イメージ画像

【レビュー】子どもいろいろ探究フェス~子どもが「はなす・めぐる・おいかける」ひととき~

子どもいろいろ探究フェス

~「はなす・めぐる・おいかける」ひととき~

3月23日に行われた「子どもいろいろ探究フェス」の【総括レビュー】では中嶋悠紀子さんが山口圭美さんの合気道のことを、また、秋田光彦住職の【開催報告】はフリオ・リオスさんの「キューバの音楽」のことを紹介したが、それ以外にもお二人の探究パートナーズさんがゲスト講師として参加されていた。

福永聖さん、菱田伊駒さんはそれぞれ「海外」をテーマに取りあげる企画を実施された。子どもたちは海の向こう側の「海外のこと・海外のひと」には大変敏感に反応する。これだけグローバル化した現代社会では、「海外のこと」に触れたりや「海外のひと」に逢うことも多くなってきた。20年前、30年前の日本の光景では考えられないほど、コンビニエンスストアには海外の留学生や移住者の方が多く働かれ、インバウンドの観光客の方々が黒門市場には溢れかえる日常。しかしながら、私たち大人であっても、海外の人たちの生活の様子ーどんなものを食べていて、どんなあそびをしているのか、どんな暮らしをしているのか?ーを体験することは滅多にない。ましてや子どもたちの日常生活に「海外のこと・海外のひと」が直接介在したり、対話することはほとんど皆無だろう。

海の向こう側のあそびの普遍的なこと

今回、探究パートナーの福永聖(ふくながさとし)さんは、「海外と日本のあそび」の普遍性に着目し、日本の「ハンカチ落とし」が、ご自身が小さい頃に住まれていた米国の「Dcuk and Goose」に似ていることを思い出して企画を立案された。

まずは日本のハンカチあそびで遊んだ後、Duck(あひる)とGoose(がちょう)の違いを絵で説明してもらい、アメリカのハンカチあそび的な「Duck and Goose」のルールを説明してもらった。

  1. 鬼は一人ひとりの頭をやさしく触りながら、「ダック、ダック、・・・・ダック」と言って円の外側を回っていきます。
  2. 鬼はある人の頭をやさしく触って「グース」と言い、円の外を回って急いで逃げます。
  3. 「グース」と言われた人は、鬼にタッチするためにすぐに追いかけます。
  4. 鬼はタッチされないように逃げて、「グース」と言われた人が座っていた場所に座ります。
  5. 「グース」と言われた人が、鬼が座るまでにタッチできれば、鬼の負けとなり、鬼はもう一度最初からはじめます。鬼がタッチされる前に座ることができれば、「グース」と言われた人の負けとなり、新しい鬼になってはじめます。

というようなルールである。この相手(鬼)を「追いかける」、所謂「鬼ごっこ」的なあそびは、どこの国でも見られるものだ。また、円座を組んで座り、その円をくるくると「めぐる」ことも、子どもたちのあそびの中で多く見られる。この「追いかける」と円を「めぐる」あそびには、子どもたちの楽しみがいっぱい詰まっており、子どもは飽きずに何度でもチャレンジする姿が見られる。今回はお父さんはお母さんたちもご一緒に走ってもらったので、翌日には「筋肉痛になりましたが、子どもたちがイキイキと遊んでる姿を見て、ゲームとかYouTubeなどはなくても、子どもたちはこんなに夢中になるんんですね!」「中腰になってダック、ダック…というので、体幹が鍛えられました!」「自分の幼少期を思い出して楽しかったです」という保護者からの声も聴かれた。

実は鬼ごっこの歴史を紐解くと、平安時代の「追儺(ついな)」と呼ばれる宮中行事が始まりだとされており、 五穀豊穣を願って、悪者である「鬼」を追い払うものだったとのこと。 1000年以上に渡り、人々の中で行われきたものが、江戸時代になって子どもたちのあそびに繋がっていったと言われている。 日本中の「鬼ごっこ」の種類だけでなんと3000種類以上もあるとのこと、世界での種類数はどれほどの数になるのだろうか…。

知らない国の知らない人と子どもたちが邂逅するとき

探究パートナーの菱田伊駒(ひしだいこま)さんが企画されたのは、「海外の人たちと対話」するもの。ハンガリーからの大阪大学の留学生のアンナさんは、應典院に直接来訪してもらっての参加だったが、それ以外は、時差が少ない地域の元大阪大学の留学生お二人で、同時相互的に話せるZOOM上のオンライン上での企画だった。オーストラリアのマギーさん、インドネシアのムティアさんから、自国の紹介を含めて、色々なことを教えてもらった。あるこどもさんからマギーさんへの質問は「カンガルーのお肉はどんな味?」その答えは「歯ごたえがしっかりしていて、美味しいよ」と。子どもたちのまんまるになった目が印象的だった。また、「インドネシアには雨季か乾季しかないよ、雨季はほとんど毎日雨なんだよ」というムティアさんの説明に対して、子どもたちから「ずっと雨なら何をして遊ぶの?」という質問があった。ムティアさんから色々と室内遊びに説明があったが、これらのやり取りを見ていると、四季があって、外遊びが当たり前の日本とは全く違う環境について、子どもたちなりに想像力を働かせて、知らない世界を考えている様子が感じられた。

「邂逅」とは、人と人が思いがけなく出会う、出くわす、巡り合う、という意味ではあるが、本当にこの日の探究フェスで「知らない海外の人と思いがけなく出会い、質問したりする時間」は子どもたちの記憶にどんな印象を残したのだろう。しばらく経ったあと、子どもたちにも尋ねてみたいものだ。

4月1日から開所した「STEAM型アフタースクールvivid!」では、多くの社会人の方たちによる「探究TIME」を月に5回予定して、子どもたちにアート・体育・哲学・音楽・武道など、色々なプログラムを体験し、探究の眼を拡げ、深めてほしいと願っている。子どもたちが探究パートナーに出会うのも、もうすぐ。どんな好奇心いっぱいの眼と心とで、探究パートナーズさんと「はなす」のか、素敵な時間を「めぐる」のか、興味関心を「おいかける」のか、楽しみにしていきたいと思う。

STEAM型アフタースクールvivid!

 

應典院・パドマ幼稚園主査 齋藤佳津子

人物(五十音順)

齋藤佳津子
(應典院主査・学校法人蓮光学園 パドマ幼稚園・事業センター 主査)