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2019/8/27 岩橋貞典:映画&トーク『オープン座セサミ・作品集』應典院マンスリーライトシネマ レビュー

去る8月27日に、第6回目となる應典院マンスリーライトシネマ『オープン座セサミ・作品集』が開催されました。今回は大阪で人形アニメーション(パペットアニメーション)制作や人形劇を長年創り続けている団体『オープン座セサミ』の作品集の上映となりました。脚本家・演出家の岩橋貞典さんにレビューを執筆していただきました。


 映画が好き、というか、アニメが好きなのだ。たぶん細胞の半分くらいはアニメで出来ている。明けても暮れてもアニメアニメアニメだ。いや、そうでもないか。
私がアホほど見ているアニメとは、いわゆるアニメーションというやつで、それも大雑把なくくりであり、より正確には、セルアニメと呼ばれる、広大なアニメーション世界の、ほんの一部でしかない。世界はどこまでも広くて、手の届く範囲のその向こうにも、さらに世界がある。

なんの話かというと、セルアニメ以外のアニメに触れる機会ってのは、じつはなかなかなくて、いや、本当は毎日のように触れているのだけれど、私たちはそれと知らずに接していたりする。ほら、よくあるじゃないですか、TVのコマーシャルなんかで、人形とかがコマ撮りで動いてるやつ。あれも、アニメーションなのだ。粘土がぐにゃぐにゃするやつも、砂がさらさら動いてるやつも、鉄拳も、全部全部アニメーション。スチル写真を並べて動いてるように見せるのも広くアニメーションだし、もしかしたら、実写映画だって、人間の動きをフィルムひとコマひとコマに写しているものなのだから、本当はアニメーションかもしれない。凄いぞ、映像作品はすべてアニメーションなのだ!

と、妄想がめちゃくちゃになったところで、今回はパペットアニメーション作品を作り続けているオープン座セサミさんの上映会に行ってきた。パペットアニメーションとは、名前から連想されるように、人形を動かして、それを撮影して作られた映像作品。だからといって、人形劇を撮影しているのではなくて、ひとコマひとコマ、人形(だけでなく、背景やらもすべて)動かして撮影して、繋げている。画面上には、私たちのような生きている人間は登場せず、世界を構成するのは、すべてが創作されたキャラクターだ。

上映されたのは、短編中編あわせて6本ほど。最長でも20分程度の、かわいらしい作品だ。見ている間は、そのほっこりした世界に癒される。客席には、親子連れもちらほら。ほんわか世界に拍車をかける。見ている間はとても楽しそうだ。ああ、楽しいね。幸せだね。自分もそんな世界についつい入り込みたくなってくる。だが、私は知っている。この、パペットアニメの世界は、そんなに甘いものではないということを。

実は私は、その昔、パペットアニメの手伝いをしていたことがあったのであった。『緑玉紳士』というその作品は、ほぼ個人製作で作られたもので、かつての私はそのセットやらなんやらの膨大な製作物を、来る日も来る日も組み立てていたのであった。撮影そのものには携わっていないが、その大変さは推して知るべし。あんなの、本当にめちゃくちゃ時間も技術も必要なのだ。

上映後、監督の西村有理さんのトークで、その苦労話がつらつら語られる。そらそうだ。大変に決まってる。1作品つくるのに平気で1年とか2年とかかかるのだ。気の遠くなる話である。モチベーションとか、資金とか、そんなに続くか?

しかし、何本も作品は作られ、上映されている。新作も作っているという。どうなっているのだろう。何かが壊れているのだろうか。そう、きっと、どこかが、人間として生きていくのに致命傷にならない部分が、ぶっ壊れているのだ。

ほんわかと監督さんは地獄を語る。それを笑いながら聞く私たち。作品を観るのと同じスタンスで、苦労話も満喫している。皆楽しそうだ。ああ、そうか、と私は思う。

さきほど見たあの作品たちが、どうしてあんなに幸せそうなのか。それは、彼ら自身の生きざまが、作品に反映されているから。あんなに楽しそうに地獄を語る監督さんたちは、きっと底の抜けた幸福感を、撮影中も感じているに違いないのだ。

ついついその雰囲気に引き寄せられそうになるが、危ない危ない、そこは楽しそうだが地獄である。あれをもう一度、やりたい、かなあ…。でも、楽しそうなんだよなあ…。

 

プロフィール
岩橋貞典(いわはしさだのり)
オリゴ党代表。ほぼ作・演出を担当。ほか、ネットラジオ『大魔王・岩橋の貴族の嗜み』レギュラー出演、『七井コム斎のガンダム講談会』レギュラー出演など。
過去上演台本を製本して販売中。公演期間外では、こちらの書店にて取扱しています。

http://dreammesse2005.cart.fc2.com/?ca=52

 

公演情報
2019年9月7・8日 TORII HALLにて オリゴ党プロデュース公演『サヨナフ』(大竹野正典・作)

2019年9月16日(月祝) なんば紅鶴にて 『七井コム斎のガンダム講談会』出演

2019年冬頃、オリゴ党小規模公演として短編上演を予定。詳細未定。

應典院マンスリーライトシネマ

人物(五十音順)

岩橋貞典
(脚本家・演出家)