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2017/8/4 横林大々:詩の学校・お盆特別篇「それから」レビュー

應典院寺町倶楽部との協働により、モニターレビュアー制度を試験的に導入しています。8月4日(金)に上田假奈代さん(特定非営利活動法人こえとことばとこころの部屋代表)進行のもと開催した、NPO法人こえとことばとこころの部屋(ココルーム)主催の詩の学校・お盆特別編「それから」。過去最大の参加人数にて、大蓮寺での秋田住職による法要の後、墓地にて詩作・朗読のワークショップがおこなわれました。今回は作家の横林大々さんにレビューを執筆していただきました。


息を、くっきりと。


最寄駅から自宅までの帰り道。そこには必ず通る寺院がある。怖がりな私は、いつもその前を横切る度に息を止めていた。視界に寺院の墓地が写った時は、眠れない夜もあったくらいだ。

そんな私が、詩の学校、詩作のワークショップに参加した。聞けば墓地で詩を作り朗読するという。私は何時間息を止めなければならないのだろうか。

 

秋田光彦住職の法要。

そして、墓地に囲まれながら行う詩作の世界。

私の目の前には、顕在化された『死』が群集する。

 

けれど、不思議と心地よかったのは、ワークショップを主催されている上田假奈代先生の持つ柔らかな雰囲気と、『死』という概念が、さも当たり前のように眼前で広がっていたからなのかもしれない。

幼少の頃、私は大人に「人は死んだらどうなるのか。」と尋ねて困らせるような子どもであった。今生きている私にとって『死』は分からないもの。私が息を止めていたのは、寺院が『死』という人間の終わりを想起させる場所であったからだろう。

 

墓前で参加者の詩を聴く。

実体験に基づいたものから、抽象的な内容まで。

そこにいる誰もが、連れ添いながら、或いは意識的に無自覚に忘れている『死』と向き合い朗読する。

 

ある時は胸を打たれ、ある時は笑いが零れ落ち、そうして私は『死』と、少し顔見知りになれた気がした。

最後の懇親会の際、上田先生は、こうおっしゃった。

「詩は生きていくうえで何かに役立つものでは無い。」

しかし、先生は、このように言葉を続けた。

「けれど、『生きている』という事を『くっきり』させることは出来る。」

 

墓地での詩の時間は、ふんわりとしていて、やんわりとしていて。

けれど、誰もが不思議と自然に言葉を紡ぐ。

それは『死』が『生』を、くっきりとさせたからに違いない。

 

いずれ訪れる終わり。けれど、終わりがあるから『生』がある。

死を認識することは生を意識することと同義なのかもしれない。

 

その日の帰り道。

私は、もう、息を止めなかった。

 

 

〇レビュアープロフィール

横林大々(よこばやし だいだい)

2分30秒で綴られるリレー形式のライティング・ノベル・イベント『即興小説バトル』の主催者。また、Web上の小説投稿サイト『カクヨム』を拠点に商業作家を目指す。1990年生まれ。ふたご座。O型。劇作活動を経て現在に至る。好きな映画は『トイ・ストーリー』全作『モンスターズ・インク』『ラ・ラ・ランド』『ジョゼと虎と魚たち』『学校の怪談2』。好きな曲は星野源『茶碗』清竜人25『Will You Marry Me?』ROSSO『シャロン』。好きなラジオ番組は『アルコ&ピースのオールナイトニッポン』。作るのも、見聞きするのも、楽しいものが好き。自分の作品によって誰かが幸せになってくれれば、と常日ごろ考えている。

 

〇レビュアー出演情報

『ひとり即興小説バトルとふたり朗読劇の会』

[出演]『ひとり即興小説バトル』横林大々

『ふたり朗読劇「カシマシ君とミッシェルガンちゃん」』宝亭お富、北川啓太

[日時]8月12日(土)19:30~

[開場] common cafe (谷町線中崎町駅から歩いてすぐ)

[料金]1ドリンクつき¥1,000

[イベント内容]

○ひとり即興小説バトル

1.シンプルな即興小説

2.Hi-STANDARDか中島みゆきが一曲分終わるまで即興小説

3.書き散らかした即興小説をゲスト朗読やBGMで盛り上げよう

○ふたり朗読劇

2014年に上演した作品「カシマシ君とミッシェルガンちゃん」を2017年版に改定して

再演します。

 

人物(五十音順)

秋田光彦
(浄土宗大蓮寺・應典院住職)
上田假奈代
(特定非営利活動法人こえとことばとこころの部屋代表)
横林大々
(作家・『即興小説バトル』主宰)