イメージ画像

1/21 コモンズフェスタ2017「そなえられない「災」〜『加害者家族』をめぐる朗読とトーク〜」を開催いたしました。

去る1月21日(土)、底冷えのする應典院本堂ホールにて、コモンズフェスタ2017「そなえられない「災」〜『加害者家族』をめぐる朗読とトーク〜」が開催、無事終演を迎えました。最小限の設えの舞台でしたが、満月動物園の戒田竜治さんによる演出で、朗読する俳優も、聴衆も、突然に加害者家族に降りかかる「災い」を想像しながら、緊迫した場面が目前に迫ってくるような場となりました。

2010年に幻冬舎新書から発刊された、鈴木伸元さんの著作『加害者家族』。この作品は、加害者家族の様々な物語が綴られています。第一部は、突然幸せな家庭に降りかかった、「夫による犯罪」に苦しむ妻の物語。小学校へ通う息子を抱える母の「加害者家族」の苦悩が浮かびあがるような舞台でした。続いて第二部では、同書の第2章・4章の様々な事件を取り上げられました。各事件の加害者家族によって抱える、それぞれの哀しみや苦しみは違いが種々あったのですが、加害者家族や事件を取り巻く人たちの気持ちを吐露する場面を、6名の俳優さんの朗読で聴いていただきました。
いずれの事件も、加害・被害にまたがる「当事者」の悲苦を浮かび上がらせるノンフィクションでしたが、現代の日本社会では、ネット社会の進化とともに、「世間」という匿名性の集団による事件への眼差しの恐ろしさや、地域コミュニティでの関係性の希薄さなど、様々な「課題」が我々の前に提示された舞台でもありました。

そして第三部のゲストには、立命館大学共通教育推進機構准教授であり、應典院前主幹・應典院寺町倶楽部前事務局長の山口洋典さんをお迎えしました。ご本尊の阿弥陀如来さまの彼我を超えた眼差しの中で、この「新書朗読」のプログラムが誕生した経過や、社会心理学の専門家の立場から、現代社会に見られる希薄なコミュニティとネットでの暴走する匿名性の問題、また、人と人とのつながり(紐帯)の強弱の問題などを、フロアの皆さんや俳優さんとの応答の中で明らかにしていただきました。

「匿名の悪意」が暴走する高度情報社会を生きる今、戒田さんが「匿名の悪意を止めるための一助として、この朗読劇をしているのだと思う」と残された言葉が、本堂のご本尊前への「願い」として、とても強く、それでいて暖かく、胸中に響いたことが印象として残った舞台でした。

人物(五十音順)

戒田竜治
(演出家・脚本家 / 満月動物園主宰、應典院寺町倶楽部事務局長)
湯山佐世子
(應典院寺町倶楽部執行部役員)
竜崎だいち
(「羊とドラコ」主宰。女優/演出家/脚本家。)