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【開催報告】池邊文香:「碑文谷創さんのお話をきく会in関西~次世代に心ある弔いを繋げるためには?~」を開催して

去る10月20日、「碑文谷創さんのお話をきく会in関西~次世代に心ある弔いを繋げるためには?~」を開催することができました。
実行委員として、会の全体にわたって取りまとめてくださり、当日の司会・聴き手を務められた、せいざん株式会社の池邊文香さんに開催報告をいただきましたので、以下に掲載いたします。
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司会・聞き手役の私は当日の本番直前、碑文谷さんと打ち合せ中にこの日最大の衝撃を受けた。参加者のアンケートや意見を見た碑文谷さんが一言。「課題意識が進化していない気がする。古い。もう一皮剥けないといけない。」と真剣な面持ちでこぼしたからだ。

その言葉通り、会を通して頭をがつんと殴られたような、視野が一気に広くなる瞬間が多々あった。

今現場に立つ多くが碑文谷さんより若い。でも年齢がただ若いだけで葬送への価値観は古いまま、眼前の課題に右往左往。77歳の碑文谷さんのほうが葬祭への確かな理念を下地に柔らかな思考と柔軟な感性をお持ちなのだと突きつけられた金言だらけの時間だった。

登壇中、碑文谷さんは「歴史を学べ」と何度もおっしゃった。従来の葬送に戸惑う遺族に意思と根拠をもって提案できていないために、今の葬送業界の形骸化は深刻化している。葬送の成り立ちを正しく学び、本質を掴んだ動きができてこなかった代償はあまりにも大きい。

「伝統・慣習を守る」と言えば聞こえはいいがそれを言い訳に、とっくに制度疲労を起こしている葬送の当たり前を疑うことをせず、深掘りしてこなかっただけだ。

その証拠に碑文谷さんが創刊した葬送文化雑誌『SOGI』で26年間指摘していた多くの課題は深刻化し、変わっていない。『SOGI』休刊から7年経った今、むしろ悪化している。

会では参加者の事前アンケートや勉強会の声を中心にした質問を用意。合計17問に碑文谷さんの回答を得る構成にしたが、4時間あっても足りないくらいその膨大な知識と「命を尊ぶだめの弔い」を軸に一切ぶれない意思ある意見をお話くださった。

「なぜそれをするのか?を説明もせずに行う読経はただのBGM。そりゃあ価値も感じない。日頃から信頼も得ず、説得力ある説明もできずに宗教者が必ず葬儀に必要だとなぜ思えるのか。」
「1日葬や直葬がよくないかのように言われているのはなぜ?葬儀が2日間である意味は?簡略化は売上が上がらない事以外、誰が困るのか?遺族にそれは関係あるのか?」
「お布施はなぜ必要なのか?起源は?戒名の階級はなぜあるのか?明確に説明できているか?」
「血縁だけではもう無理だ。社会的な弔いの仕組みが必要だが対策はできているのか?」。

質問をしたはずの私達が逆に碑文谷さんに問いかけられ続けた。

私自身、葬儀・お墓の相談員として碑文谷さんの文章を通して15年ほど私淑してきた。弔いへの理念を持って葬送をよりよくすべく、日本全国の寺院の活動支援を通して動いてきたつもりだったけれどもっと深く葬送の本質を捉え、固定観念を外す必要がまだまだあると痛感した。

異業種が流れ込み、葬送の表層を舐めただけの金儲け主義の葬祭業者が増え、喪主を消費者化させつつあるが成すすべなく、「葬儀社が悪い」、「宗教者が悪い」、「遺族が消費者になっているのが悪い」と人のせいにしている場合では決してないと改めて突きつけられもした。

次世代へのメッセージで碑文谷さんがおっしゃったようにこれからは大変な時代。1人や1組織でできることは限られている。だからこそ、宗教者と葬祭業者がチームとなって学び、理念を持って実践していくことが今後何より重要になってくると思う。

弔いは命の尊さ・平等さを繋いでいく社会として大切な行為。

その本質を捉えて遺族(血縁に限らず)の心情に即して誠実に伴走できる宗教者・葬送関係者が増える必要がある。

碑文谷さんからの問いかけを気づきで終わらせてはいけない。今回の参加者と繋がって共に「学び・実践・共有」を継続することで、これまで以上にこれからの弔いと向き合っていこうと思う。

碑文谷さんのお話を同世代と聞けたことで、碑文谷さんはその功績以上に尊敬すべき葬送への理念を持っている方だから「レジェンド」なのだと改めて実感した。貴重な機会に立ち会えた幸運に感謝し、精進していきたい。

 

せいざん株式会社
池邊 文香

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池邊文香
(せいざん株式会社取締役エンディングコンシェルジュ)