観を前提にしているか、何が自分にとって本当に切実な問いなのかは知ることができる。一方、まわしよみ新聞は、笑いの絶えない遊びによって全てを包摂してしまいます。記事についての話も何かの話題に収斂するわけではなく、てんでまとまりのないままに散らかっている。陸奥さんは著作の中で、そのスタイルを対話ではなく、関連性のない話を棚上げにし、次々と横滑りしていく「共話」と名付けています。そのまとまりのなさが、新聞づくりという共同体験によって、不思議と具体的なかたちに結実していく。2つの活動にはそのような立ち位置のちがいがあるのでしょう。

ただ、應典院というお寺の存在を視野に入れることで、その共通点も見えてきました。もともと、お寺はお葬式の施設でもなければ、僧侶や仏教徒しか入れない場でもありませんでした。それはある時は学校、病院、劇場、信仰の現場になるような、明確な専門性を持たない曖昧なアジールなのです。おそらく仏法が信不信を問わず全ての人に関係しているために、このようなコモンズ(共有地)的な性格が付与されていったのだと予想されますが、そんなお寺の場所性はたしかに両者のコモンズを志向する性格に、「全ての人にひらかれており、その場かぎりの共同体をかたちづくる」性格につながっていると思われます。まわしよみ新聞で新聞づくりを一緒にする中で、異なる他者の存在に出会うこともあれば、哲学カフェで頭にうかんだ考えを即興的に、まとまりなく口にすることだってある。どちらの活動も應典院側からの依頼によって企画されたという事実は、「私がこれをやりたいからやる」のではなく、先述したお寺の特異な場所性にいかに応えられるのかという、場を主語にした豊かな問いかけの余白を残していたように思えてなりません。

※開催控える今年度のコモンズフェスタ2019でも、1月17日(木)17時から「まわしよみ新聞」を開催予定です。ぜひご参加ください。

 

 

 

人物(五十音順)

秋田光軌
(浄土宗應典院主幹、浄土宗大蓮寺副住職)
陸奥賢
(観光家/コモンズ・デザイナー)