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1/13-17 コモンズフェスタ2017「思考採集イベント 指紋は象のはたけ~バーチャル社会in應典院~」を開催いたしました。

1月13日から17日まで、「思考採集イベント 指紋は象のはたけ~バーチャル社会in應典院~」を開催いたしました。本企画は、組織化しない劇団・森林浴によるもので、應典院全域を「指紋町」という架空のまちに見立てるというイベント。指紋町に暮らす住民を展示する演劇公演「劇 指紋は象のはたけ」を軸に、さまざまな出来事がバーチャル社会で巻き起こりました。

指紋町では通貨「円」が使用できず、飲食等の購入のために、参加者は「クラウン」という通貨を「仕事」をして稼ぐ必要があります。1階ロビーには職業安定所が設けられ、そこで紹介される「仕事」(チラシ集め、香りさがし等)に取り組むことで、「クラウン」を獲得することができます。もともと演劇公演を見に来たつもりが、会場内をゲームの主人公のように探索することに夢中になる参加者も多数いらっしゃいました。

「劇 指紋は象のはたけ」は、本堂ホールのみならず、1・2階ロビーや階段のスペースも使った90分程の公演となりました。定められた客席が存在せず、いたるところで同時多発的に上演が行われることで、参加者は移動を重ねながら、見たい場所で見たいものを見ることになります(写真撮影・私語も可)。劇中には参加者が文字通り「参加できる」シーンがあり、役者に積極的に話しかけてコミュニケーションを取る方、じっと1カ所に座って移動しない方など、それぞれに個性的な立ち居振る舞いが提示されることで、誰が役者で誰が参加者なのか、一見して判断できない希有な瞬間が生まれました。日常とは異なる秩序のなかで、自分でいかに選択し、行動するか。まさしく、それを体感する5日間となりました。

また、観光家の陸奥賢さんによるまち歩き企画「バーチャル應典院への道」、映画監督の原一男さんの初期ドキュメンタリー作品を上映した「ギリギリまで狂いたいあなたへ」、演出家がひとりの俳優に演出する様子を展示する「虹の足を捉える」など、劇と並行して複数の企画を連日開催。それぞれの場が重層的に折り重なるなかで、そこから指紋町の多様な楽しみ方を見出し、バーチャル社会で暮らすことを積極的に選択するリピーターも徐々に増えているようでした。

最終日の1月17日昼、この日限りの公演「特別な日のバラシ」を行うとだけ告知がされていましたが、蓋を開けてみれば、指紋町の舞台美術がバラされていくなかで、2人の役者がまちや人やものとの思い出を辿る姿に、阪神淡路大震災の記憶を重ね合わせた上演となりました。應典院主幹の秋田光軌も参加し、上演の後半ではご本尊の前で震災物故者の追善供養を行いました。また、同日夜の「劇 指紋は象のはたけ」最終公演は、バラシ終わったあとの暗闇のなかで公演を行う前代未聞のものとなり、5日間をかけて指紋町に遺された人々の痕跡が、終演後の應典院にも色濃く跡を残しました。