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2020/3/26~3/29 たかはしみほ:光の領地『同郷同年』(應典院舞台芸術祭Space×Drama×Next2019)レビュー

去る3月26日~29日に、光の領地『同郷同年』(應典院舞台芸術祭Space×Drama×Next2019)が、感染防護を施し、客席の間隔を取るなど細心の注意を払い、上演されました。同郷同年の3人の男が、故郷の放射性物質の最終処分場の誘致をめぐり翻弄され飲み込まれていくという、政治・経済・社会・まち・命‥など様々な観点から問題を突き付けられる秀逸の作品。今回は、劇作家・パフォーマーのたかはしみほさんさんにレビューを執筆していただきました。


光の領地さんの「同郷同年」観て・・・
人はいったい何に縛られて生きているだろう?
誰の顔色を見て生きてるのかな?
でもきっと、みんなそんな風に生きているんですよね。
登場人物の田切、谷上、中本は同じ年、同じ町に生まれた「同郷同年」の中年男性たち。
農業、薬剤師、電力会社社員とそれぞれ職業は違っていたが、どこにでもいるおじさまたち。
社会の縮図というか・・・日本経済を支えているのも、こういうタイプの中年男性が多くいるんだろうなと思いました。
今まで出会った上司と呼ばれる人もそうでしたけど、個人の出世とか面子ばっかり気にしてる。
故郷を守りたいって言ってるけど、自分さえ良ければ良いと思っているような本音が見えてくる。そういう社会が当たり前だったわけですよね。
原子力発電がスタートするときも、どう考えても放射性物質の最終処分場が必要になることだってわかっていた話です。
それでも推し進めるというのは、未来のリスクを無視しているとしか言いようがないです。

 

そういう意味でこの作品のように社会問題を問題定義することって、めちゃくちゃ意味があることだと思います。
原発も経済政策とか言ってますが、マスコミやテレビも結局いいところしか伝えていない。
電力会社を守るために、やっぱり情報操作されているような気もします。

そういった歪な政策は、故郷を脆弱にしてるということに大人たちが向き合わなきゃいけないですよね。
誰かを犠牲にして前に進むことを平気でする大人たちをみて明るい未来を抱く子供たちはいるでしょうか??
そうしなければ、本当に守りたい人を守れない。
人が豊かになるためにはお金を稼ぐこと、時には娯楽やエンターテイメントも必要です。
でもそれは自分あってのこと。この作品でも、人として意欲的に生きるためには人との信頼関係は大切だと感じました。
「逃げるんじゃない。次に行くんだ。」
だからお前も一緒にって言われたらどうですか?
自分の本当の思いを踏みにじって、お金だけあれば幸せですか?
次に行くって、みんながお金持ちになれば放射能汚染もみんなには我慢してもらって、俺たちだけ儲かったらいいだろう。
それで本当に人は幸せになれるのでしょうか?
今回の作品を観て日本社会の矛盾と循環しない社会をつくった大人たちの責任。
社会時代が何のふり返りと改善をしなければ成長しないということを働き盛りの大人は知るべきだと痛感しました。
家族を故郷を大切にしたいなら、やはり1人1人が幸せを実感できるようにしなければいけないと思います。
それは、理想論と言われるかもしれません。
でも、人が自分の生きる価値を見つけることができなければ、輝くこともできないし、誰かを守ることもできません。
自分が生きるモチベーションを持てる源は・・・
人から必要されること。人に感謝されること。
権力や繁栄にしがみついた結果、未来に希望が持てない自分になっていませんか?
これからは、自分自身の将来をもっと大事にすることはもちろん、子供たちの明るい未来を切り開くことが大人の責任でしょ?
今の日本はそう考えるタイミングにきてるってこの作品を観てあらためて感じました。
「同郷同年」観て私が感じたように、大人も子供も演劇作品を観ることで、それぞれ自分も周りもふり返り、より良き未来を考えられるようになることを願います。

 

私的には、今、このタイミングで光の領地の「同郷同年」に出会えたことに感謝しています。
ありがとうございます!!

 

 

たかはしみほ
ヨガインストラクター・戯曲作家・パフォーマー
2018年3月3日 ココロの表現者を目指しカルディアを立ち上げる。
2018年10月 浄土宗 應典院のSDN2018の上演作品「きらめきのトキ」の脚本・演出。
2019年9月 心体表現&身体で社会をデザインするカンパニー「HI×TO」に参加。
ココロと身体をつなぐアートセラピストとして活動中。