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2018/12/22-12/24 仲口タクマ:MEHEM『鐡の夢果て』レビュー

去る12月22日から24日に、MEHEM『鐡の夢果て』(應典院舞台芸術祭Space×Drama×Next2018)が開催されました。SF的世界観が広がり、設定・衣装・ギミックなど、こだわりが詰め込まれた見応えある作品でした。今回は、お笑いユニット パルボロインの仲口タクマさんにレビューを執筆していただきました。


2018年、様々な映画を観てきました。
年の瀬ということもあって18年の映画ってどんな作品群だったろう。
なんてことを考えると、「作り手や観客のこれまでとこれから」がキーワードだなぁ。
と、薄ぼんやりと思い至っています。

そうそう、12月24日19時30分、MEHEM Vol.6「鐡の夢果て」を観てきました。
MEHEMさんといえば、8月のオープンセサミ『はじめての劇団運営〜企画立ち上げから当日運営まで、MEHEMの場合〜』に参加させていただいた以来。作品を観るのは、不勉強ながら初めてです。

さて、物語は主人公、天才発明者・竹畑尊(演:マナカ)が最新鋭のヒューマノイドNINA(演:中山美咲)を開発する研究施設を舞台とする近未来パート。一方で、19世紀イングランド調の世界を舞台に、本作のもう一人の主人公、タケハタ タケル(演:林和弥)が、政治家のテラカド テツ(演:徳丸一円)より依頼された前人未到の飛行機開発に挑む、所謂スチームパンクパートの2本のラインから展開します。

スチームパンクパートの世界は、あくまで尊が見る“夢の中”の世界として存在し、物語が進むにつれ、尊はこれまで夢の中のタケルを理想とし、言動や発明の発想に至るまでを模倣して生きてきたことが明らかとなる。「夢は現実に影響する。」その言葉通り、夢で起きた出来事は現実に侵食していき―― といったストーリー。

今作の優れている点は、衣装美術のこだわりや、キャスティング勝ちの部分にもあると思っていて。特に、尊のマナカさんのこだわり苦悩する佇まいと表情、タケルの林さんのエネルギーとモノ作りを純粋に愛する人間の引力、この二者の対比は白眉ではないかと。

作中冒頭主人公を取り囲み様々な言葉を群衆が投げつけるパフォーマンス。実のところ、この、演劇によくあるパフォーマンスが僕はかなり苦手でして。「あーはいはい、またそれね。」と。ただ、クライマックスで2つの世界がある一定の厄介なところまで絡み合ってしまい、ある事件が起きる。そこで主人公・尊が決断し、ようやく自分自身で行動を起こす。

尊の成長と共に、2つの世界のリンクが解けるシーンがクライマックスにあるのですが。そこに群衆パフォーマンスを、再び登場する。尊を精神的に追い詰めていた周囲からの抑圧+2つの世界の混合を表現していたモチーフを、ラストの主人公の精神的解放と2つの世界のリンクの消滅として登場させている。これは、あるあるをあえて利用しているんだ、と。

今作で語られている視点は、『物作りと、作り手の苦しみ・アートセラピー的な一面』と、『自分が影響されたものから物を作ることと、オリジナルを生み出すこと』についてではないでしょうか。本稿冒頭で、僕が語った2018年の映画群と共通するテーマと叫びのようなものを、本作にも感じたりするわけです。作り手がどこまでを意図しているかは置いておいたとしても、本作にも存在する、あるあるや既視感を感じるような展開や要素は、『これまで影響されたことから物語を作る』なのではないか。では、これからは、「影響を与えてくれた物に感謝し別れを告げ、自分たちなりの道を行く。」そのための、作中ラストの尊とタケルの道の分岐なのではないかと感じたわけです。

その気概を自分と同世代の作家や座組から表明されていることに、僕も思わず親指を立てながら口角が上がってしまう。僕は、自分自身に「天才じゃなくても、混ぜられるものを混ぜまくれば最高のサンプラーになるはずだ。」と言い聞かせながら、やっているところがあります。憧れたものや、救ってくれた作品、出会った人々が繋いでくれた先に確かにあるはずの、自分なりの物を生み出していきたいですね。

 

〇レビュアープロフィール

仲口タクマ(なかぐち たくま)

1992年大阪府大阪市生まれ。
お笑いユニット パルボロイン。
ラジオ視聴と映画鑑賞を、日常生活に支障を来す程度の日課としている。
Twitter: https://twitter.com/okiagari_kokoji

【イベントMC担当】

「第10回 大喜利URRAIグランプリ」
誰でも参加いただける大喜利大会です。
■1/27(日) 14:30〜17:00
■場所 イベントスペース T7.5
(JR京都駅から徒歩10分)
↓情報・予約↓
https://www.t-75.jp/rental

■エントリー 1000円 観覧 無料

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仲口タクマ
(お笑いユニット パルボロインのひとり)