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2019/9/13~9/15 たかはしみほ:劇的集団まわりみち’39『密会』(應典院舞台芸術祭Space×Drama×Next2019)レビュー

去る9月13日~15日に、(應典院舞台芸術祭Space×Drama×Next2019)が開催されました。故・大竹野正典氏の名作に真っ向から向き合い、まわりみちカラーに染め上げた意欲作。 今回は、劇作家・パフォーマーのたかはしみほさんにレビューを執筆していただきました。


 

劇的集団まわりみち’39さんの「密会」9/14昼の公演を観てきました。
セットはシンプルで役者のみなさんのリアリティたっぷりの演技で引き込まれました。

モモトモヨさん演ずる女の佇まいに惹かれ・・・彼女の所作一つ一つが演ずるキャラクターと時代感を丁寧に表現されてて素敵でした。
濱ノ上元子さんの根っこのある演技は昭和の時代のホステスを魅力的に表現されていました。
NowhereManは、愛する妻と子供を失った現実を受け止められない父親の気持ちが静かに伝わってきました。

軍司の慶雲さんは、まるで軍司そのものであるかのような雰囲気で全くスキのない演技は見事でした。
誰かの言葉を受け止めて、苛立ち、どうしようもない自分に憤りを感じ、理不尽さ、敗北感・・・
生きているだけでもがき苦しむ現状から抜け出したい。そんな悲壮感と怒り、苦しみをセリフだけでなく慶雲の身体から放たれていました。
負け犬で終わりたくない。いつか這い上がってやると頑張っていたけど、踏ん張る気持ちがどんどん弱くなっていく軍司。そんな姿を見て私の中で通り魔殺人の犯人なのになぜか身近な存在になっていました。軍司の心の痛みと世の中に虐げられ生きる辛さをリアルに共感できました。

自分の存在する場所、生きる場所が見つからなければ、不安は消えない。
働きたいのに働く場所がない。見つからないことがどれほど軍司のような人間を追い詰めるかも理解できました。
世の中から必要とされない自分を思い知れば知るほど、自分の進む道がわからなくなり、ココロの機能不全になる。
生きていくことの難しさをしみじみと感じました。

軍司だって、もし軍司を必要だと思ってくれる人が一人でもいたら、自分を必要としてくれる人が見つかることを信じて、人を信じることができたら・・・
そんなことを考えてしまいます。

「密会」を観て・・・軍司だけでなく、人は一人、一人、この世に必要な存在であると自分を信じる強さが必要なのかなと思いました。
やっぱり人生そのものが修行なんですね。

劇的集団まわりみち’39さんの「密会」に人生の気づきをもらって感謝です。

 

 

プロフィール

たかはしみほ
ヨガインストラクター・パフォーマー・戯曲作家

FM802の番組制作会社勤務の後、演劇イベントのスタッフとして活動する傍ら、演劇・ドラマに興味を持つ。
その後、吉本興業に転職。よしもとザ・ブロードキャストショウを立ち上げ、役者・ダンサーとして舞台経験を積む。
女優・モデルとしてCM・VPなど出演。
写真家の作品展のアートモデル・ショーパフォーマーとして6年間活動するも、自己肯定できない自分に悩む。自分の存在する場所を見つけるために劇作家としてエンターテイメント劇5作品の脚本・演出。
その後、2017年に産業カウンセラーの養成講座修了。メンタルヘルス、傾聴、精神医学の基本を学んだことがきっかけでココロの表現に目覚める。
2018年3月3日 ココロの表現者を目指しカルディアを立ち上げる。
2018年10月 浄土宗 應典院のSDN2018の上演作品「きらめきのトキ」の脚本・演出。
2019年9月心体表現&身体で社会をデザインするカンパニー「HI×TO」での活動をスタート。

ココロと身体を繋ぐ心体表現の追求を目指す。