イメージ画像

【開催報告】むぬフェス~「産む」から「死ぬ」まで、生きるをめぐる10日間

應典院の新たなプロジェクト「あそびの精舎」構想第一弾のプログラムである『むぬフェス~「産む」から「死ぬ」まで、生きるをめぐる10日間』が5月17日から26日まで10日間にわたって開催されました。トークセッション、ワークショップには延べ人数で500人を超える参加者が、展示「産まみ(む)めも展」にも、およそ200人の方々がお越しくださいました。

産まない・産めない・産む・産みたい・産もうか…「産む」の物語を問い直す

展示『産まみ(む)めも』は、「産む」にまつわる価値観・選択肢を問い直すアート展示。同展は、一人ひとりの表現と対話を通じて、共創を促す環境づくりとして、リサーチやワークショップ、対話の展示記述とも呼べる表現の場としてのアート展示がしつらえられました。不妊治療者、特別養子縁組の養親、同性カップルをはじめ多様な「産む」の当事者、および5組の作家とともに、リサーチとワークショップを行った結果を様々な展示方法(映像・造形)で、わたしなりの「産む」に向きあいはじめる機会を創発するような展示となりました。

 

ひとりでは向き合えぬ「死ぬ」ことに、ゲストと、そして、他者と一緒に向き合う時間

二週間にわたり、週末には、「産む」から「死ぬ」まで生きることをめぐる多様なテーマで、延べ9つのトークセッションと8つのワークショップを実施しました。血縁に縛られない家族のかたちが広がり、新たな弔いの方法やSNSデータから死者を再現できるAI時代。一人ひとりの生き方/往き方を問うために、仏教者や人類学者、医師、作家にデザイナー…多様な専門家や実践者をお招きし、これからの社会を想像するきっかけの場として行ったトークセッションとワークショップでした。参加者とともに、弔いや葬儀、祖先、看取り、グリーフといった様々な手がかりをもとに、死生観と向き合うイベントが、本堂とSTEAM Labで開催されました。

 

会期中、應典院1階のロビーでは、ウェルカムドリンクとして振る舞われたコーヒーを片手に、各々が見つけた気づきや思いを語らいつつ、フロアに置いていた今回のセッション等にかかわる本や「めぐるライブラリー」の本を手にとって、ゆっくりと思考にふける方、ワークショップの経験を分かち合う姿も見られました。受付横には、子どもたちによって即席の遊びスペースが出来上がり、世代問わず繋がる空間となりました。

 

円環する「産む」と「死ぬ」の中で、<生きる>というテーマを手掛かりに、様々な世代が集まり、多彩な生、多様な地点に身を置く一人ひとりが、様々なカタチで交わる時間となりました。今回、中心になって企画を考えてきたDeep Care Labのお二人や実行委員の方々が、日々交わるボランティアの方たちと主体となって、聴く、話す、書くという作業を通じ、また、身体性を用いるワークを企画するなかで得たものが大きかったと思います。セッションやワークショップの参加者もともに、お互いの素直な意見を伝え合おうとする姿や、匿名性のあるグループの中で対話し、共感する時間を持つことができたこと、また、新しい価値観(政策にもつながる可能性もあるような)を創るチカラのすばらしさを感じる10日間となりました。ロビーで見守る観音様、フェスの開始と終了時には、みなさまと声を併せてお念仏を称えたとき、本堂の阿弥陀如来さまが微笑みをたたえて、若い人たちをみておられる感じがしました。