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2018/8/30 インタビュー連載「應典院モニターレビュアーに聞く」第1回:二朗松田

NPO應典院寺町倶楽部との協働により実施しているモニターレビュアー制度。発足から1年以上が経ち、浄土宗應典院で行われる企画について、この間さまざまな方からレビューをご寄稿いただいております。このインタビューは、應典院を定期的に観測いただいているレビュアーの皆さんからお話を伺うもの。第1回は、演劇ユニット「カヨコの大発明」を主宰されている二朗松田さん(デザイナー・脚本家・演出家)にご登場いただきました。


――インタビュー連載の初回、どうぞよろしくお願いいたします。普段はどういったことをされてらっしゃるのですか。

二朗 生業としてはデザイナーをやっていて、飯を食べている人間です。演劇人としても活動していて、「カヨコの大発明」という演劇ユニットを主宰しています。最近だと、應典院舞台芸術祭Space×Drama×Next2018で7月に上演された、Studio-D2「萩家の三姉妹」のチラシデザインなどやっています。

――すばらしくかっこいいチラシでしたね!

二朗 うれしいです、ありがとうございます!Studio-D2さんは永井愛さんの戯曲とか、クラシックな文芸ものをよく上演されるので、逆にチラシは激ポップにやってやろうと思って。6年前にも同じ団体・作品の上演を應典院で見ているんですけど、かなりめちゃくちゃなお話ですし、絶対めちゃくちゃやったほうがおもろいやろ、と。

――今回の「萩家の三姉妹」は、レビューも担当してくださっていますね。さて、應典院モニターレビュアー制度がはじまって1年以上になります。参加していただくにあたって、はじめて聞いたときの印象はいかがでしたか。

二朗 最初は泉寛介さん(應典院寺町倶楽部執行部役員、baghdad café)からお声かけいただいて。彼とは演劇はじめて間もないときから知り合いなので、お互いの興味は大体分かっていて、前向きに話を聞くことができました。ただ、正直よくわかんなかったところもありますね。レビューと一言でいっても、きちんとした批評を書くのか、速報性の高い感想を書けばいいのか、判断の難しさも感じましたが、他のレビュアーさんの書かれるものを見ながら立ち位置を模索しつつやっています。

――ちなみに、應典院についてはそれ以前からご存知でしたか。

二朗 はい、もちろん。やはり演劇の劇場として應典院にはずっと足を運んでいました。一心寺シアター倶楽をはじめ、お寺と関連のある劇場はけっこうあるみたいなので、そのうちのひとつだろうと言う認識でした。あとは2005年の應典院コミュニティ・シネマ・シリーズで、石井聰互(現・石井岳龍)監督「鏡心」を見に来ていたり、演劇や映画といったカルチャーの拠点として認識していましたね。仕込み日に住職の法話があるらしいとか、ちょっとずつ噂を聞いたりしていて。そのときは、まさかここまで手広く色んなことをやっているとは思ってなかった(笑)。

――なるほど(笑)。そんな色んなことが行われている應典院ですが、二朗さんはこれまで5つのレビューを執筆してくださっています。「詩の学校 お盆特別編それから」(2017年8月)meyou「シエルソル」(2017年12月)映画「あなたの旅立ち、綴ります」特別試写会(2018年2月)プラズマみかん「シルバー・ニア・ファミリー」(2018年4月)Studio-D2「萩家の三姉妹」(2018年7月)の5つですね。感触はいかがですか。

二朗 好き勝手書かせてもらっていると思いますよ。5つやってみて全部おもしろかったんですね。おもしろいものをどうおもしろく伝えるかの苦労はあるとしても、だからってそんなに苦労したつもりはなく、非常に楽しんでやれています。また、じぶんの脚本とは別の文章に取り組むというのは、頭を休ませてリフレッシュする機会にもなっていると思います。

今年1月にコモンズフェスタ2018のレビュアー座談会にも出させてもらいましたが、そのあとの打ち上げで秋田光彦住職に「あのレビューの行方は日本中の寺院・仏教研究者が注目しているよ」と伺って…。それを聞いて思わず背筋が伸びました(笑)。「あ、そんなところからも注目されているんだ」と、こちらの認識も変わりましたね。次第に「應典院=劇場」というイメージではなくなってきて、劇場としての姿は本当に氷山の一角だったんだな、と。

――二朗さんの文章を読んでいてると、饒舌なラジオのDJを聞いているようなリズム感・ライブ感を覚えます。

二朗 それは狙っているところでもあるのでありがたいです。それしか書けないというのもあるんですけど、もともとブログをずっと書いてきていたので、そのときの癖が残っているんでしょうね。じぶんがかっこつけて硬質な文章を書いても、読む人が読めば底が割れることは分かっています。最初からそこでは勝負してない。できるだけ、読む人にとっての読みやすさを考えています。

――他のレビュアーさんの文章は参考にしたりされるのですか。

二朗 それは見ますよね。レビュアーの皆さん、どなたも非常にきちんとしたレビューを書いてくれるので、僕はちょっとふざけて逆の道に行ったほうが、振れ幅が増えて良いかなと。特に坂本涼平くん、汐月陽子さん、杉本奈月さんの3人は、俺のなかで「おそろしい文章を書く3人だ」と思って注目しています。中でも杉本さんの文章は突き抜けていて、心底おそろしい(笑)。

――話は変わって、應典院は今年度から「終活事業」に力を入れていたりするんですが、レビュー執筆を経て、現時点での應典院に対する印象を教えていただけますか。

二朗 今年45歳になるんですけど、まだ「人生のしまい」とか死生観を考えることがそんなに切実ではありません。となると、やはり今はカルチャーに意識が向いていて、演劇や映画の應典院の存在がじぶんにとっては大きいんです。映画や演劇があることではじめてお寺と関わりを持つ人も多くいるはずですし、これまでお寺が地域コミュニティに果たしてきた役割を考えると、すごくまっとうなことですよね。実は一番まっとうなお寺かもしれない(笑)。

ただその意味で言うと、これから50代や60代になっても、應典院はずっと関わりつづけられる場なのかなという予感はあります。そして、その関わり方は少しずつ変化していくのかもしれません。

前に應典院の本堂で開催された「シアトリカルフォーラム 戯曲×恋愛『愛情マニア』」(2017年4月)を見に来て、パネリストとして應典院主幹の秋田光軌さんと緊縛師の永遠嬢さんが出ていらした。恋愛に対する仏教者と緊縛師の発言がどんどん近づいていって…(笑)、あの感覚がめちゃくちゃ面白かったんです。仏教の考え方の一端を垣間見れた気もしました。ああいった恋愛トークの延長で、仏教の考え方をもっと知りたいなと思いましたね。仏教の知識がある人は少なくとも私の周りにはいないですけど、皆けっこう知りたいと思っているんじゃないですか。

――ありがとうございました!最後に一言お願いします。

二朗 演劇ユニットをやっていると言いましたけど、10月に本公演をはじめてするんです。劇場として應典院を使ったことがまだないので、いずれはぜひと考えています。一度はここで公演をやりたいし、應典院だからこそできることが絶対にあるはず。今の時点ではレビュアーやお客さんとしてしか来ていないので、劇場としての應典院を実際に体感することでまた見え方も変わるかもしれません。

 

 

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二朗松田
(デザイナー・脚本・演出家)