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3/10 お寺MEETING VOL.8「は寺院を救うか~お寺と観光ビジネス」を開催いたしました。

去る3月10日、お寺MEETING VOL.8「<宿坊>は寺院を救うか~お寺と観光ビジネス」を應典院本堂にて開催いたしました。宿坊とは、主に仏教寺院などで僧侶や参拝者のために作られた宿泊施設のこと。下寺町に新たな宿坊が誕生するプロジェクトをきっかけに、「宗教とビジネス」「公益と営利」「信心と観光」など、多岐にわたって話題を繰り広げる時間となりました。ゲストには、宿坊の仕掛け人のお一人でもある、堀内克彦さん(宿坊創生プロジェクト顧問・宿坊研究会代表)、コメンテーターには陸奥賢さん(観光家・コモンズデザイナー)をお迎えしました。

まず、堀内さんより「宿坊の現状と未来予測」について資料をもとにご講演いただきました。宿坊は時代の流れとともに減少したが、宗教と社会との関わりが変化している現代では、お寺に泊まるという体験が見直されつつあり、宿坊をお寺の新しい支えとして生かすことができるという考えが示されました。そして、下寺町の一角に誕生する宿坊「和空」についての紹介がありました。多くの企業が出資し新築された宿坊で、主に外国人旅行者を対象とした宗教体験(写経、写仏、お守りづくり、精進料理など)が組み込まれています。

続いて、陸奥さんと住職を交えて話を深めていきました。特に、「宿坊をお寺の外に作ることは、お寺を救うことになるのか」という話題では、新設の方がコストの削減となることや、客室数と需要の関係をクリアしやすいという経営面の課題が挙げられました。堀内さんは、ご自身が寺社仏閣に滞在することがとても好きで、できるだけ多くのお寺に門戸を開いて欲しいという願いから宿坊創生を考え始めたという経緯があります。下寺町には多くのお寺が密集しており、散策することでお寺との新たな出会いが期待されるとおっしゃいました。

「宿坊を開く際に必要なホスピタリティ」についての話題では、ある山里の一日一組限定の宿坊が人気を博していることを例に、お寺とそのご住職の規格、性格に合ったおもてなしの方法が重要なのではないかと纏められました。ただし、これは宿坊を開いて成功した一例であり、すぐに閉じざるを得なくなった宿坊もたくさんあります。宿坊プロジェクトは、今後も試行錯誤を繰り返していかねばならない状況であるといいます。

一方で、宗教儀礼が観光産業の資源として脇役に置かれていることに対する違和感について、住職から指摘がありました。また、会場からの質問では、がんケアの施設を営んでいる方から、心と身体が真に必要とする宗教と、宿坊で紹介されている宗教は別のものであるように感じたという感想が述べられました。改めて、宗教のもつ役割について深く考えさせられる内容となりました。

終了後は、会場にいらっしゃった皆さまとともに、東日本大震災の追善供養を執り行いました。ご参列いただき、誠に有り難うございました。